北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

新年防衛論集二〇二四【11】ラピットドラゴンやハーベストホークのような運用とその先の専用航空機

2024-01-07 20:00:41 | 北大路機関特別企画
■泥縄式防衛力整備の限界
 B-17はもともと爆撃機ではなく哨戒機であり沿岸防衛用であった、実際アメリカは第二次大戦緒戦に誤報でしたが戦艦榛名撃沈を発表しています。

 自衛隊は地上配備型として、その射程から射程内の周辺国に敵意を突きつける地対地ミサイルを大量配備するという現在の施策を採るよりも、安全保障協力法により活動範囲が拡大したことを受け、敢えて航空防衛力に現在整備されている反撃能力を転換してゆくべきではないのか、という視点でミサイルキャリアーを整備すべきと思う。

 B-21爆撃機、アメリカのノースロップ社が現在開発しているB-2爆撃機の後継機は爆撃機としての運用に加えて空対空ミサイルを大量に搭載し、DMO分散型ドクトリンに基づいた、ほかの警戒監視システムが標定した目標に対して空対空ミサイルを大量投射する運用を模索しているという。肝心のB-21初飛行はもう少しさきのようだが。

 C-17輸送機をミサイル母艦のように運用するラピットドラゴン計画やKC-130空中給油輸送機にミサイルを搭載するハーベストホーク計画など、輸送機をミサイル運用に、つまりミサイルキャリアーとして運用する計画は既に複数存在していて、防衛装備庁もC-2輸送機ミサイルキャリアー化の研究を開始したことが2023年に報じられた。

 C-2輸送機、アメリカが輸送機をミサイルキャリアーとして運用する計画の背景には、もはやアメリカ軍が将来想定する戦場では超長射程のミサイルが乱れ飛ぶ厳しい戦場となるため、安穏とヴェトナム戦争のように最前線へ輸送機が物資を輸送できるような状況ではないという念頭に、では輸送機の有事の任務とは、という視座がある。

 ラピットドラゴンやハーベストホークのような運用は日本でももちろん考える必要があると思う。いやそれ以上に、入間と美保に配備されているC-2輸送機はC-1輸送機と同程度まで機数を回復させるべきであるし、小牧のC-130Hも、取得費用が高騰しているC-130JなどではなくC-2を配備すべき、そしてもう一個飛行隊増やすべき。

 しかし、そのさきに、です。日本としてはこのまま地対地ミサイルを増強する、陸上自衛隊のミサイル自衛隊化というべき状況を進めるべきなのだろうか、それよりは様々な地域へ展開させるための装備であると方便が成り立つ、オーストラリアが一応検討したB-21爆撃機のようなものを導入すべきではないか、とおもうのですね。

 F-35戦闘機とともにイギリスとともに共同開発を進めるGCAP次期戦闘機計画と、F-15戦闘機近代化改修計画、航空自衛隊の防空能力は大きく強化されてゆく過程にはあるのでしょうけれども、それ以上に我が国周辺ではJ-20戦闘機の量産強化や既に膨大な数となっているJ-16戦闘機と、日本の防空強化は既に後手となっている状況だ。

 爆撃機とは、と反論される方もいるのかもしれませんが、これは都市爆撃など、日本で記憶されているB-29のような運用を念頭としたものではなく、海洋哨戒と対艦攻撃を念頭としたB-17のような運用、というべきなのでしょうか。もちろんB-17は使い方によっては爆弾搭載能力も大きく、というよりもドイツでは都市攻撃に用いられましたが。

 航空優勢を確保できる戦闘機、といいますか要撃機、これを確保することが理想なのでしょうけれども。かつて中国空軍が4000機と世界最大の空軍を保持していた時代にはその戦闘機はJ-6やJ-7,日本は沖縄県を含めその戦闘行動半径外でした。しかし現在は機数こそ大幅にコンパクト化しましたが、Su-27やJ-10などは西日本まで戦闘行動半径に含む。

 F-2戦闘機でも充分な数が合れば、中国軍に対して、反撃能力とか、敵基地攻撃能力というような踏み込んだ防衛力を整備せずとも、つまり今までの種類の装備で充分対抗できるのかもしれませんが、それはF-2戦闘機をかつてのF-86F戦闘機のような数、F-86Fは420機ほど名古屋で製造されましたが、これくらいなければ足りません。

 年産36機程度、というところでしょうか。もちろんF-35の配備やGCAPの開発と並行して量産して、なんとか中国空軍の圧力に対抗できる、という印象です。ここまでの大幅な拡張は非現実的である、と成りますと、何か選択肢を変える必要はないか。ここでB-21のような航空機とC-2のラピッドドラゴン運用を提示しました次第です。

