■主戦場をどこに見いだすか
自衛隊の改編は一種アメリカ軍の影響と独自の防衛力整備が折衷されたものと解釈できますが、アメリカ軍において近年新たな潮流が有ります。
自衛隊の即応機動連隊方式の部隊編成は、どういう戦闘を想定するのか。もちろん、騎兵部隊のように偵察任務、威力偵察に充てるならば最良の編成です、従来の偵察警戒車5両で25mm機関砲を射撃するだけでは斥候で敵の有無は測れても、前衛を突破し敵の防御態勢を解明するほどの戦闘は相手が軽歩兵でも難しい。
即応機動連隊の編成を念頭に、試案として、装甲機動連隊、遠征機動連隊、という編成を提案したのが2022年です。即応機動連隊の機動戦闘車隊を戦車隊に置き換え普通科を装輪装甲車ではなく装甲戦闘車で充足するという編成の提案が装甲機動連隊です。戦車を自衛隊が300両装備する場合は15個装甲機動連隊となる。
装甲機動連隊とともに、遠征機動連隊として提案したのが、遠征できるように軽量装備、高機動車と軽装甲機動車中心の普通科中隊、機動戦闘車隊ではなく対舟艇対戦車隊、という編成で、ありきたりの普通科連隊をもとに即応機動連隊型の編成を目指すというものでした。C-2でも、おおすみ型でもフェリーや列車でも。
しかし、この旅団戦闘団の小型版という編成を自衛隊が大車輪ですすめるさなかにアメリカ軍が旅団戦闘団の再編を開始しました、この二年三年のこと。具体的には砲兵旅団の師団砲兵や兵站にあたる戦闘支援の枠組みを旅団単体での運用から、寧ろ従来の師団を基準とした、師団あっての旅団という編成に再編している。
アメリカ軍の再編、この目的は旅団戦闘団方式が採用された時代の、師団のもとで複数旅団をローテーション運用するという概念から、師団全体が一帯となって任務に当たる必要が生じた点にほかなりません、小型師団というべき機甲旅団戦闘団、これまでは相当危険な状況でもこの旅団戦闘団と空軍の打撃力で事足りた。
旅団戦闘団からの再編は、旅団戦闘団では対応できない状況を想定せざるを得なくなった、というもので、例えばロシア軍の欧州への大規模侵攻、スヴァルキギャップなどへの攻撃、そして台湾海峡有事を含む中国との軍事衝突などが考えられる。戦車師団を相手に機甲旅団戦闘団では対抗が難しい状況がありうるゆえ。
自衛隊はどう対応するべきか。もちろん自衛隊が台湾海峡有事において中国軍と地上戦を交えることはなかなか想定できず、もちろん近年の反撃能力のような、10年前には想定できなかったことがある、という表現は重ねましたが、おそらく10年後を考えても、自衛隊が台湾で中国軍と対峙する状況は架空戦記の範疇と思う。
即応機動連隊や水陸機動連隊という編成を堅持するべきか、そしてほかの普通科連隊にも思い切った改編を行うべきなのか。現状維持というのは難しいよう思うのです、なにしろ現在の自衛隊師団と旅団は、北部方面隊をのぞけば戦車部隊が廃止、青森と名古屋と広島の師団旅団隷下に残る戦車部隊も3月中に廃止予定です。
戦車なし、特科なし、いや特科は担当大隊として方面特科連隊から一個大隊が配属されるという検討があるようですが、対砲レーダ装置を持つ情報中隊がないままでは現代砲兵戦は対応できません。大隊ではなく情報中隊をもつ隊編成であれば、と考えるのですが。閑話休題、現状のままでは普通科連隊は厳しいのではないか。
グランドデザインを考える場合、そもそも主戦場をどこに見いだすのか、離島全てか、飛行場などが置かれる拠点離島を重点的に防衛するのか、九州と北海道など平野部がある地域か、いっそ日本以外の地形を想定するのか。つまり作戦単位をどこまで柔軟に分割するのか、戦力集中原則を遵守するのか、ということ。
離島防衛を考えるならば、中隊規模の戦闘群か、戦車班と普通科班に携帯無人機を配備した分遣支隊と、一定以上の面積の離島に配備する地対艦ミサイル中隊と高射特科中隊に警備隊より成る日本型沿岸連隊、既に石垣島や奄美大島に編成されているような部隊が理想ですし、師団を重視するならば第2師団型が理想だ。
即応機動連隊と遠征機動連隊に装甲機動連隊、これらを旅団単位で編成統一し、その上部組織として少数の師団を置くことが理想だとは思う、けれども、これは当面の案であって周辺情勢の緊迫度合いは想定を超えています、すると理想図、防衛力はどうあるべきなのかということは、考え続けねば成りませんね。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
