北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】ロッキードマーティン社300kw級レーザー砲,TPQ-53対迫レーダ装置とPARM対戦車地雷

2024-01-15 20:24:18 | インポート
■防衛フォーラム
 今回は陸軍関連の情報です。レーザー砲やレールガンの研究が従来の研究室を出て試験装置から実用実証研究段階まで進んでいるのが昨年の潮流となりましたね。

 アメリカ陸軍はロッキードマーティン社との間で300kw級レーザー砲の納入契約を結びました。2023年10月10日にロッキードマーティン社が発表したところによれば、最大で4基のレーザー砲を納入するといい、これらはIFPC間接防空用高エネルギーレーザーとして開発、オシコシ製10輪駆動大型車両上に装備システムとして完成しているもの。

 IFPC間接防空用高エネルギーレーザーは無人航空機やミサイルと航空攻撃は勿論、迫撃砲弾を含む砲弾からの戦闘部隊の防護を目指すものです。今回の契約は2基を納入しオプション行使により4基までの調達を見込むもの、そして部隊配備ではなく試作装備となっています。ロッキードマーティン社は既に100kwレーザーの試作開発に成功しています。■

 ブラジル陸軍はアメリカ陸軍より中古のM-577指揮通信車を受領しました。導入したのはアメリカの余剰装備品海外供与計画に基づくもので供与数は30両、10月6日にブラジルのパラナグアコンテナターミナルへ運び込まれました。ブラジル陸軍は当面陸軍第5軍管区においてエンジン点検、無線機などのブラジル軍仕様への改修を行うとしています。

 M-577指揮通信車はブラジル陸軍では装甲救急車や砲兵火力調整所と通信車両などに用いられており、2022年時点でブラジル陸軍はM-577を64両装備しています。M-577の原型はアルミニウム合金装甲を有するM-113装甲人員輸送車で、指揮通信車への改修へ車体部分後部の天井を拡張、ブラジル陸軍が保有するM-113装甲車との互換性があります。■

 ハンガリー国防省は初のNASAMSミサイルシステム受領を発表しました。NASAMSミサイルはAMRAAM空対空ミサイルの地上発射型としてノルウェーのコングスベルク社が開発したもの、ミサイルは2セット、納入式典にはボブロヴニツキー国防大臣が出席し10月26日にジェール駐屯地の第205防空砲兵大隊において納入式典が行われました。

 NASAMSミサイルはウクライナへも供給され、戦闘機は勿論無人航空機から巡航ミサイルまで幅広い対処能力を有します。ハンガリーはウクライナ支援を進める欧州各国に在って例外的にウクライナ支援へ冷淡である一方、これはロシア産エネルギーへの依存度の高さを示していますが、同時にロシア軍事力脅威を直視し、国軍近代化を急いでいます。■

 スイス政府はペトリオットミサイルPAC-3-MSE調達について正式契約へ進みます。スイス空軍は空軍作戦能力を一新するAIR-2030計画を推進中であり、これまでになかった広域防空ミサイルを導入する計画ですが、取得するミサイルはペトリオットミサイルと方向性を定めたのち、PAC-3とするかPAC-3-MSEとするかが議論されていました。

 レイセオンミサイルシステムズ社とロッキードマーティン社が開発し製造するペトリオットミサイルシリーズ、原型は1980年代と古いものですがロッキードマーティン社ではミサイル防衛にも用いられるペトリオットミサイルについて、同じく同社が手掛けるイージスアショア陸上配備型ミサイル防衛システムと連接させる新技術開発を進めています。

 ペトリオットミサイルは将来発展性としてイージスアショア陸上配備型ミサイル防衛システムと連接され、Mk.41VLS垂直発射装置からの迎撃ミサイルをペトリオットミサイルシステムの射撃管制機能が担う、または逆にペトリオットミサイルのM-903四連装発射装置からの運用をイージスシステムが管制する技術などの開発がすすめられています。■

 フィリピン陸軍はASCODサブラ軽戦車の第二次納入分を受領しました。引き渡し式典は10月27日に実施、ASCODサブラ軽戦車は砲塔システム部分の製造をイスラエルのエルビットシステムズ社が担っており、10月6日のイスラム武装勢力ハマスによる無差別テロ攻撃を受けイスラエル政府が戦時体制に移行、納入が憂慮されていました。

 ASCODサブラ軽戦車はオーストリアスペイン共同開発のASCOD装甲戦闘車車体を利用し、エルビットシステムズ社が開発した105mm砲塔を搭載したもので戦闘重量は30t、フィリピン軍はこの砲塔システムをオーストリア製パンドゥール装甲車に搭載した機動砲型も導入する計画で、フィリピン軍は建軍以来初の戦車部隊を整備する最中です。■

