■巨大な潜水艦の長期航海
そうりゅう型は前型おやしお型よりも居住性はなにか違う、とは前々から聞くところでしたが申し訳ありませんがカタログスペックばかりみていました。
212型潜水艦、ドイツ海軍の主力潜水艦で欧州に広く輸出され韓国海軍も採用している潜水艦と比較すると、これも科員居住区はかなり圧迫されていまして、ただ新規設計だけにAIP機関を既存艦に挿入した日本に対し、液体酸素タンクと機械室を一体化させた212型の設計は特筆されます、ただその分建造費は倍以上大きな潜水艦そうりゅう型と比しても高い。
212型潜水艦はドイツ海軍が前に運用した206型と比較し、食堂に椅子が付きシャワー室新設など居住性に配慮はありますが、日本の場合は食堂の椅子とシャワーは前型からあり、しかし新型の方が圧迫されている、という事情はあるでしょう。おやしお型設計にAIPを挿入する、つまり新型艦船体を11m長くしていれば、こうした問題を回避できた可能性も。
212型潜水艦の方が居住性は下回るのでしょうが、興味深いのは212型が各国へ広報の際に任務航海14日間の内半分をAIP動力で推進する、と説明されていまして、他方海上自衛隊では航海30日以上は基本、と云われています。すると居住性は良好でも、それ以上に長期的な航海を行うにはもう少し見合った配慮が必要だった、といえるのかもしれません。
居住性の悪化が事故原因とは一概には考えないのですが、何らかの判断ミスが無ければ事故は発生しません。もっとも、たいげい型潜水艦とともにAIPからリチウムイオン電池潜水艦へ移行が始まり、そうりゅう型についても鉛電池とAIPシステムの併用から、従来動力にリチウムイオン電池へ換装した方が航続距離が延伸するともいわれ、ここが解決策となるやもしれません。
AIP区画はそのまま船体中央部に挿入されています、艦内での前後の行き来を大きく阻害しているものですし、狭くなった艦内、しかも前後の交通が分断されていますので、元々閉鎖空間である潜水艦を潜水艦の船体だけを見ますと若干大きくなったように見える一方、乗員が居住する空間だけでなく、行き来できる冗長性にも影響が及んでいる、ということ。
居住性は前型と比べて悪い、はるしお型よりも悪い、とは耳にするところです。狭くなったためだろう、と理解していたのですが、艦内配置を見ますと、AIP機関を圧し込んだ事で幾つかの大きな設計変更があるのですね。先ず第一に居住区の集約です。おやしお型までの自衛隊潜水艦は三層、つまり艦内三階建て、として設計されていた。此処は同じです。
はるしお型、おやしお型、勿論その前も含めて、三層の内最下層は電池室、中層は居住区、上層が発令所や機関制御室や魚雷発射室など。ここで狭くなっている訳ですが、問題は其処ではありません、AIP区画が船体中央部に置かれている為に、後方の区画が大きく自動化され、乗員は船体前部だけで殆ど勤務する事に成った点です。心理的にどうなのだろう。
士官居住区の大部屋化。そうりゅう型は前型おやしお型で分れていた士官室が一つの大部屋となっています、そして寝台も三段式です。士官は全乗員の二割、気にしない人は気にしないのかもしれませんが、潜水艦の場合は士官居住区に士官室と士官寝台が並びますので、故に寝食の場が職場の上官部下勤務の場であり服務指導の場であり休息の場なのです。
潜水艦に個室は艦長だけ、これはある種当然なのですが、しかし狭い潜水艦で士官用居住区が大部屋一つ、という点は、前型までが二つの固執に分けていまして大部屋集約では無かったのですから人間関係に影響を及ぼす事は無いでしょうか。海上自衛隊の潜水艦は行動期間が長く、それだけ狭い空間で人間関係が続くのです、この配慮はどう為されたのか。
科員居住区は魚雷室の下だ。科員居住区は艦首側の第一区画、士官居住区は第三区画です。その中間の第二区画には三階が発令所に二階が通信室と電算室、一階は電池室だ。士官と科員が分れているのは軍隊らしい、と思われるかもしれませんが、おやしお型では科員居住区は第一区画と第二区画にありましたので、区画数で半減、容積でみてもかなり手狭に。
ただ、大部屋が一概に悪いか、と指摘されますと水上戦闘艦ではそれ程大きな問題とはなっていません。むらさめ型護衛艦では科員居住区は12名部屋複数に区分けされていましたが、たかなみ型護衛艦からは30名大部屋に戻されています。すると、そうりゅう型の40名規模の大部屋も無茶苦茶な大部屋とは言い難いのかもしれません、ここからは価値観だ。
そうりゅう型は航続距離や静粛性において非常に優れた潜水艦です、しかし乗員は人間であり、通常動力潜水艦は例えば世界では大型に区分される212型が二週間程度の行動を念頭としているのに対し、日本はその倍以上が普通の航海です。自衛隊潜水艦の長い行動期間を考えるならば、もう少し人間工学的な配慮を考えなければ、ならないのでしょうね。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
そうりゅう型は前型おやしお型よりも居住性はなにか違う、とは前々から聞くところでしたが申し訳ありませんがカタログスペックばかりみていました。
