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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】VBTP-MRグラアニ装輪装甲車とパトリアNEMO搭載AMPV自走迫撃砲,PULSロケットシステム

2024-05-27 20:08:17 | インポート
■防衛フォーラム
 今回は陸軍関連の話題ですがグラアニ装甲車という96式装輪装甲車と同程度の取得費用d調達できる装備の話題を最初に。

 フィリピン陸軍は新たにVBTP-MRグラアニ装輪装甲車の配備を開始しました。VBTP-MRグラアニ装輪装甲車はブラジル製でイヴェコ社がブラジル国内において製造している装輪装甲車、車体部分はドイツのウニモグトラックが応用され、6輪式装甲車ながら安価にまとまっていることでブラジル軍は2012年より2044両の調達を決定している。

 VBTP-MRグラアニ装輪装甲車はフィリピン陸軍にも安価で高性能として28両の採用が決定、今回最初の5両がフィリピンに到着したとのこと。ただ、この車体にウニモグ社製車体が採用されていたため、ブラジルとドイツの国家間摩擦に際してドイツ政府がウニモグ車体輸出を規制対象としたため納入が大幅に遅れ、昨年末漸く出荷が叶いました。
■スカイレンジャー
 沿空域という高度10mから50mまでの利用されていない空域の軍事利用に対して日本は無防備すぎやしないかと。

 オーストリア軍はパンドゥールEVO装甲車にスカイレンジャーシステムを搭載します。これはラインメタル社との間で現在調整が進められているもので、オーストリア軍が装備するパンドゥールEVO装輪装甲車の一部、少なくとも36両に対してスカイレンジャー機関砲システムを搭載、30mm機関砲による低空防空に充てるというもの。

 スカイレンジャーシステムは2023年12月にハンガリー軍が開発契約を結んでおり、オーストリア軍もこの潮流に乗ったかたち。一時は時代遅れと言われた30mm機関砲による低空防空システムは、国境地域などでの小型自爆用無人機多数による攻撃という新しい脅威を迎える現代に在って、安価だが確実な防空システムとして注目を集めています。
■レオパルト2A8
 あれだけチェンタウロ装甲偵察車を保有し120mm砲搭載のチェンタウロ2を量産開始するイタリアでも、機動砲は戦車の代りにはならないのだという実情を突き付けていますが本邦は。

 イタリアが導入するレオパルト2A8戦車はイタリア製戦車砲を搭載する方針とのこと。アリエテ戦車の深刻な稼働率低下を前にイタリア軍はロシアウクライナ戦争を受け従来型の大規模戦争への対応能力を再構築するべく主力戦車部隊の稼働率強化を模索、この結果アリエテ主力戦車の稼働率強化は費用対効果に乏しいと判断しました。

 レオパルト2A8をドイツより導入しつつ独仏将来戦車計画に参加する、こうした方針を示したものですが、レオパルト2A8について、ドイツから完成車体を導入するのではなく、イタリアのレオナルド社がラスペツィアに有している装甲車両組み立て施設においてレオパルト戦車を組み立てる方針で調整を進めています。この際に仕様も変える。

 イタリア仕様レオパルト2A8戦車の開発については既に2023年12月にレオパルト2に関する改良などを担うKNDS社との間で契約に盛り込まれているとのことで、レオナルド社は火器管制装置や指揮統制システムと無線機のイタリア軍仕様搭載を進めていますが、ここにイタリア製120mm戦車砲の搭載が加わる。イタリアは130両を導入する。
■アージュンMk-1
 日本の10式戦車はT-72戦車と同じ重量に90式戦車以上の性能を注ぎ込む事に成功した訳ですがこの困難さをインドが示している感じ。

 インド軍が導入するアージュンMk-1戦車の製造が遅延の見込み。これはエンジンとして1400hpのドイツMTU社製4ストロークV型10気筒多燃料液冷ターボチャージドディーゼルエンジンを採用したものの、肝心のエンジンがMTU社からの納入遅延があったため。このエンジンはターボチャージャー部分をインドが生産しています。

