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【防衛情報】オーストリアKC-390輸送機選定とイタリアGCAP戦闘機開発参加,アメリカ在日米宇宙軍新編

2024-01-22 20:23:32 | インポート
■防衛フォーラム
 今回はKC-390輸送機や日本とイギリスが進めるGCAP戦闘機計画など世界各国の空軍に関する最新情報を纏めてみました。

 オーストリア空軍はC-130輸送機後継としてブラジル製KC-390輸送機を選定しました。オーストラリアではなくオーストリア、カンガルーの国ではなくモーツアルトの国です。これはオーストリア国防省のハラルドヴォドセク少将が9月20日に公式発表したもので、C-130K輸送機の老朽化を受け、オーストリア空軍は次期輸送機を選定していました。

 KC-390輸送機は4機導入されるとのことで、取得費用や納入納期など詳しい情報は未だ開示されていません。このほかの候補機としてはアメリカ製C-130J輸送機とイタリア製C-27J輸送機、フランス製エアバスC-295輸送機が候補に挙げられていました。なお現在保有するC-130Kは3機であり、4機の新輸送機導入により空輸能力は強化されます。■

 アメリカ空軍はT-7Aレッドホーク高等練習機の受領を開始しました。9月14日、大幅に遅れていたT-7Aレッドホーク量産機初号機がアメリカ空軍へ納入、暫定第一次納入分として5機が生産されているうちの1機で、空軍での評価試験は秋までにボーイングセントルイス工場で、続いて年内にエドワーズ空軍基地において開始される予定だ。

 サーブT-7レッドホーク、アメリカ空軍は元々の名称であったボーイングT-7Aレッドホークという名称ではなく、開発計画初期段階のボーイングサーブT-X時代以来のサーブ社という名称をこの納入の発表段階では用いており、ボーイング社が様々な防衛装備品開発で遅延と問題を続出させているボーイング社への当てつけ的な印象を受けます。

 レッドホーク統合チームとして、アメリカ空軍は老朽化が行き過ぎているT-38練習機の後継機としてシステム体系へ統合化する準備は完了していますが、飛行制御プログラムや射出座席システムでのトラブルという、飛べないし脱出できないという問題を抱えたT-7は問題さえ解決するならば速やかに受け取る準備ができていると強調されています。■

 アメリカ宇宙軍は日本のアストロスケール社との間で燃料補給衛星契約を結びました。東京都墨田区に本社を置くアストロスケール社は宇宙関連のスタートアップ企業であり、現在宇宙ステーションへの無人補給機などは幾つか開発事例がありますが、今回アストロスケール社が受けたのは人工衛星へ燃料を補給する燃料補給衛星となっています。

 アストロスケール社の無人補給衛星はアメリカ宇宙軍から2550万ドル、受注を受けた2023年9月22日の為替レートでは邦貨換算で38億円となり、2026年までに衛星試作品を納入します。人工衛星の運用寿命は打ち上げ時の搭載燃料が主導力で太陽電池などは補助的な動力源であるため、人工衛星による宇宙給油実現は大きな運用期間延伸に繋がります。■

 アメリカ空軍はe-VTOLを運用するジョビーアビエーションと評価試験契約を結びました。9月25日、ジョビーアビエーション社はエドワーズ空軍基地での評価試験契約を結び、空飛ぶクルマとして構想される電動ヘリコプター、e-VTOLの空軍での実用試験を開始することとなります。なお、空軍では構想自体は既に2020年から進められていました。

 e-VTOL、ジョビーアビエーションの航空機は操縦士が1名、そして4名の人員か454㎏の貨物を搭載可能、最高速度は200km/hであり一回の充電で161㎞の航続距離を有するとの事です。空軍は近距離の連絡輸送や貨物輸送にe-VTOLを充てる構想で、当面はメーカーの操縦士が飛行試験と輸送試験を行い、次の段階で空軍操縦士が操縦する計画です。

 ジョビーアビエーションのe-VTOL、用途は幾つかが考えられますが、広大な基地での整備員や整備部品の速やかな輸送、そしてロシアウクライナ戦争での戦訓は戦闘機をシェルターに格納するよりも広く分散させることで、e-VTOLがあれば飛行中隊が広い地域に分散した場合でも備品や弾薬と要員を秘匿したデポから即座に移動できる事でしょう。■

 アメリカ軍は在日米軍隷下に新たに在日米宇宙軍を新編します。これはアメリカ軍の軍准機関紙星条旗紙が紙面において発表したもので、2022年にはハワイへインド太平洋軍隷下のインド太平洋宇宙軍を新編し、続いて在韓米軍隷下にも宇宙軍を置いています。星条旗紙は日本への宇宙軍設置を発表しましたが、具体的な場所は決定していないという。