 韓国陸軍はKAI韓国航空宇宙産業製KUH-1ヘリコプター200号機を受領しました、納入式典は2023年11月2日、開発は度重なる難産と予算的問題や技術的問題が立ちはだかりましたが2012年の生産開始以来年々生産を継続し11年目にして200機の大台に到達、韓国軍では240機の調達を計画するとともに友好国への輸出を模索しています。

 KUH-1ヘリコプターは韓国軍のMD-500軽対戦車ヘリコプターとUH-1多用途ヘリコプターを一機種で後継機とするKMH韓国中型ヘリコプター計画として開発、人員15名、若しくは機銃手2名と完全武装兵員9名を空輸可能で、開発開始は2005年、韓国監査院はあまりに野心的な計画として一度は白紙撤回された計画となっていましたが。

 KAI韓国航空宇宙産業は独自開発ではなく海外メーカーとの共同開発を模索、ベルヘリコプターテキストロンのUH-1Yライセンス生産案やアグスタウェストランド社のAW-139韓国仕様型を排しユーロコプター社の協力を採択、EC-332を小型化したような形状として完成させました。エンジンはT-700を採用、高性能を排し手堅い完成度です。■

 ブルガリア議会はストライカー装輪装甲車183両調達予算を承認しました。防衛力近代化を急ぐブルガリア軍は13億8000万ドル規模のストライカー装甲車調達を今後2028年までの期間で導入する構想です。ブルガリア軍は30mm機関砲を備えたM-1296ドラグーンを90両、基本型のM-1126を17両、M-1130指揮通信車33両などを揃える。

 ストライカー装甲車としてはこのほかM-1133装甲救急車24両、M-1135NBCRV特殊武器防護車10両、そして支援用のHEMTT-LET輸送車5両とM-984A4-MEMTT回収車5両を導入するとのこと。13億8000万ドルの契約にはこのほか、車載機銃や遠隔操作銃塔と無線機、予備部品なども含まれ一個旅団を機械化できる水準の装甲車です。■

 ドイツのMBDA社はPARM対戦車地雷の製造を再開しました、ウクライナへドイツが軍事援助として多数を供給していますが、これは過去に生産されたものでありウクライナ供与の結果、NATO全体の備蓄が枯渇しつつあり、1994年に製造を終了していましたが、28年ぶりの製造再開となっています。2600発が7400万ドルにて製造される。

 PARM対戦車地雷は三脚座を用いた飛翔型地雷で多数が必要となる埋設式地雷とは異なります、射程40mの対戦車ロケット弾を内蔵し、管制起爆式かワイヤー検知方式により戦車の側面を狙う。設計は西ドイツで製造は1988年から開始、具体的な生産数としては1991年から1994年にかけ2万5000発、今回の再生産地雷は2027年に納入予定です。■

 アメリカのロッキードマーティン社はTPQ-53対迫レーダ装置の無人機探知への活用を模索しています。TPQ-53対迫レーダ装置は旧型のTPQ-36対迫レーダ装置の後継として2011年に開発されたもの、TPQ-36は最大24㎞先の迫撃砲弾やロケット弾を10目標同時追尾し射撃位置を標定、標定ののち99座標を記録する性能がありました。

 TPQ-53の探知距離は60㎞に延伸し、アメリカ陸軍は2013年までに51基を導入、対砲レーダ装置と対迫レーダ装置をアメリカ陸軍は170基保有しています。ロッキード社のデイビットケネウェグ氏は11月2日、同社工場の報道公開に際し、TPQ-53の対無人機運用能力を発表したかたち。TPQ-53はウクライナへも軍事援助で供与されています。■

 アメリカのアーカンソー州にレイセオン社とラファエル社がミサイル工場を新設します。新しい工場ではイスラエル軍が使用しアメリカ軍でも運用を検討しているアイアンドームミサイル防衛システム用のタミールミサイルと、アメリカ軍仕様のスカイハンターミサイルを製造するとのこと。地対空ミサイル在庫の枯渇懸念へ先手を打ったかたち。

 スカイハンターミサイルとタミールミサイル工場の建設予定とはアーカンソー州イーストカムデンが予定されていて、レイセオン社とラファエル社は共同で3300万ドルを投資する計画です。アイアンドームはガザ地区などからの武装勢力ロケット弾攻撃を今年9月まで有効に防いでいましたが、現在のガザ騒擾では数千発を撃たれ飽和しました。■

 ベルギー陸軍は無人機対策にベネリM4自動散弾銃を導入します、小型無人航空機、偵察による情報優位や場合によっては手榴弾運搬などの攻撃用途に用いられる2010年代以降の新しい脅威に対して各国は携帯式電子攻撃装備や対無人機用電波妨害車両と対抗無人機など様々な装備を開発していますが、撃ち落とすには散弾銃も選択肢となる。

 ベネリM4スーパー90自動散弾銃、この採用に際して電子攻撃装置やほかの対抗手段など散弾銃以外も含め、ベルギー軍では様々な装備品の中から評価プロセスを通じ、自動散弾銃を選定しました。ベネリM4はレイルシステムに光学照準器や暗視装置を装着可能、ほかの対無人機装備よりも汎用性が高く、また軽量である点も評価されたようです。■

