北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

寝台特急Twilight Express(トワイライトエクスプレス) 京都駅撮影

2009-02-18 23:04:58 | コラム

◆最高の寝台特急、最後尾は展望スイート/電源車

 本日は、一月下旬並みに、急に多忙になったため、第二北大路機関(http://harunakurama.blog10.fc2.com/)京都駅カテゴリ用の写真を用いての記事を掲載。同じ際に撮影した京都駅の様々な電車は、後日2北にて掲載予定です。

Img_9069  京都駅に到着する豪華な寝台特急、トワイライトエクスプレス。日本最高の寝台特急は、全部A寝台二人用個室で構成されてるカシオペア、とはよく言われるが、近代的で機械的な味気ないカシオペアよりも、トワイライトエクスプレスの方が温かみがある、とは利用した方のお言葉。いわゆるB寝台もあるトワイライトエクスプレスは、敷居が高くなく、それでいて長距離特急の風格がある、とのこと。

Img_9062  トワイライトエクスプレスは、食堂車ダイナープレアデスと、サロンカーであるサロンデュノールを連結している。食堂車を連結した電車が、北斗星とカシオペア、そしてこのトワイライトエクスプレスだけであることを考えると貴重な一本である。この編成を青を基調としたものにして、九州と東京を結ぶブルートレイン富士、とすればまだまだ需要があるのではないかとは、先日記載した次第。

Img_9091  札幌行きトワイライトエクスプレスの最後尾は、一編成に一部屋しかない展望スイートとなっている。サービスは24系客車の最高峰、編成の最後尾をそのまま一つの個室にしたもので、シャワーやダブルベットなどなどを備え、寝台券は高価だが、入手困難な最も人気のある個室である。プライバシー保護のために、ご覧のとおり、マジックミラーとなっている。

Img_9018  トワイライトエクスプレス大阪行きの最後尾。こちらは、マジックミラーとなっていないが、それが電源車であるため。トワイライトエクスプレスの編成は3編成あり、電源車は故障に備え4両が確保されている。同じ寝台特急であっても、違うわけだが、わずかな間隔で上下の車両をみると違いがよくわかる。

Img_9000  わずかな間隔というのは、京都駅には、上下のトワイライトエクスプレスが20分ほどの間隔をおいて到着する。上下のトワイライトがすれ違うのは、山崎のカーブで撮影した時はほんの数分を置いて大阪方面から、そして京都方面から来たので、長岡京駅と山崎駅の間で上下が対面するようだ。

Img_9005  大阪と、札幌の距離はざっと1500km。正午に大阪駅を出た寝台特急は、京都から琵琶湖の湖畔を進み、日本海へ沈む夕日を眺めつつ一路北上、青函トンネルを通り、函館から苫小牧へ、そしてお昼前に札幌駅に到達する。札幌から大阪へは午後の昼食後に出発し、正午過ぎに大阪に到着する。

HARUNA

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183系特急電車 今に生きる阪神大震災からの復興と鉄道屋の気概

2009-02-17 20:32:01 | コラム

◆その183系は震災の翌年に鷹取で改造された

 先日、舞鶴基地を見学してのち、特急まいづる号を利用して京都市内に戻った。二条駅にて下車しようとしたところ、ちょっと目に入ったプレートがあった。

Img_8511  JR西日本鷹取工場というのはご存じだろうか、梅小路機関車博物館に行けば、蒸気機関車の整備を行っていた場所として、その名前は今でも知られているのだが、現在の山陽本線を建設した山陽鉄道時代から鉄道省管轄に移り、国鉄に、そしてJRへと引き継がれ、阪神大震災からの復興過程で廃止された車両工場のことである。太平洋戦争で米軍の爆撃により受けた壊滅的な被害からは復興出来たのだが、阪神大震災の痛手には耐えられなかったということか。

Img_8496  しかし、鷹取工場は、阪神大震災の痛手を受けつつも比較的早い時期に操業を再開している。実際に廃止されたのは、2000年の3月だ。さて、蒸気機関車の整備を行った工場として名高い鷹取工場であるが、車両の定期検査などや、車両の改修、例えば485系特急車の183系特急車への改造なども行っていた。