 アージュン戦車は1974年からセンチュリオン戦車の後継戦車として開発を開始したものの技術不足から遅々そして進まずT-72戦車やT-90戦車などを繋ぎとして導入し、2010年に漸く試作車が完成、T-90S戦車との競合試験に勝利し採用が決定しました。なおこのアージュンとは神話マハーバーラタに登場する戦士アルジュナにちなんだもの。
■レオパルト1A5
 戦車は数が必要なのだという厳しい現実を欧州が冷戦後の判断のツケを支払う最中に本邦では74式戦車が退役しました。

 ギリシャ陸軍はレオパルト1A5戦車の近代化改修を検討しているとのこと。ギリシャ陸軍は既にレオパルト2戦車を導入しているものの第二線級となっているレオパルト1についても能力向上は必要な選択肢として重視しています。レオパルト2の組み立てやリンクス装甲戦闘車計画などに参加しているギリシャのEODH社案が示されました。

 EODH社によれば、LEP改修として特に砲塔の対戦車火器や自爆用無人機などからの防御力強化型を提案しており、砲塔部分の全周にわたる追加式中空装甲と上部には金属製の屋根を追加、また車体側面と車体正面装甲についても追加装甲を装着し、またデータリンク能力についても大幅に強化し、主砲は105mmだがミサイルを運用するというもの。

 戦闘重量はこれらの改修により46tにまで増大する為、エンジンを現在の860hp水準から1000hpまで強化するとともに懸架装置も強化し、機動性を確保する案です。ギリシャ軍は1983年より104両のレオパルト1を採用、冷戦後はオランダから中古車両170両を取得するなど中古レオパルト1を集め続け、現在も500両以上が現役となっています。
■パトリアAMV
 日本の選択は正しかったのかとパトリアAMVについてドイツのボクサー装甲車の話題と共によくかんがえるところなのです。

 スロバキアはパトリアAMV装輪装甲車のライセンス生産を開始します。これはフィンランドのパトリア社とともに進める技術移転の一環であり、スロバキアの防衛企業CSMインダストリー社が受け皿となりスロバキア軍向けパトリアAMV装輪装甲車の国内生産体制を確立するためのもの。技術移転契約そのものは2022年に結ばれました。

 BOV装甲車計画としてスロバキア軍は次期装輪装甲車にパトリアAMVを選定、スロバキア軍は76両のパトリアAMV装輪装甲車を導入します。またその際に独自の装備として30mm機関砲を備えたスロバキアのトゥーラ社製砲塔GTS-30/A機関砲塔を搭載することとなり、この為にスロバキア国内での生産でパトリア社と合意しました。
■PULSロケット
 MLRSもHIMARSも生産が手一杯ということでイスラエルからロケット砲を導入するのですが一方で日本ではMLRSを廃棄して解体しているのですよね。

 オランダ陸軍はPULSロケットシステムの第一陣の2両を受領しました。PULSロケットシステムはイスラエルのエルビットシステムズ社製でアメリカのM-142HIMARS高機動ロケットシステムと同様にコンテナ式ロケット弾薬を運用する装甲トラック式の機動砲兵システムで、オランダはロシアウクライナ戦争を受け導入を決定しました。

 PULSロケットシステムが採用された背景には、HIMARSを製造するロッキードマーティン社がフルレート生産を行うものの納入時期が相当先となり、喫緊の歩兵火力不足を補うべくイスラエル製が採用されたもの。計画では20両を導入し、第13軽歩兵旅団と第43機械化旅団に2個小隊編成8両から成るロケット歩兵中隊を置く構想です。

