北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】アパッチ改良へAH-64Eversion6.5戦闘ヘリコプターとFARA将来偵察戦闘航空機計画

2024-01-23 20:01:03 | 先端軍事テクノロジー
■防衛フォーラム
 わが国では戦闘ヘリコプターそのものが陳腐化していると主張して全廃方針ですが井の中の蛙ではないかと。

 アメリカ陸軍向けアパッチガーディアン最新のAH-64Eversion6.5が初飛行したことをボーイング社が10月11日、アメリカ陸軍協会年次総会において発表しました。進化するアパッチシリーズ、AH-64Eversion6.5は2021年12月にアメリカ陸軍と生産契約を結んだもので、ソフトウェアアップデートとパイロットインターフェースが改良されました。

 AH-64Eversion6.5、V6.5とも称される改良型はリンク16データリンクシステムとの接続性を強化するとともに、戦闘システムソフトウェアを改良することで各種センサーが得た情報を最適化し共有する、その上で既存のAH-64Eシリーズとの連接能力を強化し、また従来機よりもソフトウェアアップデートを容易に行える点に重点を置いた改良型です。

 T-901エンジンの採用、ジェネラルエレクトリックエアロスペース社が開発した新型エンジンへの換装も今回のV6.5改修の主眼で、UH-60多用途ヘリコプター改良型とのエンジン相互互換性維持を期しましたが大きく遅延し、量産決定から時間を要しましたが実はCOVID-19感染拡大の影響を受け、V6.5生産に二年近くを要する要因となったものです。
■T-901エンジン
 AH-64EといいますかAH-64Aを含めてアパッチシリーズの強みは1990年代に調達した機体を2030年代まで老朽箇所を置き換えセンサーとシステムを更新し使い続けられる事だ。

 アメリカ国防総省は陸軍協会年次総会においてAH-64Eエンジン換装についてその意義を強調しました。T-901エンジン、AH-64Eアパッチガーディアン改良型へ搭載される新型エンジンはITEP改良型タービンエンジンプログラムの一環として開発されたもので、主契約企業はジェネラルエレクトリックエアロスペース社となっています。

 T-901エンジン、この換装は従来の新型エンジン搭載という範疇を超える大きな能力向上となるもので、航続距離は20%延伸しており戦闘行動半径は270マイル、434㎞まで拡張されるとともに耐用年数は倍増しており、整備負担なども大幅に軽減されています。また強化されたエンジン出力はより強力な兵装を搭載し運用が可能となっています。

 アパッチシリーズはスタブウイングに左右各二か所の兵装架を有していましたが、エンジンを換装したAH-64Eversion6.5は兵装架が左右各三か所となっており、単純計算で兵装搭載能力は五割増大した事となっています。そして何より重要な点はAH-64Eversion6.5への改修が既存のアパッチシリーズからそのまま可能だ、ということでしょう。
■FARA将来偵察機
 いったん廃止された観測ヘリコプターを偵察ヘリコップたーとしてアメリカは復活させようとしている。

 アメリカのシコルスキー社はレイダーXをAUSAアメリカ陸軍協会年次大会に出展しました。FARA、これはFuture Attack Reconnaissance Aircraftの略称なのですが、アメリカ陸軍ではAH-64アパッチ戦闘ヘリコプターとOH-58カイオワ観測ヘリコプターの後継機を開発しています。ただ、このOH-58後継機は何度も候補機開発が頓挫した機種という。

 OH-58D観測ヘリコプター後継機は画期的なステルスヘリコプターであるRAH-66偵察ヘリコプターが充てられる計画でしたが、2000年代初頭の開発段階で1機1億ドルに達するとされ2004年に開発が中止、既存ヘリコプターに先端機材を搭載するARH-70計画が進められるも、こちらも高コストであるとして2008年に計画が中止され実現していない。

 FARA将来偵察戦闘航空機計画はこうした中で推進されていましたが、OH-58Dの老朽化が進むとともに、連携するAH-64の索敵能力が向上し、性能的にOH-58の陳腐化が進む中、ギリシャへ70機やクロアチアへ16機など余剰装備品として供与され、遂にアメリカ陸軍はOH-58Cを2020年に退役、こうした中でレイダーX展示となりました。
■レイダーX
 コンセプトモデルとコスト管理を見極めなければならないので話が進むのは此処からなのですがLR-1並の速度をだす航空機を目指す。

