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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【京都幕間旅情】五社成就社,東福寺鎮守社は平安朝下建立法性寺と鎌倉期東福寺の結びの社殿

2019-06-19 20:19:21 | 写真
■五社成就社,東福寺三門の東方
 千年前の京都はどのような街並みであったのか、荘園か別の寺社か荒地か、知っていそうで知らない京都の街並みを考えてみました。

 五社成就宮、東福寺は京都五山第四位の歴史を誇りますが、建立は嘉禎年間の1236年という鎌倉時代の寺院です。平安遷都以来連綿と歴史を重ねる京都にあっては、時際的な視点から俯瞰すると東福寺の寺域は元々法性寺という巨大な寺院が日々祈りを重ねていた。

 三門、東福寺の正面に当る伽藍からふと陽の昇る東方に関心を向けますと、一つ鳥居と階段が通じる事に気付かされ、そう思いつつ東福寺は通天橋から本堂へ至る経路がJRも京阪も市バスも一般的であり、三門界隈は観光客が通過するだけと、様子の方に気付きました。

 法性寺とは元々平安朝に政治権力を独占した藤原氏の氏寺、その一つであり、故にその寺域は広大なものでしたが、今日ではJR奈良線の近くに新しい小ぶりな伽藍と共にその名を残すのみです。しかし、その遺構の跡地は現在、五社大明神という神社となっていまして。

 東福寺に寺域を譲った法性寺ですが、歴史は延長年間925年の建立であり現在の御世にも洛陽三十三所観音霊場第二十一番札所に位置付けられる。五社成就宮は法性寺の時代より鎮守社としてこの地に在り、東福寺が興隆を極める今日に在っても東福寺鎮守社へ移ろう。

 実のところ毎回悩まされるのは、災害や天変地異と共に寺社仏閣が被害を受けますと、その原状復帰が課題となります。しかし、現在のように確実に全ての寺社仏閣、特に国宝を有する寺院が現状維持を続ける点は、寺社さえも興隆を繰り返した時代とは違和感を、と。

 五社成就宮とは、寺域には意外なほどに長い石段を上りますと至る社殿は、その名の通り五社を奉じる神社であり、賀茂神社に石清水八幡宮と伏見稲荷に春日神社と日吉神社を勧請し、東福寺とともにこの五社を参拝する利益が叶う神社として位置付けられています。

 檜皮葺一間社流造の本殿建立年月は不詳ですが法性寺の時代に関白太政大臣である藤原忠平が建立した当時には、八坂神社に並ぶ社殿を有していたともいう。法性寺そのものは今日でも小さく残りますが、摂政藤原忠道の時代には総社祭という祭事を行っています。

 総社祭は現在も東福寺の行事として継承されていまして、歴史の連続性を感じます。神社ではありますが鐘楼があり、この鐘楼についても法性寺の遺構の継承というべきでしょうか。鐘楼は東福寺にもあり、鐘楼が重なる事からこの五社大明神鐘楼を東ノ鐘楼という。

 魔王石と比良山明神塔、この五社成就宮には前述の五社と共に鞍馬の天狗が降臨した神威も祀られています。これは東福寺に鞍馬天狗が降臨した訳ではなく、東福寺建立に尽力した九條道家が建立祈願へ法性寺に寄進したものが総鎮守五社成就宮に祀られているもの。

 東福寺拝観へ歩みを進める中には、少しだけ三門を石段へ向きを転じてみる事で、意外な歴史と出会えます。つまりは東福寺が建立以前の歴史というものを目の前で感じる事が出来るのですね。文化財には年月に価値を見出す前の信仰の寄る辺としての寺院の遺構です。

 しかし、前述の寺社仏閣が現状固定のように維持されている状況、思い起こせば寺社さえ興亡に曝される中での興隆を極めた当時には国家宗教として、神道と仏教を包括化した日本型の信仰と権力の関係があり、近代国家へ政教分離を遂げる過程で現状に収斂した、と。

 五社成就宮はじめ一つの文化財として国家は特権付与をしない分に古いものに価値を見出す事で、文化財としての保護を行う。これを怠れば世俗国家となり、内心の自由さえも国家が蚕食しかねない。故に何も変えず続ける事を国家と主権者が望んだ結果、といえます。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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