北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】サンアントニオ級後期艦と中国075型揚陸艦量産,ヴィズヴィ級近代化改修

2021-05-31 20:20:07 | インポート
■週報:世界の防衛,最新11論点
 防衛情報、今回は揚陸艦など海軍関係の話題について11の最新論点をお伝えしましょう。

 アメリカ海軍はサンアントニオ級輸送揚陸艦についてフライトⅡと呼ばれる後期建造型艦からMk41VLSや長距離打撃兵器の搭載を内定しました。サンアントニオ級は計画当時、最初から8セルのMk41を搭載し、ESSM発展型シースパロー対空ミサイルによる個艦防空を予定していましたが、予算面などからRAM個艦防空ミサイルに変更されていました。

 サンアントニオ級フライトⅡは14番艦ハリスバーグからであり、現在はフライトⅠとなる2隻が建造中です。サンアントニオ級は画期的なステルスマストを採用した事で知られますが、フライトⅡからは建造費を抑えるべくモノポールマストを採用し、また、NSM海軍ストライクミサイルを搭載し、水上戦闘艦に伍する水上戦闘能力の付与も計画されています。
■中国075型強襲揚陸艦3番艦
 中国海軍はアメリカのタラワ級に匹敵する大型の強襲揚陸艦を量産しています。

 中国海軍は滬東中華造船所にて2021年1月29日、075型強襲揚陸艦三番艦の進水式を実施したとのこと。075型強襲揚陸艦は2020年に一番艦が竣工している中国海軍初の強襲揚陸艦で全通飛行甲板構造を用いている大型艦で、満載排水量は35000tから40000t規模とみられ、アメリカ海軍のワスプ級強襲揚陸艦等を強く意識したものと考えられています。

 075型強襲揚陸艦はその格納庫容積の大きさから各種ヘリコプターを35機から40機を搭載出来るとも推測され、短期間に大量の建造を進めている事で近年特に増強が著しい中国海軍歩兵、水陸両用戦部隊の拡充とともに中国政府の進める海洋政策や周辺諸国との関係が新しい強襲揚陸艦と共に周辺地域への新たな不確定要素をもたらすものとなっています。
■チリ,中古艦にSM-2ミサイル
 チリ海軍は様々な中古艦艇を巧みに運用し独特の強力な海軍体系を構築しています。

 チリ海軍はオーストラリアより中古導入したアデレード級フリゲイトへ長射程のスタンダードSM-2blockⅢAを搭載する方針です。これは2月6日に行ったアメリカ国務省が対外武器供与に関する情報公開へ含まれていたもので、MK 89 Mod0ミサイル誘導装置2基とスタンダードSM-2blockⅢAミサイル16発を8500万ドルで有償供与するとありました。

 アデレード級フリゲイトはオーストラリア海軍がアメリカのOHペリー級ミサイルフリゲイトを6隻ライセンス生産したもので、2005年より退役が始り、2019年に最後の2隻が除籍されました、この1992年に竣工したメルボルンと1993年に竣工のニューカッスルがチリ海軍においてアルミランテラトーレ、カピタンプラットとして再就役し、運用中です。

 OHペリー級はミサイルフリゲイトではありますが、Mk13単装発射機を用いており、これは長射程ながら長大なスタンダードSM-2blockⅢAを収容する事は出来ません。しかしオーストラリア海軍は近代化改修一環としてESSMミサイル用に各艦8セルのMk41VLSを艦首部分に追加しており、スタンダードSM-2blockⅢAはここに搭載すると考えられます。
■米フリーダム級に重大問題
 沿岸海域戦闘艦については野心的すぎる設計から問題が連発しているところですので今更感がありますが。

 アメリカ海軍のフリーダム級沿海域戦闘艦において動力系統に重大な問題が判明しており、アメリカ海軍では製造を担当するロッキード社との間で問題が根本的な是正を行われない限り、新しいフリーダム級の建造及び引渡を拒否する方針を明らかにしています。また既存の就役艦についても欠陥是正が行われるまで、運用の一部が制限されるもようです。

 フリーダム級沿海域戦闘艦は1990年代のフロムザシー構想と将来海軍水上戦闘艦計画ストリートファイター構想に基づき、画期的なステルス設計ときわめて高速の速力を発揮する多目的戦闘艦艇を巡洋艦などのセンサーノードとして運用する水上戦闘艦構想として進められ、軽金属多用の船体をウォータージェットにて40ノットで航行させるというものです。