 AUSAアメリカ陸軍協会年次大会に出展されたレイダーXについて。機体は二重反転式ローター方式のアドヴァンストブレードコンセプトローターと推進用テイルローターであるプッシャープロペラ方式を併用した速度重視の複合ヘリコプター方式を用い、最高速度460km/hというCOIN機など固定翼航空機並みの速度を発揮するヘリコプターです。

 Future Attack Reconnaissance Aircraft、この計画に今回レイダーXが出展されましたが、計画では候補機が一本に絞られていない選定段階で、現在はシコルスキー社のレイダーXに加えてベルヘリコプターテキストロン社がベル360インヴィクタスを候補に挙げ試作機を製造中となっています。ただ、レイダーXは機体構成要素が98%の管制状態という。

 レイダーXは並列複座方式を採用したのに対しインヴィクタスはAH-64やAH-1などと同じタンデム複座方式を採用した高速の戦闘ヘリコプターというべき機体で、兵装や機関砲を格納式として有翼ヘリコプター構造を用いる複合ヘリコプター方式を採用しました。遅れているインヴィクタスですが、陸軍は有人機に相応の期待しているのは確かです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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ウクライナ情勢-ロシア海軍の海軍歩兵部隊偏重への改編と夏期攻勢がキエフ狙う可能性

2024-01-23 07:00:14 | 国際・政治
■防衛情報-ウクライナ戦争
 ウクライナ情勢について。

 ロシア海軍の海軍歩兵部隊偏重への改編が更に進む模様だと、ISWアメリカ戦争研究所の分析が発表されています。これは1月10日に発表された戦況報告に示されたもので、現在ロシア海軍には主要な4艦隊と1小艦隊があり、太平洋艦隊、バルチック艦隊、黒海艦隊、北海艦隊、カスピ小艦隊、その隷下に5個海軍歩兵旅団と海軍歩兵連隊が置かれる。

 ISWアメリカ戦争研究所はロシア海軍総司令官エフメノフ提督の発言を引用し、現在置かれている海軍歩兵旅団5個を海軍歩兵師団へ拡大改編し、海軍歩兵連隊は海軍歩兵旅団へ拡大改編するという方針です。ロシア海軍は現在主力を構成するソ連時代の大型水上戦闘艦を維持する事が難しくなり小型艦へ置き換え、結果的に、地上戦部隊偏重となります。
■アウディイフカ周辺の気温
 日本が供与した車両などはウクライナに到着し始めているようですがアメリカの軍事援助停滞が響いているウクライナを守ったのは気温上昇でした。

 アウディイフカ周辺の気温上昇がロシア攻撃を阻害した、ISWアメリカ戦争研究所1月19日付ウクライナ戦況報告によれば、アウディイフカ軍政局バラバシュ局長の発言を引用し、アウディイフカでは今月に入り地面が凍結した事でロシア軍の機械化部隊運用が可能となっていましたが、18日以降気温が上昇し泥濘化したことでこれが困難になったとした。

 冬季攻勢は、2022年の開戦とともにロシア軍が重視した作戦運用ですが、もともと冬季は兵員を凍傷などから防護するなどの負担の大きさから兵站線の維持が難しく、その可否に関わらず莫大な損耗を強いるものです。ロシア軍はアウディイフカ周辺に2023年10月以来攻撃を加え続け、実際に両翼包囲を固めつつありますが、代償は死傷者2万名でした。
■夏攻勢-キエフ狙う可能性
 欧州の軍事援助が低調でアメリカの軍事援助が停止する今、せめて日本が用途廃止している90式戦車やFH-70榴弾砲などは予備保管せず廃棄するくらいならば供与してみる選択肢はないのか。

 ロシア軍は今年夏に再度攻勢をかけ首都キエフを狙う可能性がある、イギリスフィナンシャルタイムスの電子版は1月19日に報じました。ロシア軍の冬季攻勢は実質的に、アイディイフカの包囲を両翼包囲に進め、マリンカ周辺でも前進するなど着実な戦果を挙げていますが、アウディイフカ周辺で前進は3カ月間で2km、マリンカでは500mという。

 ただ、ロシア軍は軍需産業を拡大し戦時体制での生産を続けており、莫大な損耗を受けているものの装備の補充を進め、不足する装備品は主として北朝鮮より調達し続けている為、夏ごろにはある程度戦力を回復する見通しが立っているのがその根拠で、攻撃は東部四州完全制圧を目指すものの、キエフ攻略の可能性も完全に除外していない、と報じました。

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