◆新中期防計画年度内に要求仕様画定
防衛省は昨年末に発表された新防衛大綱に基づく統合輸送能力確保に向け、その具体的施策とし、強襲揚陸艦の導入計画を発表しました。
海上自衛隊は、島嶼部防衛と大規模災害へ対処すべくその輸送能力の強化が求められています。現在海上自衛隊には、おおすみ型輸送艦３隻、ひゅうが型ヘリコプター搭載護衛艦２隻が配備され、いずも型ヘリコプター１隻が建造中と１隻が計画中です。しかし、これらの艦艇は実任務と整備補給に定期整備を交代で行っており、数の上では決して十分ではありません。更に、南海トラフ地震などの大規模災害には全てを動員可能ですが、島嶼部防衛などで先島諸島や沖縄本島へ増援部隊を送るには、ヘリコプター搭載護衛艦には護衛艦としての任務がありますし、全てを導入できる訳ではないのです。
ボノムリシャール。強襲揚陸艦の導入計画発表ですが、強襲揚陸艦とはヘリコプターの運用能力を重視し、水陸両用戦部隊等の洋上からの発進拠点として、全通飛行甲板により同時に多数の航空機を運用する外洋の洋上拠点です。
航空母艦と外見は似ていますが、航空母艦は戦闘機などの運用により洋上から航空優勢を確保し、打撃力とするもので、その役割は少々違います。もっとも、アメリカ海軍のニミッツ級原子力空母は中南米への介入作戦で陸軍ヘリコプター部隊の母艦となったことがありますし、強襲揚陸艦もハリアー攻撃機が搭載可能ですので、軽空母的な運用が構想されたこともあり、一概に言えないのですが。
海上自衛隊は輸送艦おおすみ型を３隻運用しています。全通飛行甲板を採用していますので、本型を強襲揚陸艦と思われる方もいますが、本型は満載排水量１４０００ｔ、航空機よりもエアクッション揚陸艇LCACの運用を主眼としており、艦内に揚陸艇用ドックを持つ、ドック型揚陸艦に区分されるもので、全通飛行甲板は車両等の甲板係留を想定しているもの。ヘリコプターの発着は可能ですが、飛行甲板は全通飛行甲板の後方のみ、艦内に車両甲板があり、多用途ヘリコプターもローターを取り外せば収容できない事もないものの、やはり主眼としているのは重装備の揚陸です。
強襲揚陸艦は現在建造中の護衛艦いずも型と比較して、従来の輸送艦と比較した場合により高い輸送能力を求めていることから恐らく同程度かそれ以上の船体規模を有し、陸上部隊の収容と輸送能力に加えヘリコプターの他に新中期防衛力整備計画にて導入が計画されているMV-22可動翼機の
搭載なども検討されていることでしょう。もしや、護衛艦いずも型が、ながと、の呼称を採らなかったのは、輸送艦は半島名から命名されるのですが、大型化に伴い命名基準を変更、護衛艦も変更されているのですが、その名前に相応しい一隻となるのでは、と考えたりもしますが。
ホイットビーアイランド級ドック型揚陸艦、おおすみ型と形状は違いますが、任務はこちらとおおむね共通です。搭載するLCACは７０ｔの装備、９０指揮戦車が５０ｔですが、これを９６浬の沖合から５０ノットの速力で進出させることが出来ます。自衛隊は冷戦時代に、ソ連の軍事的圧力を受けていたことから北海道へ有事の際に本土からj装備部隊を含め緊急展開させることを主眼とし、ヘリコプターによる空中機動部隊を軽装備で緊急展開させるよりは、戦車など重装備の揚陸が可能な装備を選定しました。
フランスのミストラル級強襲揚陸艦、満載排水量２１５００ｔの本型、一見高価そうに見える強襲揚陸艦ですが、第一線で戦闘を展開するよりは洋上の航空拠点として用いられる艦ですので、速度が倍加すれば機関出力が二乗倍必要になるのですが、速度なども大きくする必要が少なく、商船設計規格等を用いて建造費を縮減することが可能で、ミストラル級も二隻で建造費は６億８５００万ユーロとなっています。ひゅうが型護衛艦が概ね一隻で１０００億円ですので、
経済的に見て我が国の経済力からは、ミストラル級程度の強襲揚陸艦であれば数隻から十数隻建造することも、不可能とは言えないでしょう。
輸送能力を単純に強化するのであれば大型の強襲揚陸艦を整備する選択肢は当然あるのですけれども、このほかに例えばシンガポール海軍のエンデュアランス級ドック型揚陸艦のように満載排水量で８０００ｔ程度の輸送艦を大量に建造し、現在輸送艦を装備している自衛艦隊の第一輸送隊のように少数精鋭を集中するのではなく、地方隊と自衛艦隊に広く装備し、稼働率を踏まえたうえで複数の輸送艦を即応体制とすることも考えられるとは、おもいます。
ただ、強襲揚陸艦と言いますと我が国で一番多くみられるのは米海軍が佐世保に前方展開させているエセックス級強襲揚陸艦です、満載排水量は４００００ｔ以上と護衛艦いずも型の二倍以上という世界最大級のもので、海上自衛隊としては大型艦をかなり意識して装備化を考えているのかもしれません。具体的仕様は、兎も角装備する、という指針が示されたのみで青写真さえ見えない状況下で判断すべきではありませんが、仮に大型艦が建造されたならば、防災面では拠点艦に、防衛では抑止力の象徴となり得ます。今後の展開を見守りましょう。
