北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】イギリスアーチャー装輪自走榴弾砲一号車受領とフォックスハウンド耐爆車改良,イタリアダルド装甲戦闘車後継

2024-01-16 20:01:41 | インポート
■防衛フォーラム
 今回は陸軍関係の話題ですが、戦車部隊や砲兵部隊を維持していながら動く戦車が無いとか火砲がもう無いという国は何を普段訓練しているのかが気になります。

 イギリス陸軍装甲車両更新へフォックスハウンド耐爆車両の改良型調達が検討されています。フォックスハウンドは2009年からイギリス軍のISAFアフガニスタン国際治安支援任務部隊用に供給されている大型の四輪駆動装甲車両で、6名が乗車、戦闘重量7.5tと全長5.32m及び全幅2.1m、IED簡易爆発物を警戒し車高は2.35mと車幅に対して高い。

 フォックスハウンド耐爆車両を生産するジェネラルダイナミクス社では、このハイブリッド電気駆動方式のフォックスハウンドMk2をイギリス陸軍へ提案しており、既存のフォックスハウンド後継としてイギリス陸軍との間で協議が進められているとのこと。イギリス陸軍は2012年から400両を取得していますが、メーカーは生産再開が可能としている。
■ブラジルレオパルト1
 こういうところに一応動く74式戦車中古車体の需要はないものか。

 ブラジル陸軍は計画されていたレオパルト1主力戦車近代化改修計画を無期限延期することを発表しました。この背景にはレオパルト1戦車の予備部品が世界規模で枯渇しているため、ブラジル軍が確保できる見通しが無くなったためとされています。レオパルト1戦車はウクライナ軍へ供与が決定し、これにより再稼働準備が進められているさなか。

 レオパルト1戦車は第二世代戦車、欧州では運用が終了していますが退役した戦車の多くは予備として保管されるか第三国に転売されています。ただ、予備保管された車両は長期間にわたり稼働状態に無いものが多く、現役復帰には予備部品による再整備が必要で、これが逆に現在も限られた予算故に第二世代戦車を運用する各国に影響が出始めています。
■レオパルド2稼働数維持
 日本はまあ普通に動いているのですが世界中戦車を減らした国でアフガン派遣など歩兵重視の改編を行った国はこんな話ばかり。

 カナダ軍はレオパルド2戦車について稼働数維持の問題にさらされているもようです。この問題が再認識されたのは2023年11月よりカナダ軍はNATO加盟国としての義務を果たすべくNATOラトビア戦闘団へ戦車15両を派遣するもので、11月に最初の1両がカナダ軍C-17輸送機により現地へ搬入される計画です。しかし問題は戦車の稼働率だ。

 レオパルド2主力戦車をカナダ軍は74両装備しています、2022年には戦車保有数は82両でしたが、このうち8両をウクライナ軍事支援として提供しており、その供与した戦車こそカナダ軍の即応可能な戦車となっていました、8両とはいえ保有数82両のカナダ軍にとり一割を提供した事となる。そしてカナダ軍は82両を2035年まで運用予定でした。

 戦車稼働率維持へカナダ国防省は15億カナダドルを投じて既存のレオパルド2A4戦車稼働率を維持させる計画ですが、問題はNATOラトビア戦闘団などカナダ戦車の国外派遣は2013年のアフガニスタン派遣以来で、供与と海外派遣の狭間で残る戦車の即応体制を維持しつつ延命改修として工場で長期整備させる、このことが簡単ではありません。
■M-109-50試験
 自衛隊も一時期75HSPにFH-70の39口径砲身を取り付ける検討が。

 イギリスのBAEシステムズ社はM-109自走榴弾砲のM-109-50試験を成功させました。M-109自走榴弾砲は世界で最も成功した155mm自走榴弾砲といい、冷戦時代の1963年に制式化されています、その最大の特色は将来発展性の大きさで当初こそ22口径の短砲身砲、当時の標準砲を採用していましたが30口径に対応、現在は39口径砲を載せている。

 M-109自走榴弾砲はM-109A6と改良型のM-109A7がやはり39口径砲を採用していますが、これでは最大射程は30㎞程度、射程延伸弾を用いてもぎりぎり40㎞に達しません、M-109-50は新しい52口径155㎜榴弾砲に換装するもので、これにより射程は40㎞から弾薬次第で50㎞に達することができ、2020年代にも通用する水準となります。
■モータープールマンデー
 なあるほど働き型改革だ。

 アメリカ陸軍はモータープールマンデー制度の再検討を開始しました。モータープールマンデーとは、土曜日と日曜日に放置された車両を新しい一週間の訓練開始に合わせて総点検する制度で、アメリカ本土は勿論、在日米軍や在韓米軍に在欧米軍から派兵部隊まで基本的な習慣として行われている制度ですが、そこまで整備間隔は必要なのか、と。

 モータープールマンデー見直しは10月9日にひらかれましたアメリカ陸軍協会年次総会において陸軍のランディージョージ大将が再検討についてふれていまして、大将の方針としまして整備間隔を稼働率維持に必要な水準に抑えることで陸軍全体の整備専従要員を最適化し、必要な戦闘要員や支援要員に振り分けることは出来るといきごみました。
■アーチャー装輪自走榴弾砲
 99HSPをそのままボルボの建機に載せたような設計は日本も19WHSPの開発に際して見習うべきだった。