 今回発見された問題はロールスロイスMT30ガスタービンとコルトピルスティックディーゼルエンジンを連結するシャフト部分、この基部となるボールベアリングで、当初設計よりも遥かに短い期間でベアリングが摩耗する点でした。これはギア部分にも悪影響を与える為、アメリカ海軍では再設計を進めると共に既存艦を35ノット以下で運用する方針です。
■ウクライナ海軍小型艦84隻
 フィリピン海軍が昨年に小型舟艇をアメリカから大量調達していましたが、今度はウクライナです。

 ウクライナ政府は2020年12月8日、アメリカ政府との間で海軍用小型舟艇84隻の供与に関する協定を締結しました。これはアメリカ政府が国防権限法2021に関する連邦議会下院335-78-NDAA2021決議に基づくもので、ロシアの脅威を受けるウクライナへの防衛協力へ盛り込まれているものです。舟艇の形式や詳細などは明らかにされていません。

 ウクライナ海軍はソ連崩壊後に旧ソ連黒海艦隊を継承しましたが、多くがロシア海軍へ脱出され、建造中の艦艇などは中古空母の中国輸出や放置により崩壊、若干の警備艦などが維持されていましたが2010年代クリミア併合とウクライナ東部紛争に際して少なくない数がロシア海軍に撃沈乃至拿捕されており、小規模であっても再編成が急務となっています。
■マレーシア海軍AW-139配備
 AW-139,海上自衛隊のMCH-101と同じレオナルド社製で二回りほど小型の航空機です。

 マレーシア海軍はレオナルドAW-139MOHヘリコプター3機の受領を2022年より開始する計画です。レオナルド社とは旧アグスタウェストランド社を社名変更したもの。このAW-139MOHヘリコプターはマレーシア海軍が進める海上作戦ヘリコプター計画に基づき導入されたもので、海軍ESSCOM東部サバ州防衛司令部へ配備される計画となっている。

 AW-139MOHヘリコプターは15名の人員輸送能力があり、レオナルド社の中型機としては最大の規模であるとともに人員輸送及び海上哨戒任務に用いられる計画です。マレーシア海軍では中国海軍の南シナ海海上行動の増大を背景に海軍近代化を進めており、将来的にはフリゲイトへ艦載機としてAW-139MOHヘリコプターも候補と上がるのかもしれません。
■MCM機雷戦艦最新情報
 MCM機雷戦艦、海上自衛隊も参考とすべき水中無人機母艦という発想の艦艇です。

 オランダ海軍とベルギー海洋軍が導入計画を進めているMCM機雷戦艦用レーダーとして、タレス社製NS-50レーダーの搭載が決定しました。NS-50は小型艦艇用に開発された世界最小の4DアクティヴAESAレーダー、航空機やミサイル、小型無人機の警戒監視能力と共に艦砲火器管制レーダーとしての機能や短射程艦対空ミサイル管制能力を有します。

 NS-50レーダーを搭載するMCM機雷戦艦はオランダとベルギーが二カ国で12隻を導入する次世代掃海艇で、従来の掃海艇が単一の機雷掃討に当っていたのに対し、MCM機雷戦艦は複数の無人掃海艇を包括管制し、搭載する無人機と併せ広範囲の機雷掃討を行う艦艇ですが、併せてこのNS-50レーダーを搭載する事で水上戦闘の一翼を担う事が可能となる。
■ロシア,原潜建造加速
 原潜の建造は時間がかかるものですがロシアはその加速化を21世紀にモジュール建造を導入する事で達成しようとしています。

 ロシアのセヴマシュ造船所は原子力潜水艦造船を担う際に画期的なブロック工法を採用する事で泉水艦建造期間を18カ月近く短縮する事が可能となったと発表した。ロシア海軍では潜水艦建造に際して平均的な建造期間として七年間から八年間を要しているが、建造期間を短縮することで短期間での潜水艦戦力近代化と人件費の縮小が可能となるだろう。

 ボレイ級戦略ミサイル原子力潜水艦、ヤーセン級原子力潜水艦がセズマシュ造船所で建造されている潜水艦であり、ロシア海軍の新造原子力潜水艦は基本的に此処で建造されている。特にボレイ級は老朽化が進むタイフーン級戦略ミサイル原潜などの置き換えから建造が急がれており、ロシアとしては新技術に挑戦してでも早期に建造を行う要望があろう。
■ヴィズヴィー級近代化改修
 ヴィズヴィー級は大きさで護衛艦あぶくま型の四分の一程度の艦艇ですがステルス設計により世界中から注目を集めたものでした。