212型潜水艦、ドイツ海軍の主力潜水艦で欧州に広く輸出され韓国海軍も採用している潜水艦と比較すると、これも科員居住区はかなり圧迫されていまして、ただ新規設計だけにAIP機関を既存艦に挿入した日本に対し、液体酸素タンクと機械室を一体化させた212型の設計は特筆されます、ただその分建造費は倍以上大きな潜水艦そうりゅう型と比しても高い。
212型潜水艦はドイツ海軍が前に運用した206型と比較し、食堂に椅子が付きシャワー室新設など居住性に配慮はありますが、日本の場合は食堂の椅子とシャワーは前型からあり、しかし新型の方が圧迫されている、という事情はあるでしょう。おやしお型設計にAIPを挿入する、つまり新型艦船体を11m長くしていれば、こうした問題を回避できた可能性も。
212型潜水艦の方が居住性は下回るのでしょうが、興味深いのは212型が各国へ広報の際に任務航海14日間の内半分をAIP動力で推進する、と説明されていまして、他方海上自衛隊では航海30日以上は基本、と云われています。すると居住性は良好でも、それ以上に長期的な航海を行うにはもう少し見合った配慮が必要だった、といえるのかもしれません。
居住性の悪化が事故原因とは一概には考えないのですが、何らかの判断ミスが無ければ事故は発生しません。もっとも、たいげい型潜水艦とともにAIPからリチウムイオン電池潜水艦へ移行が始まり、そうりゅう型についても鉛電池とAIPシステムの併用から、従来動力にリチウムイオン電池へ換装した方が航続距離が延伸するともいわれ、ここが解決策となるやもしれません。
AIP区画はそのまま船体中央部に挿入されています、艦内での前後の行き来を大きく阻害しているものですし、狭くなった艦内、しかも前後の交通が分断されていますので、元々閉鎖空間である潜水艦を潜水艦の船体だけを見ますと若干大きくなったように見える一方、乗員が居住する空間だけでなく、行き来できる冗長性にも影響が及んでいる、ということ。
居住性は前型と比べて悪い、はるしお型よりも悪い、とは耳にするところです。狭くなったためだろう、と理解していたのですが、艦内配置を見ますと、AIP機関を圧し込んだ事で幾つかの大きな設計変更があるのですね。先ず第一に居住区の集約です。おやしお型までの自衛隊潜水艦は三層、つまり艦内三階建て、として設計されていた。此処は同じです。
はるしお型、おやしお型、勿論その前も含めて、三層の内最下層は電池室、中層は居住区、上層が発令所や機関制御室や魚雷発射室など。ここで狭くなっている訳ですが、問題は其処ではありません、AIP区画が船体中央部に置かれている為に、後方の区画が大きく自動化され、乗員は船体前部だけで殆ど勤務する事に成った点です。心理的にどうなのだろう。
士官居住区の大部屋化。そうりゅう型は前型おやしお型で分れていた士官室が一つの大部屋となっています、そして寝台も三段式です。士官は全乗員の二割、気にしない人は気にしないのかもしれませんが、潜水艦の場合は士官居住区に士官室と士官寝台が並びますので、故に寝食の場が職場の上官部下勤務の場であり服務指導の場であり休息の場なのです。
潜水艦に個室は艦長だけ、これはある種当然なのですが、しかし狭い潜水艦で士官用居住区が大部屋一つ、という点は、前型までが二つの固執に分けていまして大部屋集約では無かったのですから人間関係に影響を及ぼす事は無いでしょうか。海上自衛隊の潜水艦は行動期間が長く、それだけ狭い空間で人間関係が続くのです、この配慮はどう為されたのか。
科員居住区は魚雷室の下だ。科員居住区は艦首側の第一区画、士官居住区は第三区画です。その中間の第二区画には三階が発令所に二階が通信室と電算室、一階は電池室だ。士官と科員が分れているのは軍隊らしい、と思われるかもしれませんが、おやしお型では科員居住区は第一区画と第二区画にありましたので、区画数で半減、容積でみてもかなり手狭に。
ただ、大部屋が一概に悪いか、と指摘されますと水上戦闘艦ではそれ程大きな問題とはなっていません。むらさめ型護衛艦では科員居住区は12名部屋複数に区分けされていましたが、たかなみ型護衛艦からは30名大部屋に戻されています。すると、そうりゅう型の40名規模の大部屋も無茶苦茶な大部屋とは言い難いのかもしれません、ここからは価値観だ。
そうりゅう型は航続距離や静粛性において非常に優れた潜水艦です、しかし乗員は人間であり、通常動力潜水艦は例えば世界では大型に区分される212型が二週間程度の行動を念頭としているのに対し、日本はその倍以上が普通の航海です。自衛隊潜水艦の長い行動期間を考えるならば、もう少し人間工学的な配慮を考えなければ、ならないのでしょうね。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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世界情勢を無視して自衛隊叩きをしている人間を見ていると
日本国内の事にしか興味がないのかな?と
(政治を云々する人間が、それではマズイでしょう)
一部意見なら何でもありますからね。自衛隊は憲法違反とか、新型コロナは嘘だ、とかです