 アメリカ宇宙軍は空軍宇宙軍団を改編するかたちで2019年に空軍から独立しています。宇宙軍の人員規模は8900名の軍人と777名の軍属で、その規模はアメリカ海兵隊よりも小規模ではありますが、第21宇宙航空団、第30宇宙航空団、第45宇宙航空団、第50宇宙航空団、第460宇宙航空団、第614航空航空団などをその隷下に置いています。■

 フランス空軍はエアバスA-330-200MRTT多目的給油機12号機を受領し導入計画を完了しました。フランス空軍は旧式化と老朽化が進むアメリカ製KC-135空中給油機と、そして人員輸送専用のエアバスA-340輸送機及びエアバスA-310輸送機の後継として一機種で担うエアバスA-330-200MRTT多目的給油機を選定、順次受領を続けてきました。

 エアバスA-330-200MRTT多目的給油機12機が2014年11月に12機を複数年納入契約により30億ユーロ、当時の為替レートでは33億ドルにて調達契約をむすんでいます。この機体は胴体下部を燃料輸送用に用いるほか、上部は人員輸送やパレット輸送と担架による医療搬送にも対応しており、短歌収容の場合は130床を収容可能としています。

 エアバスミリタリーエアクラフト社が開発したエアバスA-330-200MRTT多目的給油機は、アメリカ製空中給油機よりも大型であり、海外販路開拓にも成功、16か国に68機が輸出されています。他方、2020年からのCOVID-19感染拡大とその収束後の世界規模のインフレ拡大は今回のような固定価格契約には少なくない影響を及ぼす課題ものこしました。■

 クロアチア空軍は中古ラファール戦闘機の受領を開始しました。2023年10月2日、フランス本土のモンドマルサン空軍基地においてフランス航空宇宙軍からクロアチア空軍へのラファール戦闘機譲渡式が実施され、クロアチアのマリオバノジッチ国防大臣、フランスからは戦闘航空総監のリュックドランクル将軍が臨席し式典が挙行されました。

 ラファール戦闘機の中古取得計画は2020年、クロアチア空軍が老朽化と旧式化が進んでいたMiG-21戦闘機後継戦闘機選定を進めていた最中、フランスより新造ラファール戦闘機の後日調達を条件に格安の条件でラファールF3R戦闘機の中古機12機譲渡を提示され、結果12機の中古機を購入、8機の能力向上型と4機の無償譲渡が契約されました。■

 シンガポール空軍はF-16戦闘機へのAESAレーダー搭載改修を完了しました。東南アジア地域において最初にF-16戦闘機を採用したシンガポール空軍は今後計画される少数のF-35戦闘機導入と共に保有するF-16戦闘機を2030年代以降にも現役で運用するべく近代化改修計画を進めていました。その一環としてレーダー換装が行われています。

 F-16戦闘機へは既存のC型などをV型相当に能力向上させる取り組みがあり、このためにノースロップグラマン社はAESA方式のAN/APG-83を開発しています。シンガポール空軍はこの改修に併せてイスラエルのエルビットシステムズ社製ヘルメットマウントディスプレイ、射程20㎞のパイソン5短距離空対空ミサイル搭載能力を整備しました。■

 チェコ政府はエンブラエルC-390輸送機調達に向けエンブラエル社との交渉を開始しました、導入計画数などについては現在交渉中とのことで交渉期間も現段階で未定です。チェコ空軍には現在、不整地運用能力を持つ輸送機が配備されておらず短距離輸送型のL-410輸送機6機とスペイン製CASA-C-295輸送機が6機配備されているにすぎません。

 エンブラエルC-390輸送機について、チェコではエアロヴォドコディ社がエンブラエル社へC-390輸送機部品を納入する協力企業であり、今回の次期輸送機選定に際してはこの点がほかの候補機に対して優位とされていました。中欧地域ではオーストリア空軍が次期輸送機としてC-390輸送機を選定し、エンブラエル社は売り込みを強化しています。■

 スペイン空軍はハルコンⅡ計画としてユーロファイタータイフーン戦闘機25機を追加調達します。これは欧州周辺情勢の緊張状態を受け国境地域の防空能力を強化するべく2023年から2035年まで空軍増強予算45億ユーロが計上されたことを受け、ユーロファイターを増強することとしたもの。スペインはこのほか、F/A-18C戦闘機を運用します。