Img_8508  東舞鶴から西舞鶴、綾部、園部、亀岡を過ぎて間もなく二条駅、降車しようとしたその瞬間、目に飛び込んできたのが、このプレートである。気にしない人は気にしないだろうし、車両の客室とデッキを区切る扉付近の小さなプレートである、気づかずに通り過ぎる人の方が多いようにも思う。

Img_8509  プレートには、“クハ183-707 JR西日本 鷹取工場 旧車番号 クハ481-302 平成8年改造”と記されている。これには少し驚いた。平成8年といえば、1996年、つまり阪神大震災の翌年に、この電車は鷹取工場で183系特急に改造されたということになる。戦後最大の震災被害の中、いち早く再稼働した鷹取工場の車両なのだ。

Img_8515  二条駅を終点京都駅に向けて出発する、まいづる号。プレートを見たのち、鉄道屋の気概が伝わってくるような印象が残った。鷹取工場は2000年3月に廃止されている。跡地は神戸市の再開発が行われている。しかし、鷹取工場が生んだ183系は、今日も山陰へ、舞鶴へ、頑張っているのだなあ、としみじみ思った次第。

HARUNA

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東北新幹線E5新幹線に統合 新青森駅までの延伸を契機に

2009-02-16 20:40:37 | コラム

◆2016年までに統合

 東北新幹線について、新たに導入されるE5新幹線に将来的には統合される、という話を聞いたので、本日はこの話題を掲載。

Img_8478 現在、東北新幹線で運行されている列車はE1や200系などいくつかの車両が運行されているが、JR東日本では2010年12月に開業する東北新幹線新青森駅とその延伸とともにE5系新幹線の導入が開始される。このE5新幹線は、2016年までに59編成が生産され、写真のE-1新幹線などを置き換える構想という。

Img_0187  現在、上越新幹線に運行されているE4型新幹線と、E2型新幹線は上越新幹線に向けられることとなり、E5新幹線といえば東北新幹線で、それ以外の新幹線に乗れば別の方面に行くことができる、として明確化を行う構想。他方で、東北新幹線といえばMAXのダブルデッカー式新幹線車両が運行されている印象があるが、ダブルデッカー車は2016年に東北新幹線から姿を消す計画だ。

Img_8479  E1型新幹線に対して、E5新幹線は導入とともに300km/h運転を開始し、2013年には日本最速の320km/h営業運転を開始する構想とのこと。現在、鉄道方式の営業運転世界最高速度は、フランス国鉄がTGVの高速化を行ったことで320km/h運転を実施しており、これが世界最速であるが、東北新幹線はこの記録に追い付くことになる。

Img_0203  東海道新幹線の、こだま号、ひかり号、のぞみ号と山陽新幹線の、ひかりレールスター号という、区分に比べると、東北新幹線や長野新幹線、上越新幹線と秋田新幹線、山形新幹線の名称区分は、少し判りにくいという印象を持つのだが、これが多少は改善されるということになるのだろうか。

Img_8529  400系新幹線つばさ。この車両は、在来線規格の車両限界の区間を運行される、いわゆるミニ新幹線であるが、こちらは間もなく置き換えが始まり、一年ほどで姿を消す。また、秋田新幹線のE3系も2013年から置き換えが開始されることとなっており、東京駅に並ぶ新幹線の顔ぶれが転換期を迎えることは確かである。

Img_8508  他方、300km/h、将来的には320km/hの高速営業運転を開始するわけであるが、E5系と同等の性能が、連結される山形新幹線と秋田新幹線の車両には必要になるわけで、この場合連結しての加速性や制動距離の面、そして最高速度で運行できる区間や所要時間の短縮などの点に興味が湧く。

HARUNA

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中国海軍、空母を初の建造へ? 2015年までに中型空母2隻の整備目指す

2009-02-15 23:36:35 | 防衛・安全保障

◆今度こそ本当に空母建造に着手が実現か?