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
このニュースを見た時、ちょうど「艦これ」に揚陸艦あきつ丸が導入されたばかりらしく、異常にツイートが伸びていたのを思い出しましたw
かねてより私も主張していた強襲揚陸の導入が現実的となって、嬉しさ半分・切迫感に不安を感じます。
ただ、いずもにせよこれにしろ、航空機運用に最適な艦が多くなる反面、海自のヘリは減少傾向ですし、オスプレイもそうですが自衛隊は機動力向上の名の下に打撃力が不足気味ではと思ってしまいます。海自が将来的にＦ３５Ｂ構想があるのでしょうが、プラットフォームだけでなく今後の中身への整備が非常に気になります。
益々ご活躍ですね。
日本近海の荒波対策で、ミストラル級はNGでしょう。
災害対策、海上自衛隊悲願の空母保有願望を考えれば、エセックス級強襲揚陸艦程度の船を希望しているでしょう。
自分の関心は、エセックス級からどの程度変更になるかです。
ステルス性、LCACは何隻？合計6隻から9隻？戦闘機は？速力は22ノットでいいのか？
同級艦予定は何隻？
等が知りたいですね。
益々ご活躍ですね。
日本近海の荒波対策で、ミストラル級はNGでしょう。
災害対策、海上自衛隊悲願の空母保有願望を考えれば、エセックス級強襲揚陸艦程度の船を希望しているでしょう。
自分の関心は、エセックス級からどの程度変更になるかです。
ステルス性、LCACは何隻？合計6隻から9隻？戦闘機は？速力は22ノットでいいのか？
同級艦予定は何隻？
等が知りたいですね。
少し私なりに整理させていただくと。
・完全武装の連隊戦闘団（10式戦車or機動戦闘車1個小隊4両を含む）の揚陸能力が基本。
・オスプレイの運用能力＆ウエルドックは不可欠。
・速力はおおすみ級と同等の21ノット程度で十分、機関は燃費のよいディーゼルとする。
というところでしょう。
先月号の「世界の艦船」によると、こーいう艦種は相応に商船構造を用いてもけっこうな価格になるそうでライフサイクルコストについては最大の配慮が必要となるでしょう。
艦型についてはワスプやオーシャンのような空母型かサン・アントニオやロッテルダム（この場合オスプレイは甲板格納庫搭載）のような通常船型かも悩ましいところですね？
導入されるのは「輸送艦」なので釈明の必要はありません。
仮に釈明するとしても「国土奪還用であり純然たる防衛用装備であります」で終了。
憲法違反の根拠となるソースを出せよ。
政府の見解では、そんなの出てないからな。
まあ陸自の無駄を減らすあれが有るならできるでしょうけど…
特A ワスプ級のような4万t級強襲揚陸艦
A ミストラル級のような簡易強襲揚陸艦
B 英ベイ級のような輸送揚陸艦
C 英ポイント級のようなRORO船
のどれがいま必要なのかを、よくよく考える必要があると思います。同規模の艦であれば、揚陸能力は「特A > A > B > C」ですが、輸送力そのものは「A < B < C」ですし(特Aは船体規模が倍以上なので比較困難)、調達はもとより運用コストは、「A = 2B = 4C」（特AはAの3-4倍するでしょう）くらいの差があるかと。
アメリカ級は3000億円規模、ミストラル級の1隻350億円というのはおそらく船体のみで、実際には500億規模かと。おおすみが270億。ベイ級も200億ほど(為替があるので+/-30%の誤差はある）。ポイント級は資料があるのですが、ちょっとまだ整理していないので、一旦パス。
ちなみに、私の理解では、「おおすみ」級は典型的な「B」クラスの船です。
開戦前の緊急展開では、安価で数の多い「C」の方が遥かに優れますし、港湾施設のない離島への急速展開であれば、比較的安価でLCU/LCACの運用できる「B」が最適でしょう。
一方で、占領された島への逆上陸は「A」が最適、「B」でもなんとか役には立つ、「C」は第1派には無力、という感じかと思います。
個人的には現時点では「B」クラスが良いのかなと思います。例えば、おおすみ型の1.5倍の排水量を持ち、ヘリ格納庫を持つ運用能力をもつ船を、3隻追加するとか。オランダの「ウィット」級のようなイメージです。あるいは、「A」クラスのミストラル級(なお、この船は太めの船であり、耐航性に問題があると言う話は聞きませんが、私が知らないだけでしょうか？)。
その調達コストは「B」クラスで1隻350億円、「A」クラスで500億円はするでしょうから、２隻の調達は、護衛艦1隻を削減して対応すれば良いと思います。２隻で留めるのは、予算を残して(=さらに護衛艦1隻を削減して)、「C」級の船を、PFIやなにやをつかって、4－５隻確保して欲しいと考えるからです。
また考えがまとまっていませんが、現時点での私の意見です。
参考まで。