 タイ陸軍はM-758-ATMG装輪自走砲の配備を拡充します。興味深いのはこのM-758-ATMG装輪自走砲はタイ国内において組み立てられており、タイ国内防衛産業育成という視点から装備化が進められていること。M-758-ATMG装輪自走砲はイスラエルのソルタム社製52口径155mm砲システムをチェコのタトラ社製トラックに搭載したもの。

 M-758-ATMG装輪自走砲は現在24両が製造されているとのことですが、11月中に更に6両を納入し2023年内に30両体制とする、そして新たにタイ海兵隊もM-758-ATMG装輪自走砲を6両調達する検討を進めている。実質的にこの装輪自走砲はソルタム社が各国に供給するATMOS装輪自走砲ですが現地組み立てが需要を喚起したかたちです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【G3X撮影速報】第10師団創設61周年守山駐屯地祭【4】師団祭は防衛を考える機会に(2022-09-05)

2024-01-15 07:00:22 | 陸海空自衛隊関連行事詳報
■能登半島地震の師団
 第10師団の警備管区は東海北陸地方となっています。

 第10師団祭、思い浮かべるのはこの時点でまさか元日の能登半島地震というものを想定できた方はいなかっただろうなあ、という当然のことと共に、この第10特科連隊の中部方面特科連隊移管や戦車大隊廃止改編前の混乱下での震災が起こるとは、ということです。

 特殊防護隊による除染展示、想定では敵から化学兵器が散布された、想定の展示です。忘れてはならないのは北朝鮮は化学兵器禁止条約に批准しておらず、そしてVXガスを海外での特殊作戦に使用した実例があるということ、もし名古屋にミサイルで撃ちこまれたら。

 戦車と共に普通科が。戦車について、ロシアウクライナ戦争の戦訓と、その前の2020年ナゴルノカラバフ戦争も含めて考えさせられるのは、やはり一定の損耗を強いられる覚悟は必要、という、いわばいかに技術が発展しようとも近接戦闘兵器だ、ということでしょう。

 74式戦車は古めかしい戦車ではあるのですが、それにしても3月に戦車大隊が廃止され、後継にたった一個中隊の16式機動戦闘車しか来ないというのは心もとない。代りに装甲車も来ない、96式装輪装甲車も戦車大隊廃止に併せ他の部隊へ管理替えとなり師団を去る。

 戦車は強いのです。アクティヴ防護装置や無人機迎撃能力を持つRWS遠隔操作銃塔なども当然必要ではあると考えるのですが、先ず一定数を確保しなければ、優れた戦車も現場にいなければ意味がない、という現実です。もちろん戦車定数というものは認識しますが。

 定数という視点から考えますと、なにより任務達成がその根拠となるべきですし、定数にあわせた高性能化が難しいのであれば代替装備が必要となります。それはもちろん、近年は120mm砲をもつ50tの装甲車も開発されている故、代替装備がない訳ではない。

 損耗はあるていど見込まなければならない。故に高性能であっても、ランボーやメイトリックス大佐のような無敵のポテンシャルを戦車に求めるのは無理があって、すると一定数を考えなければならないのですが、その損害見積もりの概算根拠が気になるのだ。

 防衛についてはブラックボックスになっている部分が多い、故に国民は政府が大丈夫だと言っているので大丈夫なのだろうと考え、自衛隊も国家を防衛するならば何とかなるだろうと考え、結果的にどういう戦闘を展開するのかが無関心の帳の向こうにあるのですよね。

 例えばロシアウクライナ戦争、ウクライナが敗北する可能性はない、ロシアにはどうがんばってもキエフを陥落させるには戦略核か大量の戦術核兵器を使うか、もしくは今の経済制裁を半世紀我慢するか、という。ただ、負けずとも国民の負担は重い事となるのです。

 来年度防衛費は7兆9200億円といいまして、今年度防衛予算と比較しての増額は1兆1300億円というかなりの積み増しとなっています、ただ、防衛費は札束で相手を叩くのではなく中身がどのような能力や装備と訓練体系となるかで左右されるものだとおもう。

 自衛隊の問題と云いますと、いきなり廃止か軍拡か、という極論になってしまう。これは例えば国政選挙で民主主義か日本廃止かを問わず現実的に代議士を選ぶのと比べると極論だと思う、しかしここで憲法違反かの原則論に留まるならば、選択肢は改憲の一択に。

 昭和生まれで憲法と親しんで育った世代としては、憲法の数多権利を守る為にも防衛力は必要だと考えますが、しかし防衛力の中身については、もう少し踏み込んだ議論、若しくは脅威に対応できるかの能力構築を検証できる公的機関、国民の議論が必要と思うのです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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