 ロシアウクライナ戦争を受けての緊急調達であるため、車体部分はチェコのタトラ社製タトラ815-7軍用六輪型トラックに搭載されていますが、この装備は非装甲でありオランダ軍の整備補給体系には無い装備であり、先ず車体と共に導入した後、発射装置だけを概ね2026年以降、スカニア社製グリファス装甲トラックに載せ替える計画があります。
■最新ハリマウ中戦車
 首都防衛には戦車というのは日本と同じ。

 インドネシア陸軍は遷都を前に最新ハリマウ中戦車をボルネオ島に配備しました。インドネシア陸軍は長らくフランス製AMX-13軽戦車を運用していましたが、ドイツ軍余剰のレオパルト2主力戦車導入により主力戦車の重要性を認識し、トルコとの防衛協力を受けトルコのカプラン中戦車をもとにハリマウ中戦車を開発することとなりました。

 ハリマウ中戦車、今回ボルネオ島に配備されたのは陸軍第13騎兵大隊で、ハリマウ中戦車9両が配備されたとのこと。この背景には2024年8月17日に首都を現在のジャカルタからボルネオ島の新都市ヌサンタラに遷都することが間近となった為、ボルネオ島の防衛力を国産戦車により強化したいという国威発揚も背景にあるのかもしれません。
■パトリアNEMO
 自衛隊がパトリアAMVを採用した際にこちらも採用するのではないかと期待していましたが先に米軍が試験を開始したという。

 アメリカ陸軍はパトリアNEMO搭載AMPV自走迫撃砲型試作車を受領しました。1960年代から多数が納入された軽装甲だが使いやすいM-113装甲車の後継装備としてアメリカ陸軍はブラッドレイ装甲戦闘車の車体部分を利用した重装甲のAMPV多目的装甲車両を受領していますが、自走迫撃砲は従来型の戦闘室に迫撃砲を置いたものでした。

 今回イギリスのBAEシステムズ社は改良型の自走迫撃砲型をアメリカ軍へ納入したとされ、発表されたものはExMEP外部ミッションパッケージ方式によりパトリアNEMO自動迫撃砲システムを搭載したもの。パトリアNEMOはパトリアAMV装甲車などに搭載し、自動装てん方式で、且つ行進間射撃能力を持つ世界初の間接照準可能な砲兵装備です。
■国産開発のバッテリー
 国産技術を育てる世界の潮流の一つ。

 タイ陸軍は国産開発のバッテリーの海外製戦車搭載試験を開始しました。タイ陸軍には中国より導入したVT-4主力戦車と、1990年代にアメリカより導入したスティングレイ軽戦車が配備されています。タイの工業力では残念ながら主力戦車は勿論軽戦車さえ国産化する能力はありませんが、先ずは関連技術、バッテリーを国産開発したとのこと。

 ARDO国防研究開発局とコンケン大学は共同し独自のリチウムイオン電池仕様バッテリーを開発し戦車用に改良、これは2022年のOPS-MHESI科学技術研究イノベーション振興事業の一環として行われています。従来の車体には鉛式蓄電池が採用されていましたが、今回の搭載により同じバッテリー区画でもより大容量の電力供給が期待されています。
■新型NASAMS
 AMRAAMに一本化するという施策は日本では考えられないような一見リスクが有りそうには見えるのですが量産効果と備蓄を考えると選択肢なのでしょうか。

 ノルウェー国防省は新型NASAMS地対空ミサイル試験を成功させたとのこと。これはアメリカのレイセオン社が新しく開発した射程延伸型のAMRAAM-ER空対空ミサイルをNASAMSの地上発射システムに適合させる試験で、NASAMSを開発したノルウェーのコングスベルクディフェンスアンドエアロスペース社が主導しています。

 NASAMS、もともとAMRAAM空対空ミサイルを地上発射型とするものですが、これにはそのまま発射器に詰め込んだだけでは発射できず、コングスベルクディフェンスアンドエアロスペース社がが開発した10インチコントロールアクチュエーターシステムと統合する必要がありました。発射試験では正常にプログラム飛行を行ったとのこと。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ まや
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