北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

新年防衛論集二〇二四【5】限定戦争全面戦争-沿岸特科連隊/火力戦闘連隊や陸上自衛隊航空集団の必要性

2024-01-04 20:14:11 | 北大路機関特別企画
■全滅か勝利かの方向性
 現在の防衛力整備は"全滅か勝利"というような極端な防衛力整備に進んでおり所謂限定戦争というものの防衛力整備を蔑にしているのではないかと懸念します。

 島嶼部防衛を念頭に現状の防衛力整備を延長線上としてその防衛力整備の方向性を考えますと、必然的に無人航空機と従来よりもかなり射程の大きなミサイルシステム、そして対戦車ミサイルの延長線上として徘徊式無人機による、いわば近接戦闘部隊の存在しない戦闘を念頭として数を整備してゆくほかないのかもしれない。

 HERO-120徘徊式弾薬を導入するとの報道がありましたが、現在自衛隊では対戦車ミサイルの所管は普通科となっていますので、対舟艇対戦車隊のような部隊を大幅に増やすという選択肢しか、島嶼防衛に際して基本的に海に出ていかない陸上自衛隊は選べないようにも思う。そして普通科の責任交戦範囲は必然、拡大します。

 96MPMSを運用する対舟艇対戦車隊として、既に普通科部隊の責任交戦範囲は拡大しているのですが、これはまた同時に1994年から配備が開始された120mmRT重迫撃砲が当時まだ運用されていた105mm榴弾砲の射程を凌駕していたことで注目され、実際これは空挺団と水陸機動団では特科大隊が運用するほど、射程が長かった。

 FH-70榴弾砲と99式自走榴弾砲の導入により、これは120mmRT重迫撃砲との任務区分ができるようなりましたが、これが普通科により射程の長い、砲ではなくミサイルですが、HERO120や、そしておそらく国産としてそれ以上の装備を開発して、日本型の調達方式に適合化させる試みとともに、特科部隊の装備も射程が延伸へ。

 沿岸特科連隊や火力戦闘連隊、としまして2023年に地域配備師団や地域配備旅団、実はこの地域配備という運用方式は2022年国家安全保障戦略画定に際して全ての部隊を機動運用するとして過去の概念となっているのですけれども、こうした、ミサイルを中心としました部隊へ改編する必要はないのか、という視点を昨年示した。

 中距離ミサイルは、政府の方針では射程が2200km以遠まで延伸するといい、2400kmとも2500kmとも報道があります。これは、どちらにせよその射程の意味とは、東京近郊に配備された部隊が北京近郊の敵対勢力を十分射程に収めることとなります。もっとも、個人的にはこの、敵を誰か明確にする装備は良くないとおもうのだが。

 地域配備師団という旧称の部隊は、総じて火力と機動力が限られすぎており、この装備で機動運用を行うということは、相当な損耗を覚悟しなければ成りません。もっとも、パトリアAMV装甲車と軽装甲機動車の後継として見込まれる将来装甲車を潤沢に普通科部隊へ配備するならば話は別ですが、そうした動きは今のところない。

 地対艦ミサイル隊を中心に普通科大隊と高射特科中隊を組み合わせた、火力戦闘連隊を、旧称地域配備師団や旅団へ配備する必要性を感じるのです。装甲車と機動打撃力のない部隊は第一線では生き残るのが難しい、すると近接戦闘ではなく、首都圏から沖縄を、東北から九州を、直接支援できる火力を付与しては、ということ。

 ヘリコプター。ただ、射程の大きな装備の重要性は理解するのですが、戦闘ヘリコプターのような、相手が全面戦争ではなく限定戦争に収めようとするような状況に際して、いきなり敵本土をたたく、我が国土を一歩でも犯すならば無慈悲な全面的反撃を、という北朝鮮のようなゼロサム瀬戸際防衛戦略をとるべきではありません。

 AH-64Eアパッチガーディアン、要諦としてはこの装備を早く調達する決断が必要だ、ということ。現在、戦闘ヘリコプターと対戦車ヘリコプターは全廃する過程にありますが、戦闘ヘリコプターは例えばAH-64Eの場合で現在射程24kmのスパイクNLOS運用試験をアメリカとギリシャなどが進めており、改良型の射程は50kmまで伸びる。

 日中の摩擦が有事となった場合はどちらかが全滅か勝利だ、という旧日本軍のような運用が現在の国家防衛戦略に基づく中距離ミサイルなどの反撃能力整備の方向性であり、グレーゾーン事態という安倍政権時代の慎重さが消えています。そして現在の施策を進めるならば、好むと好まざると通常兵器以上の装備が必要となりかねない。