 イギリス陸軍はアーチャー装輪自走榴弾砲一号車を受領しました。最初の車両はDSTL王立砲兵技術研究所に納入されました。イギリス陸軍はもともと1990年代に大幅な砲兵戦力削減を実施していますが、2022年ロシアウクライナ戦争勃発とともに貴重な砲兵装備をウクライナに提供し深刻な砲兵不足に見舞われていた中での新装備導入です。

 王立砲兵隊の隷下部隊として王立砲兵研究所があり、王立砲兵連隊は評価試験を担うとともに実戦部隊をも担い、計画ではアーチャー装輪自走榴弾砲を14両導入する計画です。今回のアーチャー装輪自走榴弾砲導入は決定から六か月後に一号車が納入されることとなり、ウクライナ支援を行いつつNATO全体の能力強化への緊迫度がみてとれるようです。
■ダルド装甲戦闘車後継
 装軌式は一応残すのですね日本の様に。

 イタリア国防省はダルド装甲戦闘車後継装備導入計画を明示しました。10月17日に発表された来年度予算文書によれば、老朽化したイタリア国産装備であるVCC-80ダルド装甲戦闘車の後継選定開始へ2024年に先ず選定費用と調査費用として4800万ユーロを計上、今後14年間のうちに52億3000万ユーロをその調達計画としてもりこむとのこと。

 ダルド装甲戦闘車は25mm機関砲を標準装備しTOW対戦車ミサイル運用能力をもつ装甲戦闘車で量産は2003年より開始されました、ただVCC-80の名称にある通り開発は1988年までに完了しており、予算不足から量産開始が2000年代まで遅れ、車体は防弾鋼板ではなくHEAT弾に脆弱なアルミ合金を採用するなど設計の陳腐化も指摘されています。

 次期装甲戦闘車については現在のところ、後継装備を調達するという点のみが決定していますが、新たに国産開発を行うのか、それども輸入車両の調達か外国製装備のライセンス生産かも含め検討中です。ただ、イタリア軍は25mm機関砲を備えたフレシア装輪装甲車を導入しており、これでは不十分であるために装軌式の装甲戦闘車を調達するもよう。
■エストニアトルコ製装甲車導入
 トルコ製装備の魅力は価格なのですが同時にトルコリラ暴落により更に手ごろ感が出ているというなにか日本にも当て嵌まる要素が。

 エストニア軍はトルコ製装甲車230両を導入します。ECDIエストニア国防調達局によればロシアからの軍事脅威増大を受け継続的に防衛力強化を進めているエストニア国防省はトルコのオトカ社とヌロルマキナ社から複数種類の装輪蝋降車を230両調達する2億ユーロ規模の契約を締結したと発表しました。納入は2024年より開始されるとのこと。

 オトカ社からはアルマ装輪装甲車、ヌロルマキナ社はNMS軽装甲車を調達するとされ、アルマ装輪装甲車は六輪型が供給される見通し。エストニア軍は現在陸軍の現役部隊2個旅団のうち1個旅団は機械化を完了していますが、第2歩兵旅団はトラックなどにより起動します、今回調達する230両の装甲車は第2歩兵旅団機械化に充てられるようです。
■イタリア陸軍HIMARS
 イタリアも稼働戦車が払底し火砲も大半が退役など建て直しに課題を抱えている。

 イタリア陸軍はHIMARS高機動ロケットシステムの導入を決定しました、これは重戦力の近代化停滞による稼働装備数の危機的な低下を受け進められているイタリアのNATO加盟国としての加盟国義務履行という側面をゆうする82億ユーロ規模の軍再建施策の一環で、戦車の更新や装甲車の改修とともに砲兵火力の強化を進めているものです。

 HIMARS高機動ロケットシステムの導入予定数は21両、調達費用は1億4500万ドル規模が見込まれ、GMLRS精密誘導ロケット弾などの調達を加え7年間で10億ドルの調達を構想しています。HIMARS導入の背景にはロシアウクライナ戦争における有効性確認が挙げられ、イタリア空軍が保有するC-130J輸送機にも搭載が可能となっています。
■ラトビア軍MD-530
 わるい航空機ではないのだけれども運用と想定脅威を考えると生きて帰ってこれるのかなあ。

 ラトビア軍はMD-530軽攻撃ヘリコプター3機の導入を決定しました。導入されるのはMD-530Fであり、限定的な対戦車戦闘能力と航空支援や偵察任務と特殊部隊緊急展開任務などに対応できるほか、平時においては空軍操縦士の技量維持飛行用に用いられるとのこと。なお、ラトビアではヘリコプターを含め航空機はすべて空軍が所管しています。