 ハルコンⅡ計画に先立ち、スペイン空軍は2023年から2027年の期間で既存戦闘機の能力向上を行うハルコンⅠ計画が進められており、一方でスペイン空軍はドイツフランスとの間で次世代戦闘機開発計画に参加、この実用化は2050年代が見込まれています。F-35戦闘機を採用しないスペイン空軍はこのギャップをタイフーンの増強で対応するもよう。■

 イタリア国防省はGCAPグローバルコンバットエアプログラム日英伊戦闘機共同開発計画推進への来年度予算を明示しました。10月17日に発表された来年度予算文書によれば、2億7100万ユーロを計上し、戦闘機の製造費やライフサイクルコストを含めた2037年までの長期支出展望としては77億7000万ユーロを見込んでいるとしています。

 GCAP戦闘機計画、イタリアはF-35B戦闘機とC-130J輸送機から成る緊急展開部隊を編成中で、イタリアは欧州の中でも地中海情勢、具体的に言えば北アフリカや中東地域の緊張による影響を受けやすい地政学的条件があります。このため、F-35の戦闘行動半径は不十分で、航続距離の大きな戦闘機を必要とし、この開発計画に参画しました。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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ウクライナ情勢-ウクライナ防空ミサイル消耗とジェットエンジン搭載シャヘド無人機,クピャンスク攻撃再興兆候

2024-01-22 07:00:37 | 防衛・安全保障
■防衛情報-ウクライナ戦争
 こうした状況を見ますと我が国も近距離地対空誘導弾や短距離地対空誘導弾は万単位で備蓄が必要なのだなあと予算の重みに嘆息します。

 ウクライナ軍は直近三度のロシア軍攻撃によりミサイル備蓄をかなり消耗した、ISWアメリカ戦争研究所ウクライナ戦況報告1月9日付発表において概況が示されていました。ミサイル備蓄状況についての発言はウクライナ空軍報道官ユーリーイナト大佐の発言によるもので、ペトリオットからホークまで全力で迎撃した結果の射耗が背景にあります。

 ロシア軍はジェットエンジン搭載型のシャヘド238を運用開始しており、ウクライナ軍も実際に撃墜したとのことですが、ジェットエンジン搭載により最高速度は500km/hとかなり速度が増大し、従来のシャヘド無人機のように重機関銃の目視照準での撃墜が困難になっているとのこと。ただ、その分コストが高く航続距離は低下していると分析されている。
■ロシア空軍二度の誤爆
 長期戦を行うには搭乗員をどのように確保するかという分り切っている問題ですが毎度世界各国で突き付けられる課題で、本邦は搭乗員確保は大丈夫なのか。

 ロシア軍は1月初旬の一週間で二度に渡る誤爆を行ったとのこと、イギリス国防省ウクライナ戦況報告1月10日版の分析によれば、先ず1月2日、ロシアのヴォロネジ州ペトロパブロフカの住宅街にロシア軍機が誤って爆弾を投下し住宅9棟が損傷した。続いて1月8日、占領中のルガンスク州ルビネージュ村に対しFAB-250無誘導爆弾が落下しています。

 ロシア軍による誤爆について、イギリス国防省の分析では2023年4月20日に発生したSu-34戦闘爆撃機によるベルゴロド市での誤爆事故を例に挙げ、訓練不足と乗員疲労が重なったものと分析しています。ウクライナ軍はアメリカ軍事援助停滞により劣勢が伝えられますが、開戦当初と比較し防空能力は格段に強化、ロシア軍に圧力をかけ続けています。
■クピャンスクの現状
 ロシア軍が各所で押し返し始めている。自衛隊が学ぶべき点は古くて退役する装備であっても機動運用ではなく拠点防衛には有用な場合が多く専守防衛を形骸化してでも残すのであればこれら装備も保管して残すべきという。

 ウクライナ全戦線で陣地戦が続く中でロシア軍はバフムトとドネツクとドニエプル川東岸で前進した、ISWアメリカ戦争研究所1月10日付ウクライナ戦況報告において概況が分析されました。現在の焦点となっているのはクピャンスク地区で、この地域では寒波により無人機の運用頻度が低下しているものの、ロシア軍の大規模攻撃の徴候があるという。

 ロシア軍大規模攻撃の徴候は、この地域の旅団司令官が敵情分析により、ロシア軍の兵力集結を確認した事が根拠という。ウクライナのメリトポリ市イヴァンフェドフ市長によればロシア軍は2023年末にかけザポリージャ州とドネツク州で新たに数十km規模で塹壕を掘削しておりこの地域の防衛を強化中とのこと。ただ寒波が歩兵行動を阻んでいるもよう。

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