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【土曜詳報】アメリカ空軍嘉手納基地(6)一時代築く三発機派生KC-10給油機(2011.12.12)

2019-06-22 20:03:59 | 在日米軍
■三発旅客機DC-10転用KC-10
 KC-10,双発機では太平洋越えられず四発機では採算性が厳しい路線へ三発旅客機というものがありました、その一つがマクダネルダグラスDC-10,その派生型機の写真と共に。

 嘉手納基地を見ていますと、戦闘機部隊の基地というよりも戦闘機を含む航空優勢確保のための巨大な戦略拠点という印象を受けました。ある種当然ですが戦闘機だけの基地では単なる前線拠点です。前線拠点は攻撃に曝される懸念がありますが、戦略拠点は違う。

 空中給油輸送機が頻繁に発着訓練を行い、アメリカ空軍の基地施設ではあるのですが海兵隊航空機が訓練展開していると共に様々な輸送機が発着と待機している、これは整備能力の高さと環太平洋地域の軍事航空輸送と補給体系の重要な拠点である事を同時に示します。

 前線基地ではなく地域全般防空への兵站拠点がある、という事はアメリカ軍が沖縄を戦場として戦う事を考慮していないことが分かります。ただ、この表現を行いますと、ならば日本防衛には不要な施設なので返還を、という誤った認識を流布してしまいそうでして。

 日本防衛を考えるならば沖縄で一大航空作戦を行う、という認識は単に第二次沖縄戦までは何もしない、という理解ともなります。これは軍事は戦争が無ければ無駄だ、という視点に対し戦争が起きれば費用対効果で良かったといえるのか、という反論に向合う必要が。

 前線基地は、戦闘機の行動半径が航空優勢の競合地域に接している事を示し、これは同時に一時的な航空優勢喪失を前に全線航空基地そのものが巡航ミサイルや戦術爆撃機による散発的な航空攻撃の損耗に曝される事を意味します。だからこそ前線基地なのですからね。

 前線航空基地に関するもう一つの重要な要素は全線というものは浮動的である、という事です。前線は気象前線の語源となった要素ですが気象における前線が浮動ではないように、航空優勢と補給や作戦能力の多寡により、前線航空基地を構成する前線は動き得るもの。

 個人的な視点として日本本土が戦場になった事で在日米軍基地が役立つ、という認識は既に抑止力、戦争を起こさせないという認識から反しているように思います。日米共にこの地域での不安定化は許さない、との姿勢を誇示する事で戦争が防がれる、これがあるべき。

 嘉手納基地が兵站拠点である限り、例えば前線基地は北方であればアメリカにとり三沢基地が、西方では韓国の烏山基地が、考えられるのでしょう。具体的には南方にはかつてクラーク基地があったのですが、現在は火山噴火の際に撤退しており、米軍部隊は居ません。

 戦略拠点であり兵站拠点、つまり、第一線を支える為に、ここで第一線への航空部隊の支援、整備支援でも増援の受け入れでも、また損耗を受けた部隊の再編制から破損した航空機の修理まで、受け入れる、という視点です。太平洋戦争におけるアメリカの真珠湾、と。

 F-15C戦闘機、アメリカ空軍がこの嘉手納基地第18航空団へ前方展開させているのがF-16CではなくF-15Cという部分から、この視点が表れているようにも思えます。このF-16Cは戦闘行動半径の観点から第一線の戦闘機、対してF-15Cの戦闘行動半径は広い。

 F-15Cを環太平洋地域で探しますと、西太平洋地域では嘉手納基地だけだ。航空自衛隊がF-15Jを採用している為に勘違いしやすいのですが、戦闘行動半径が1900kmに達し、F-15Cは航空優勢の競合地域の更に後方から運用する性能を有している事が分かります。

 F-15CがあるからこそKC-135やKC-10という空中給油機の支援が必要となりますが、F-16Cと比較し、必要な滑走路の長さも大きく、また一度に投射するミサイルの数も多い、F-15Cはそうした航空機なのですね。もっとも航空掩体があり、航空攻撃は想定している。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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4 コメント

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Unknown (Unknown)
2019-06-22 21:31:41
イギリス海軍に正規空母が存在していれば、フォークランド紛争は発生しなかった。みたいな意見もありますね
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逆因果理論 (はるな)
2019-06-23 00:48:02
抑止力が均衡している場合に武力紛争は起きませんので、破綻して初めて意味がわかるのでは、目的と間逆なのですよね、そして基地があるから紛争が起こるのではなく、抑止力の均衡に軸を置いて物事を考えねば、所謂逆因果の論理に陥ってしまうのでしょうね
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Unknown (北京亭すぶた)
2019-06-23 14:33:41
ヤクザにせよ半グレにせよ、同様な組織間の勢力争いであれば相手の意向とか思考とか想定しやすいので、抑止の論理は働かせやすいでしょう。国家間の勢力争いなどはまさにその図式に当てはまると思われます。しかし、全く異質な敵対勢力に対して、果たして『抑止』は意味を持ちうるのか?例えば基地があることによって、『我々と似たような思考をもつ敵対国家』からの攻撃は防げたとしても、『国家じゃない』敵対勢力とか、『意向や思考が我々の想像外の国家』とかからの攻撃が防げる保証はあるのか?また抑止の効果は広い範囲で享受できるのに対し、攻撃されるリスクは基地設置地域が集中的に被ることになってしまうのではないか?という懸念はあります。そう考えると、例え戦略的には重要な施設であったとしても、自分の居住地域の近くに誘致したいと思えなくても、仕方ないのかもしれません。
多くの人々に益をもたらすけど特定地域に負担を強いる施設は、基地以外にも空港ダム道路鉄道など色々あります。成田空港も円卓会議とかで一定の歩みよりが見られてから、滑走路やターミナルの整備が急速に進みました。基地とか軍事施設だって、便益と負担の兼ね合いにはかわりないと思いますが。
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非国家主体と非対称の攻撃目標 (はるな)
2019-06-24 22:23:20
抑止力の概念は対称的脅威に対してであり非対称、つまり非国家主体に対しては絶対的では無いという私的は賛同出来るのですが、一方で軍事基地というよりも軍事基地を受け入れる事が非国家主体との対立を招き、その中で所謂ソフトターゲットとハードターゲットとを攻撃目標として選定する場合、果たして最も警戒厳重な目標を選ぶものなのか、と素朴な視点を。一方で軍事基地を受け入れる事で目標とされる視点については、要するに非国家主体は自らの意見に賛同する国、分かりやすく言えば一緒にテロを支援するか匿う国以外を目標とする為、結局は危険性は有無ではなく多寡でしかないのでは、と思います
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