 スウェーデン海軍はヴィズヴィー級ステルスコルベットについて、どの近代化改修と後継艦開発に関して2300万ドルの契約をサーブ社との間で締結しました。ヴィズヴィー級コルベとは満載排水量650t、57mm艦砲とRBS-15対艦ミサイル8発に400mm魚雷等を搭載しヘリコプター甲板を有しますが、なにより画期的なステルス形状で有名となりました。

 ヴィズヴィー級は非常に優れたステルス設計と40ノットに上る高速性能で有名となり、特に荒天下では700t級の水上戦闘艦が50kmで探知される状況でも8kmまで発見されない程ステルス性が高く、スウェーデン海軍には5隻が導入されましたが、一番艦は1995年に起工したものの進水式は2000年、更に竣工は12年と建造に17年を要した事で知られます。

 スウェーデン海軍は現在運用中のヴィズヴィー級について戦闘システムを一新すると共に本型に搭載されていない個艦防空システムを追加する構想で、更に開発中のサーブ社製軽量魚雷を搭載する方針とのこと。スウェーデン海軍では本型について先進的すぎる設計と配置から使いにくいとの指摘もあり、2040年代まで継続するべく改修を継続する方針です。
■米新補給艦ジョンルイス
 アメリカは艦隊補給艦の刷新に本格化しました。

 アメリカ海軍は新型給油艦ジョンルイスを1月12日に竣工させた。前型にあたるヘンリーJカイザー級給油艦は16隻が建造され、基準排水量9500t、全長206mと満載排水量は40700tで艦艇用及び航空機用などの18000バレルの燃料とドライカーゴ690立方メートル及び20フィート冷蔵冷凍コンテナ8基、1986年から1995年に掛けて建造されている。

 ジョンルイスはジョンルイス旧補給艦の一番艦で全長227m、満載排水量49850tとヘンリーJカイザー級よりも二割程度大型化している。現在建造中のものは二番艦、そして六番艦までが予算化されている。本級は空母戦闘群が必要とする膨大な燃料を輸送すると共に、ヘンリーJカイザー級よりも各種のドライカーゴ輸送能力を強化した設計となっている。
■フィリピン,哨戒艇にATM搭載
 フィリピン海軍も中国の脅威を真剣に受け、予算の上限は厳しいものの海軍力の構築を全力ですすめています。

 フィリピン海軍は新しくイスラエルよりシャルタグMk5ミサイル艇8隻を導入する。フィリピン海軍は中国海軍との緊張増大を背景にミサイル艇を導入するFAIC-Mミサイル哨戒艇計画を進めており一年前の2020年1月にイスラエルよりミサイル艇を導入する方針を既に確定しており、この契約は2億ドル規模のフィリピンには大きな海軍近代化計画だ。

 シャルタグMk5はミサイル艇ではない。しかしフィリピン海軍ではイスラエルのラファエル社製スパイクNLOS対戦車ミサイルを搭載する事でミサイル艇として運用する方針だ。スパイクNLOSは光ファイバー誘導方式を用いており、対艦ミサイルではないものの地上目標も狙いラファエル社が販売する対戦車ミサイルの中では射程が最も長い25kmに上る。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)

コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 【総火演2021特集-第三回】島... | トップ | 【防衛情報】米中戦争備える... »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
チリのSM2 SAMについて (ドナルド)
2021-06-01 21:52:45
調べてみましたが、
・SM2 Blk IIIa 再生産は2017から始まっているのですが、その中にはMk.13 単装ランチャーから発射するためのバージョンも含まれるとのことです。
・元オーストラリア海軍のペリー級FFGは、Mk.41 VLSはshort versionでESSM専用です。一方で、その Mk.13 単装ランチャーは SM2 対応に改造されています。

これらのことから、今回の調達はごく普通に、Mk.13から発射するSM2を購入したのだと解釈できます。

補足まで。
返信する
情報感謝 (はるな)
2021-06-01 21:57:09
ドナルド 様 こんばんは

情報感謝です、豪州MK41を現物で見る機会がありましたのでてっきりSM2用と、勘違いしていました。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

インポート」カテゴリの最新記事