 結局のところ、防衛力は現状では不充分なのですが、継ぎ足し方式の戦闘機定数のような泥縄式の防衛力整備だけで十分なのか、ゲームチェンジャーのような画期的な防衛力の核心を行う必要はないのか、と考えるのです。もっとも、これは今政府が進める反撃能力こそがこれに当るのですが、そのほかにも選択肢はないのか、考えてみました次第です。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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新年防衛論集二〇二四【10】航空打撃力は射程内を限定し敵意突き付ける地対地ミサイルよりも周辺国に配慮

2024-01-07 18:11:44 | 北大路機関特別企画
■ミサイルキャリアー
 敵意を突き付けないことで事を荒立てない事が重要なのか敢えて突き付ける事で相手を交渉の場に引き釣り出す事が良策なのかは難しい論点ですが、私は前者が重要だと思う。

 航空戦力、いやまだ航空防衛力と表現するべきでしょうか。日本の憲法を考えますと、射程の長い地対地ミサイルに注力するよりも、やはり航空戦力を重視するべきではないかと考えます。もちろん反論はあるでしょう、航空戦力といっても周辺国、特に日本よりも経済規模の大きな国の戦域防空能力の高さという点で現実的か、と。

 ミサイルを搭載した昔でいうところの支援戦闘機であっても、ミサイルの射程にはいる前に阻止されるのではないか、という危惧がこれにあたる代表的なものと考えるのですが、私はこの点についてそれほど悲観していません、射程2000kmのミサイル、陸上自衛隊へ配備を計画しているミサイルであれば、本州北部からも充分届く。

 航空機からの打撃力、これを重視する背景には、"相手に明白な脅威を突きつけない"という一点とともに"戦力を集中させやすい"という一点を付け加えます。その背景には。地対地ミサイルは、配備されている駐屯地や対空疎開へ展開する演習場などから、届く範囲しか攻撃しません。どこを狙っているか相手に示してしまうのです。

 射程からどこを狙うのか、というのは基地名や施設名ではなく、どの国を狙うのか、という意味であり、具体的にいえば日本本土に射程2000kmのミサイルを配備した場合に、これは中東情勢を睨んだものである、とかアフリカ方面の緊張に備えている、と説明したとしても、いや2000km以内を狙ったものだろう、と反論されてしまう。

 日本の周辺安全保障情勢を鑑みれば、たとえば台湾海峡有事は日本に大きな影響を及ぼしますし、朝鮮半島情勢も同様です。そして南西有事などは自衛隊がもっとも警戒する地域であり、当然、反撃能力、敵基地攻撃能力、名称はどうあれ概ね狙っている地域は陸上配備型の場合は示してしまっているのです。緊張を誘発する。

 しかし、航空機からの運用では、その装備はなにしろ航空機に搭載するならば世界中に展開させることが出来るという方便が成り立ちますので、周辺国に対して、貴国を狙ったものではないのです、という方便はある程度説得力を持ちます。これら航空機がたとえば台湾海峡などで恣意的な訓練を行わなければ言い分は説得力を持つ。

 陸上配備型については、もちろん利点はある。たとえば掩砲所に発射装置を掩蔽し、弾薬などを分散配置しましたならば、かなりの攻撃を受けた場合でも、それは戦術核兵器を含めて、攻撃から生存することが可能ですし、航空機や艦艇の場合、再装填にはかなりの時間や機材が必要となりますが、陸上ならば自動化さえ可能です。

 地対地ミサイルの場合は隠すのもそれほど難しいものではありません、道路上で移動するために情報保全、一般国道などでみられないように移動するには限界はあるのかもしれませんが、立ち入り制限の国有地や演習場にいったん隠れてしまえば、ほぼ航空偵察ではみつけることができません。発見されないことは生存性と同義だ。

 しかしながら、前述の問題がある。いや、端的に言うならば、地上配備するミサイルは、射程から中国と北朝鮮とロシアが、自らが狙われているという認識を払拭することはできません。そして日本としても合理的に、あなたの国を狙ったものではないと証明できない、万一に備えたものとか特定の国が標的ではない、といえるのみ。

 航空機、さて。F-15戦闘機やF-2戦闘機にこれらミサイルを搭載したイメージを思い浮かべる方がいるかもしれませんが、その際に思い浮かべるのは、何発搭載できるか、その疑問符が即座に、とても陸上配備とくらべて充分な数を搭載できるとはおもえない、という結論でしょう。戦闘機には本来の防空任務の担うのだから。

 航空戦力の重要性、ここで敢えて考えるべきなのは、現在の枠組みの先を考える必要があるのではないか、ということ。具体的にはミサイルキャリアーのような航空機を別枠で考える必要はないか、という。ここで。オーストラリアは2023年国防白書において、B-21の装備は現段階で不要、という結論を示しました。この点です。

 B-21,支援戦闘機とかそういう枠組みではないと反論があるのかもしれませんが、オーストラリアが検討したような、ミサイルキャリアーというものを日本も本腰を入れ検討すべきではないのか。B-21はまごうことなき爆撃機ですが、アメリカでは大量の空対空ミサイルをB-21に搭載し、ミサイルキャリアー運用を検討しています。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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新年防衛論集二〇二四【9】航空防衛力の要撃任務と対艦戦闘限定からの脱却と想像超える航空防衛の実情

