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ロシア軍はウクライナ占領地に大規模な陣地構築-現代のジークフリートライン,ドラゴンの歯にダマスカスの胸壁

2022-10-22 07:00:24 | 国際・政治
■臨時情報-ウクライナ情勢
 現在のウクライナ情勢の推移をみますと一旦ロシアが戦端を開けば合理性抜きに長期化する、ロシアに隣接する北海道の防衛を考えなければならない。

 ドラゴンの歯にダマスカスの胸壁、ロシア軍はウクライナにおいて陣地構築を大規模に進めています、これは冬季を越えて長期的な戦闘を考慮しているのかもしれません。先日からNHK報道などでも映像がでているものですのでご覧の方も多いと思いますが、ロシア軍はウクライナ占領地に長大な塹壕を掘り、そして対戦車障害物や防護施設など構築中です。

 ダマスカスの胸壁というのは競合地域、つまり敵の最前線と防衛施設の中間地域に土塁のような高さ2m前後の短い堤防を複数構築、これは2011年からのシリア内戦において戦車の防護施設として活用された方式です、敵が攻勢にでた際に戦車部隊を展開させ、こちらがわの防護壁として用いる、戦車は胸壁を盾に動きながら射撃、防戦するというものだ。

 掩砲所のような戦車の車体を埋めて砲塔の一部だけ曝し射撃する方式は、対戦車ミサイルや命中精度の高い第三世代戦車の火器管制装置により簡単に無力化される事は30年以上前の湾岸戦争で証明されています、故に胸壁を築いて、これを盾に動き回りながら射撃するという方式、シリア内戦戦訓では一定程度対戦車ミサイルの攻撃を防ぐ効果があった、と。

 ドラゴンの歯というのは、要するにテトラポットのようなコンクリート製障害物です、一定以上の大きさならば戦車を防げるとされる、ただ工兵に簡単に破壊されるので戦車を足止めする効果しかないものですが、時間を稼ぐことが目的です、これを一列に並べるとドラゴンの歯が並んでいるように見えるのでこう名付けられました。古典的なものではある。

 ジークフリートラインという第二次世界大戦中のドイツの防衛線に構築されたのを、当時の連合軍の兵士たちがドラゴンの歯、と名付けたものです。ロシア軍が公開した映像では、一本の線のように延々とドラゴンの歯、その真後ろに塹壕が並んでいて徹底抗戦のかまえというようにみえます。これはロシア軍の決意の現れといえる。もっとも決意だけとも。

 単線防御、一つだけ気になったのは塹壕線は一本の線のように延々と延びていましたが、一本だけでした、これを単線防御といいまして、要するに一本ですと突破された際に総崩れとなるために、戦術上の禁忌とされているのですが、なにか意図があるのか、指揮官の計画が稚拙なのか、これから造るのか、工兵が既に足りていないのか。色々考えられるが。

 バーレブラインという1960年代後半から1973年にかけてイスラエル軍が1967年の第三次中東戦争にて併合したシナイ半島に同様の要塞線のようなものを構築しました、もっとも、イスラエルは人口が少なく、その長い防衛戦に充分な兵力を張り付けることができず、1973年にエジプト軍が侵攻を開始しますと呆気なく総崩れとなりました厳しい戦訓はある。

 ロシア軍、動員により予備役兵の数も一応揃い、これだけの陣地を構築しているという事は長期戦を覚悟しているのでしょう、まもなく冬が訪れますが、相当の戦車を破壊されたために再度雪原を利用して戦車部隊による大規模侵攻を行うには時間がかかります、すると越冬し、一年二年と年単位でのウクライナとの戦闘を想定しているのかもしれません。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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