自衛隊の改編は一種アメリカ軍の影響と独自の防衛力整備が折衷されたものと解釈できますが、アメリカ軍において近年新たな潮流が有ります。
自衛隊の即応機動連隊方式の部隊編成は、どういう戦闘を想定するのか。もちろん、騎兵部隊のように偵察任務、威力偵察に充てるならば最良の編成です、従来の偵察警戒車5両で25mm機関砲を射撃するだけでは斥候で敵の有無は測れても、前衛を突破し敵の防御態勢を解明するほどの戦闘は相手が軽歩兵でも難しい。
即応機動連隊の編成を念頭に、試案として、装甲機動連隊、遠征機動連隊、という編成を提案したのが2022年です。即応機動連隊の機動戦闘車隊を戦車隊に置き換え普通科を装輪装甲車ではなく装甲戦闘車で充足するという編成の提案が装甲機動連隊です。戦車を自衛隊が300両装備する場合は15個装甲機動連隊となる。
装甲機動連隊とともに、遠征機動連隊として提案したのが、遠征できるように軽量装備、高機動車と軽装甲機動車中心の普通科中隊、機動戦闘車隊ではなく対舟艇対戦車隊、という編成で、ありきたりの普通科連隊をもとに即応機動連隊型の編成を目指すというものでした。C-2でも、おおすみ型でもフェリーや列車でも。
しかし、この旅団戦闘団の小型版という編成を自衛隊が大車輪ですすめるさなかにアメリカ軍が旅団戦闘団の再編を開始しました、この二年三年のこと。具体的には砲兵旅団の師団砲兵や兵站にあたる戦闘支援の枠組みを旅団単体での運用から、寧ろ従来の師団を基準とした、師団あっての旅団という編成に再編している。
アメリカ軍の再編、この目的は旅団戦闘団方式が採用された時代の、師団のもとで複数旅団をローテーション運用するという概念から、師団全体が一帯となって任務に当たる必要が生じた点にほかなりません、小型師団というべき機甲旅団戦闘団、これまでは相当危険な状況でもこの旅団戦闘団と空軍の打撃力で事足りた。
旅団戦闘団からの再編は、旅団戦闘団では対応できない状況を想定せざるを得なくなった、というもので、例えばロシア軍の欧州への大規模侵攻、スヴァルキギャップなどへの攻撃、そして台湾海峡有事を含む中国との軍事衝突などが考えられる。戦車師団を相手に機甲旅団戦闘団では対抗が難しい状況がありうるゆえ。
自衛隊はどう対応するべきか。もちろん自衛隊が台湾海峡有事において中国軍と地上戦を交えることはなかなか想定できず、もちろん近年の反撃能力のような、10年前には想定できなかったことがある、という表現は重ねましたが、おそらく10年後を考えても、自衛隊が台湾で中国軍と対峙する状況は架空戦記の範疇と思う。
即応機動連隊や水陸機動連隊という編成を堅持するべきか、そしてほかの普通科連隊にも思い切った改編を行うべきなのか。現状維持というのは難しいよう思うのです、なにしろ現在の自衛隊師団と旅団は、北部方面隊をのぞけば戦車部隊が廃止、青森と名古屋と広島の師団旅団隷下に残る戦車部隊も3月中に廃止予定です。
戦車なし、特科なし、いや特科は担当大隊として方面特科連隊から一個大隊が配属されるという検討があるようですが、対砲レーダ装置を持つ情報中隊がないままでは現代砲兵戦は対応できません。大隊ではなく情報中隊をもつ隊編成であれば、と考えるのですが。閑話休題、現状のままでは普通科連隊は厳しいのではないか。
グランドデザインを考える場合、そもそも主戦場をどこに見いだすのか、離島全てか、飛行場などが置かれる拠点離島を重点的に防衛するのか、九州と北海道など平野部がある地域か、いっそ日本以外の地形を想定するのか。つまり作戦単位をどこまで柔軟に分割するのか、戦力集中原則を遵守するのか、ということ。
離島防衛を考えるならば、中隊規模の戦闘群か、戦車班と普通科班に携帯無人機を配備した分遣支隊と、一定以上の面積の離島に配備する地対艦ミサイル中隊と高射特科中隊に警備隊より成る日本型沿岸連隊、既に石垣島や奄美大島に編成されているような部隊が理想ですし、師団を重視するならば第2師団型が理想だ。
即応機動連隊と遠征機動連隊に装甲機動連隊、これらを旅団単位で編成統一し、その上部組織として少数の師団を置くことが理想だとは思う、けれども、これは当面の案であって周辺情勢の緊迫度合いは想定を超えています、すると理想図、防衛力はどうあるべきなのかということは、考え続けねば成りませんね。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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