北大路機関

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ウクライナ侵攻後のロシア海軍状況:北海艦隊主力の行動と太平洋艦隊日本周辺海域の概況

2022-03-17 07:00:55 | 防衛・安全保障
■臨時防衛情報-ウクライナ情勢
 ウクライナでは停戦交渉に在る程度の双方譲歩があるとの報道もありますが、その緊張は我が国周辺へも及んでいるようで海上自衛隊は警戒を強化している。

 ロシア海軍はロシアウクライナ侵攻に際し、黒海艦隊などがウクライナを攻撃しています。しかし、黒海艦隊以外の艦隊動静は通常と異なります。ロシア海軍主力である北海艦隊はバレンツ海に留まっており、この行動はロシア海軍の戦略ミサイル原潜展開海域でのNATO海軍攻撃型原潜など接近に対して対潜警戒任務を展開していると考えられています。

 ソ連海軍は多数のミサイル巡洋艦を装備し、大きな戦力を発揮していましたが、現在のロシア海軍はソ連崩壊に伴う経済崩壊を受け、大型水上戦闘艦は僅かに1980年代のものが維持されており、新造された水上戦闘艦はコルベットクラスの小型艦に巡航ミサイルを搭載し打撃力のみ特化、2010年代に入り中型の水上戦闘艦と原潜の建造を再開している水準だ。

 我が国周辺でもロシア海軍艦艇の行動が活性化しています。護衛艦まきなみ、は3月14日、宗谷岬南東130kmの太平洋上においてウダロイ級駆逐艦1隻とキロ級潜水艦3隻、及びマルシャルネデリン級観測支援艦とゴーリン級外洋曳船の各1隻が航行しているのを確認したとのこと、これら6隻のロシア艦艇はそのまま宗谷海峡を西進した事が確認されました。

 ロシア艦の14日の行動はこのほかに、青森県の尻屋崎東北島沖170kmの太平洋上にてズヴヨズドチカ級輸送艦が航行中であるのを確認し、掃海艇いえしま、が警戒にあたっています。こちらは津軽海峡を西進し、やはり日本海へ航行したとのこと。ウクライナ侵攻により極東地域のロシア地上軍はかなりが引抜かれており、海軍が行動を強化した構図です。

 3月10日には、ロシア艦多数が同時に10隻津軽海峡を航行するという一幕がありまして、10隻の概要はウダロイ級駆逐艦1隻、シュテレグシチ級フリゲイト4隻、グリシャⅤ級コルベット2隻、アルタイ級補給艦、イゴリベロウソフ級潜水艦救難艦、ソルム級外洋曳船の各1隻が襟裳岬東北東180kmの海域を津軽海峡に向け航行しているのが確認されました。

 シュテレグシチ級満載排水量で2200tとなっていますがS-300系の長射程艦対空ミサイルを搭載し、一部の艦にはカリブル巡航ミサイル用UKSK-VLSが搭載されていまして、小型艦ですが2500km圏内を攻撃可能です。ソ連時代には大型艦の抑止力的な運用が為されていましたが、近年のロシア艦は小型でも打撃力に特化した艦艇が増加、警戒が必要です。

 揚陸艦4隻が津軽海峡通過、昨夜もう一つ注目すべき発表が防衛省よりありました。揚陸艦は二つに分かれており、16日1900時頃、ロシア海軍の揚陸艦ロプチャーⅠ級戦車揚陸艦とロプチャーⅡ級戦車揚陸艦の2隻が、2000時頃にアリゲーターⅣ級戦車揚陸艦とロプチャーⅠ級戦車揚陸艦の2隻が、相次いで津軽海峡を航行、車両等を搭載が確認された。

 揚陸艦の車両は、千島列島に配属されている第52機関銃師団の沿岸警備部隊とも考えられ、これは見方によってはロシア軍はウクライナでの地上戦により深刻な歩兵不足に陥っており、これまで動員してこなかった千島列島からも部隊を引抜かねばならない程の戦況となっているのかもしれません、また引抜いた兵力を補うべく、より演習が拡大する可能性もあるでしょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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