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【京都幕間旅情】萬年寺,軍港都市呉を眼下に広島新四国八十八カ所霊場の第四十五番札所拝観

2020-03-24 20:06:14 | 旅行記
■多宝塔,呉基地から見上げる
 広島県呉市。呉と云えば瀬戸内海に守られた帝国海軍以来の軍港都市ですが、軍港であると共に都市である訳ですから、古くからの良港としての歴史風土も層が厚い。

 萬年寺、呉市は清水二丁目の湯舟山にあり、寺院も正しくは湯舟山萬年寺といい真言宗醍醐派の寺院です。広島新四国八十八カ所霊場の第四十五番札所となっている寺院です。実のところ数多い札所の一つなのですが、見上げて、とご覧になっている方は多いと思う。

 海上自衛隊呉基地、海軍呉軍港の時代から連綿と続く軍港都市であり、ヘリコプター搭載護衛艦かが母港として海上防衛の中枢を担っているほか、その直ぐ対岸には海軍兵学校、長い伝統を受け継ぐ幹部候補生学校が修練の場とする江田島が今日も喊声に包まれている。

 加賀、航空母艦の名を継ぐ護衛艦かが、を眺める海から視線を転じて山側をご覧になりますと、峰々に続く坂道の街という呉市山腹の美しい住宅街と共に朱色の小ぶりな、しかし美しい仏塔が燦然と存在感を示し、軍港を見守っている様子に気づかされることでしょう。

 元亀年間の1570年に建立されたという萬年寺は、織田信長が天正年間の1577年中国攻めに先立つ中国地方影響力拡大の一環として費用を出したといい、元々は此処とは遥か離れた愛媛県喜多郡長浜町に在ったという。寺の由来はこう聞くのですが少々整合性が難しい。

 寛政年間の1790年頃、この萬年寺は不幸にも落雷により焼失してしまいまして、廃寺同然の状態になったと伝わる。どういった経緯があるかは浅学にして存じませんが、この萬年寺を再興しようと動きが明治初期より始まり、真隆和尚により呉の湯舟山へ移転されます。

 中興開山真隆和尚としてこの地に寺院が転じられたのは明治19年、新たに広島藩の始祖というべき戦国の英雄毛利元就公所縁の不動明王を本尊として再興されました。拡大する呉軍港と共に真隆和尚は鎮護国家を掲げ不動明王に仏法守護の力士仁王像を安置されました。

 ミャンマーの宗教都市マンダレー、ビルマ王国が第三次英緬戦争に敗北した際の首都でしたが、戦後一時荒廃した萬年寺の再興にこの宗教都市との友好関係があります。日本のビルマ戦線はインパール作戦の失敗により失落しますが、自主独立の大義名分だけは、残る。

 大東亜共栄圏という掛け声は南方進出の大義名分に過ぎませんでしたが、敗戦により精神のみが残り、この宗教都市マンダレーより軍港都市呉の寺院である萬年寺へ仏舎利が贈られる事となり、檀家御人々の尽力と共に七堂伽藍という現在の姿へ再興される契機となる。

 多宝塔はこの萬年寺にひときわ目立つ威容、呉駅や呉基地からも望見できますが、これは昭和中期の1965年に教明和尚の呼びかけで造営されています。萬年寺多宝塔は平和塔ともいい、ビルマ戦線はじめ戦死者、呉を出航し帰らなかった艨艟たちの冥福を祈っています。

 比叡、巡洋戦艦の名を継ぐ護衛艦ひえい現役の頃から、実はこの仏塔は、おやあんなところに寺院が、と見上げていたのですが、何しろ目の前は軍港、中々に護衛艦を撮影するだけで時間を使ってしまい、一つ山へと散策へ行こう、という心の余裕を持てませんでした。

 三十三観音や厄除大師という御本尊と共に多くの仏像観音像が安置されている萬年寺は、呉市の高台の海風の澄んだ立地にあり、それでなによりも静かな場所に位置しています。軍港都市の基地探訪とは若干位置が異なりますが、その歴史を感じるにはよい散策路です。

 伊勢、航空戦艦の名を継ぐ全通飛行甲板方式のヘリコプター搭載護衛艦いせ、母港に呉基地が選ばれた頃には散策の余裕が出てきました。呉駅からバスにて行く事も出来るのですが何分不案内でして、行きはタクシー、帰路は最寄りのバス停より呉駅へと戻りました。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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