 ラトビア軍には旧ソ連製Mi-17ヘリコプターが配備されていましたが退役しており、現在、アメリカ設計の機体をポーランドが民間型としてライセンス生産したものの軍用型であるUH-60M多用途ヘリコプターが3機、そしてソ連製のアントノフAn-2軽輸送機3機とラトビアのペレグリン製タラゴン軽飛行機2機が練習偵察機として配備されています。
■EMP電磁パルス試験装置
 これも無人機対策だ。

 防衛装備庁は汎用軽機動車を原型としたEMP電磁パルス試験装置を開発中です。これはEMP装置搭載用移動式架台として調達概要情報に川崎モータースMULE-PRO-EPS-GN1-KAF820FPFNN一式の調達が明示されていたもので、近年地上作戦に大きな不確定要素を与えている小型無人機ドローンに対抗するための装備開発です。

 汎用軽機動車EMP装置搭載用移動式架台、2022年発表の国家防衛戦略及び防衛力整備計画では、無人機対策の電子戦部隊新編が明記されており、開発装備と同様の装備は既にアメリカ海兵隊がポラリスMRZR汎用車両へ電磁妨害装置を搭載し無人機対策に用いられていることから自衛隊でも同様の装備体系開発を模索していると思われます。
■M-1299自走榴弾砲
 99HSPのシステムをそのまま輸出した方がよかったように思う。

 イギリスBAE社による52口径型M-109の開発にM-1299自走榴弾砲の去就に注目が集まっています。M-1299自走榴弾砲はアメリカ軍向け、M-109A7自走榴弾砲の車体部分に新しい砲塔システムを組み込んだもので、XM-208砲システムと自動装填装置を採用、新たにXM-1113誘導砲弾やXM-1155射程延伸砲弾などが並行して開発されていました。

 M-1299自走榴弾砲により52口径の主砲は通常榴弾で射程38㎞と射程延伸弾で70㎞以遠を目指し、長年アメリカの弱点とされた長距離砲兵火力は大幅に延伸する計画でしたが2020年代に入り自動装填装置の開発に難渋していると伝えられていました。52口径型M-109は自動装填装置を有しませんが安価な代替案となり得る装備と言えましょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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ウクライナ情勢-Su-34戦闘機3機喪失の南部戦線とクピャンスク周辺ロシア軍大規模攻勢再興準備

2024-01-16 07:00:40 | 国際・政治
■防衛情報-ウクライナ戦争
 ウクライナ軍の現状はアメリカからの軍事援助が停止したままの状況ではオスキル川まで撤退を強いられかねない状況があります。F-16供与の準備などは進んでいるようだが。

 Su-34戦闘機3機を一気に喪失したロシア空軍はウクライナ南部での航空作戦を完全に停止した、イギリス国防省ウクライナ戦況報告1月6日版によれば、ロシア軍はウクライナ南部地域にぽいて2023年12月22日、Su-34戦闘機を短期間で3機撃墜される事となりました。並列複座型戦闘爆撃機でロシア航空宇宙軍は開戦時150機程度を保有した。

 ウクライナ南部ではロシア軍第18諸兵科連合軍が昨年末にかけて攻勢に転じていたものの、結果的に失敗し作戦を中断しました。この背景にはSu-34がドニエプル川東岸地域における航空支援に大きな役割を担っていたため、この欠如が重大な結果を齎せた、とも解釈できます。1月以降航空作戦を再開したものの、その規模は小規模となっています。
■クピャンスク
 ウクライナ軍はクピャンスクを保持できるのか。

 クピャンスク周辺でロシア軍が次の大規模攻勢準備を完了しつつある可能性がある、ISWアメリカ戦争研究所1月5日付発表によれば、クピャンスク地区には第1親衛戦車軍と第6諸兵科連合軍から成る部隊が包囲を固めているものの、2022年から2023年春にかけての冬季攻勢以外では積極攻勢に使われず戦力をある程度回復させている可能性が、と。

 クピャンスクが戦略上の要衝である背景には、クピャンスクとボロヴァの二つの地域がロシア軍に占領される事で、ウクライナ軍は自動的にオスキル川まで撤退を強いられることを意味し、これはオスキル川東岸地区の全面放棄を意味しているとともに、ハリコフ州におけるウクライナ戦線の大規模な建て直しを強いられることにもなります。
■サキ空軍基地を攻撃
 ウクライナ軍はロシア軍の軍事リソースを分散させなければオスキル川までの交代を強いられかねない状況ですが。

 ウクライナ軍はロシア本土のサキ空軍基地レーダー施設等を攻撃した、ISWアメリカ戦争研究所1月6日付報告によれば、ウクライナ軍事情報総局からの情報としてサキ空軍基地の施設を破壊したほか、フリシネに所在する兵器貯蔵施設を攻撃したとしており、ウクライナ本土へのロシア軍攻撃増大に対する報復攻撃を着々と実施しているもようです。

 セバストポリ付近のロシア軍司令部、クリミアの防空中枢であるエフパトリア防空システムおよび通信センター、ペルヴォマイスケの弾薬庫なども攻撃したとしており、既に幾度かに分けて実施されているロシア黒海艦隊司令部への攻撃と併せ、クリミア半島への攻撃も強化しているもよう。ロシア軍の軍事圧力を分散させる効果などがかんがえられます。

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