2024-01-07 07:00:52 | 北大路機関特別企画
■戦闘機の数を巡る課題
 十年前といいますか小泉政権時代や第一次安倍政権時代に現在の厳しい安全保障情勢を伝える事が出来たとしても、考え過ぎだと一笑されるでしょう。

 航空自衛隊の任務は歴史的な転換を迎える、それは要撃任務と対艦戦闘だけを主任務としていた冷戦時代型の防衛力では、現在の脅威に対応出来なくなっているという厳しい認識です。ただ、任務に対応できない中でも、憲法上の制約を再検討しなければ、まず訓練体系から法整備まで基盤を固めることさえ出来ない状況があります。

 憲法なんていつでも変えられる、と豪語された自称識者の方や無視できる、と強がられました方を幾人か知っていますが、国民投票の手続きはいうほど簡単ではありません。法整備が憲法上のけんけつを縫うことは出来るでしょうが、装備体系と運用まで踏み込めず、軍事合理性を無視した整備しかできないことは自明でしょう。

 政治問題化するリスクを考えた場合、違法の訓練を行っているとの国会での議論となった場合には政治は現場の要望に応えられないわけですし、また装備体系にも法的な整合性が必要となります。ただ、解釈改憲の限界があることも確かであり、もっとも現在の国家安全保障戦略は解釈改憲に無限の可能性を示していますが、分水嶺はある。

 憲法改正はいずれ必要となるのかもしれませんが、このあたりは国民の政治への関心度とともに、まず現状をしる為の努力、労働時間と余暇のなかから政治への時間を捻出する努力をおこなわなければなりません。他方で、現行憲法の本土決戦主義、戦後日本は第二次大戦末期戦からのモラトリアム主義という実状は看過できるのか。

 こうした認識が必要なのですが、上記の問題をどれだけ棚上げしたとしても、まず日々警戒監視任務とともに対領空侵犯措置任務に当たる航空自衛隊は、こうした準備多寡にかかわらず、緊張の増大を直接受けることになります。さて。課題となるのは航空優勢、いや言い方を変えましょう、日本を爆撃されないための選択肢です。

 10年近く前の状況としまして、中国軍のミサイル爆撃機編隊が和歌山沖まで進出、東海10型ミサイルはこの地域から京都はもちろん、東京をミサイル爆撃できる射程を有しますから、このあたりから、中国との有事で沖縄が、という遠い場所が戦地という先の大戦のような認識ではなく安全保障は東京を含め逃げ場がないという単純な事実をつきつけました。

 緊急発進の回数が年間2000回をこえてしまったのもこのころなのですが、この際に、防衛力はこのままで大丈夫なのか、という問題を突きつけられたもので、実際問題、この示威的な航空機の運用はしょうこうじょうたいとはなったものの、同じような航空機異常運用は今度は中華民国台湾へむけられることとなっています。

 台湾への異常な航空機による示威行動は2020年に顕著となり、これにより飛行時間の異常増大からF-5などの老朽航空機の墜落事故が頻発するようになり、結果的に台湾は防空をホークミサイルなどによる照準に切り替え、異常な航空機接近以外は戦闘機を緊急発進させない運用へと転換してしまいました、いわば、対応不能になった構図だ。

 自衛隊の戦闘機は大丈夫なのか、2000回を越えた異常な中国機による示威行動はいまでこそ沈静化していますが、その能力は逆に強化されており、いまは台湾の番、というだけでしてまた今度次に、日本の番、が再来した場合、戦闘機の数は大丈夫なのか、考えてゆかなければ成りません。少なくとも現状では厳しいのですから。

 GCAP次期戦闘機のイギリスとの共同開発がすすんでいまして、これにより自衛隊は第六世代戦闘機をF-2戦闘機の後継機として導入することとなり、このF-3戦闘機というべき将来装備は2035年にも実用化されるという展望で開発は進められていますが、問題はこの2035年が今年でまだ2024年、10年以上さきでまだ姿形がない。

 F-2再生産、冗談ですねもう工場にラインを再編する余地がありません。F-15EXの導入、これも実質厳しいのはボーイングの生産能力限界から異常な価格高騰にさらされていて変な話もう一つ三菱が工場を増設した方がまだましかもしれない。するとF-35増強いったくとなるのでしょうか、いやF-35も決して安価ではありません。

 MQ-9のような無人機、非武装型を監視用に導入するようですが、AIM-9Xを搭載する能力があるMQ-9をある程度戦闘機の補助にもちいるのか、もしくはオーストラリアが開発しているロイヤルウイングマン無人僚機を導入して1機あたりの負担を軽減させるのか。戦闘機を増やす必要性はあるのですが、そのほかの選択肢も考えねばなりません。

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