 航空集団を陸上自衛隊にも創設し、その上で各方面隊へヘリコプター連隊をフォースプロバイダーとして機材を供給する方式で、AH-64Eと、そしてUH-2よりももう少し能力はあるが飛行隊定数が若干数となるようなCH-47ほど大きすぎない、EC-225かCH-101かUH-60JA程度の機材で方面航空を再編する必要も重ねて感じるのですね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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令和6年能登半島地震概況:プッシュ型支援の限界,14地区が道路寸断孤立と放送中継装置電源喪失

2024-01-04 07:00:11 | 防災・災害派遣
■臨時情報-能登半島地震
 発災から60時間以上を経た被災地ですが現状では全容さえ把握できておらず手を付けられるところから対応している状況です。

 地震被害状況の把握が遅れているのは、能登半島という過疎地域であり交通網が元々限られていると共に通信インフラ整備に限界があり、そして高齢化人口という特有の問題があるとともに、年末年始の帰省シーズンにより地域人口が急増しており、自治体能力の限界を超えている状況があり、孤立者数や道路状況さえ、判明している範囲はいまでも狭い。

 珠洲市は過疎化が災害対応能力に限界を突き付けています、珠洲市の市制施行は1954年で決して平成の大合併などで生まれた都市ではないのですが、1975年以降度々行政が原発誘致を進めるものの住民反対で実現せず、産業が限られ少子化、珠洲市のもともとの人口構成も影響しているでしょう、珠洲市は65歳以上人口が50%を超えている状況も考え得る。

 珠洲市の過疎化は、例えば1954年の市制施行当時小中学校は39校あったものが2023年までに学校が11校まで縮小、つまり校区が多数あったものが学校一つとって統廃合され、広い地域に人口が分散している状況があります。行政機能では交通が寸断した中で、中央から航空機等の支援が無ければ情報収集さえ厳しいという状況が醸成されたのでしょう。
■テレビ放送が停波しつつある
 時間とともに状況は悪化しつつある。

 テレビ放送が停波しつつある。能登半島の地域孤立はテレビ放送設備の停電と非常用燃料枯渇により地上波が停波する状況にあります。具体的には能登半島の輪島市内で、NHK放送は既に2日、輪島市のTV/FM中継施設が電源停止に陥り停波、民放のMRO北陸放送と石川テレビにテレビ金沢とHAB北陸朝日放送の合同中継所も間もなく電源停止となる。

 本日4日0600時頃までは電源が残るということですが、これ以降は非常用ディーゼル発電機燃料が補充されない限り、衛星放送と短波ラジオ放送以外受信できない地域が生じることとなります。停波の懸念はNHKが3日2359時に報道したもので、夜間であることも含め、燃料を短期間で補充する事は難しく、移動電波中継車などの派遣が必要となります。
■14地区が道路寸断孤立
 実際にはもっと多い地域が孤立しているのではないかという危惧があるもよう。

 孤立地域が非常に多い。NHK報道を見る限り、輪島市と七尾市と珠洲市及び能登町と穴水町で少なくとも14地区が道路寸断により孤立し、物資不足という状況にあるもよう。もよう、という曖昧な表現は、現地では固定電話と携帯電話が不通で無線機なども無く、またNHK3日2155時の報道でこれら地域への船舶や航空機による支援が届いていない、と。

 携帯電話基地局の電源喪失による通信不能と電話線寸断、どこが救援を必要としているのかさえ把握できない状況があり、携帯電話の移動基地局は、防災訓練等では自衛隊輸送艦により海上から上陸する訓練を行ってはいますが、肝心の輸送艦が3隻しか無く全て呉基地に集中しており、また移動通信車輛を現地に展開させる目処が立っていない状況です。
■当事者の被災状況把握
 プッシュ型支援として要請を待たずに物資を送る方式で中央は臨んでいますが肝心の道路網と通信網が破綻したまま根詰まりを起こしています。

 実施出来ないには相応の理由があるのでしょうが、自衛隊が70機以上保有しているCH-47輸送ヘリコプターは救急車を機内に収容可能ですし、ブルドーザーを吊下げ空輸可能です。V-22オスプレイという装備も自衛隊には配備されています。自治体が、何処へどれだけ人員を送りたいかを示せば、職員も物資も運ぶことは可能ですが、できていない。

 現行法では災害派遣は自衛隊が要請を受けて実施するものであり、軍政のように自衛隊が主体となって行政を指揮下に置く事はできません、ただ、だからこそ防災能力を自治体は求められる訳であり、先ず、市役所町役場職員が不足しているならば、どう増員するかだけでも示すべきで、現状では、当事者が被災状況を把握できていないことが問題なのです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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