 中国海軍の将官や関係者ら複数からの情報として、中国海軍は今年中に初の国産空母の建造に着手するとのことである。今度こそ、中国海軍は空母を建造することになるのかもしれない。

Img_2191  軽巡洋艦を改造した世界最初の空母フューリアスが就役したのが1917年、世界最初の新造空母鳳翔が就役したのが1922年。日本も未成のものを含め正規空母17隻、改造空母12隻というかなりの数の空母を建造し第二次大戦に投入、戦後最初の(国際的な基準としては航空母艦のカテゴリに含まれるという意味での)軽空母にあたる、ひゅうが型ヘリコプター搭載護衛艦を間もなく就役させ、二番艦も建造中である。横須賀基地にも米空母ジョージ・ワシントンが前方展開しているのだが、中国海軍も2015年までに5~6万トン級の中型空母二隻の完成を目指しているとのこと。

Img_3396  5~6万トンというと、アメリカの空母の半分くらいの大きさだが、米海軍のワスプ級強襲揚陸艦よりもやや大きく、計画中のアメリカ級強襲揚陸艦よりも一割ほど大きい。近く旧ソ連の空母ワリャーグを修理し、練習空母として再就役させるとのこと。この航空母艦は、南海艦隊に配属される見通しで、海南島に専用の桟橋を建築中という。搭載機としてSu-33戦闘機約50機を購入するとのことで、この旨の情報は、昨年にも中国国防省の黄雪平報道官から発表されたことで注目を集めていた。この旨、世界の艦船通巻703号の海外艦艇ニュースに記載されていた。

Img_2026  米海軍などの空母建造をみていると、中国も建造するのか、という程度の印象ではある。しかし、考えてみると中国海軍の空母建造計画というのは、これまでに幾度も立ち上がり、そして消えている。すると、今度こそ建造できるものなのか、というのが当方の第一印象。朝日新聞の田岡俊次氏が出した「戦略の条件」にも、1993年5月に中国海軍は21世紀までに中型空母2隻を導入させるという発表を行っていた、として、加えてその導入計画を検証し、不可能であろうと田岡氏は記載している。実際、中型空母が建造されていないのはご承知の通り。ジェーン誌の日本特派員であった江畑謙介氏が著書「中国が空母を持つ日」に、中国が2050年までに空母機動部隊6個を保有したいという構想がある、との話を載せている、1994年に出版された本なので、随分長期展望を出したものだ、と驚いたが、今回こそ建造されるということだろうか。

Img_7669  意外かもしれないが、大型艦の数では日本の方が中国よりも多い。中国海軍は、北海艦隊・東海艦隊・南海艦隊に海軍を分けている。守備範囲としての海岸線の長さは、ほぼ、海上自衛隊の地方隊と同じくらい。近年は、大型水上戦闘艦の整備に力を入れているが、外洋での作戦を行う満載排水量4000トン以上の大型艦の数では、まだ実は海上自衛隊の方が多い。報道映像などで、中国海軍の艦船がロケット弾を一斉射撃する勇ましい映像が流れるが、考えてみれば一発必中の装備が無いからこそ数を撃っている訳で近代化へ過渡期の装備体系である。

Img_1011_1  日本本土への防衛を考えると、中国海軍の航空母艦というのは、脅威度は少ない。艦首にスキージャンプ台方式の跳躍台が設けられており、ここから加速をつけた艦載機が飛び出す方式を採用している空母で、いわゆる米海軍のような蒸気カタパルトを装備したものではない。蒸気カタパルトは、理論的には簡単なのだが、数十トンの航空機を瞬間に離陸可能な速度に加速させ、持続して航空機を射出する性能のものとなると、旧ソ連も正規空母を精力的に建造しているフランスも実用化には至らなかった。旧ソ連の空母は跳躍台方式で、フランス海軍は蒸気カタパルトを米国から輸入している。跳躍台方式は、設計は難しくないものの、航空機発進には不適なようで、この方式の空母となると、発艦に時間を要するので、脅威というよりは、政治的シンボルとしての意味合いの方が大きい。

Img_1361   Su-33であれば、F-2支援戦闘機と同じように対艦ミサイル四発を搭載することが可能である。ただし、Kh-31の場合、日本の護衛隊群を相手に使用した場合、イージス艦のSM-2艦対空ミサイル、場合によっては護衛艦に搭載される発展型シースパローESSMの射程内で発射する。しかも、データリンクで結ばれ、各艦にFCS-2など高度な射撃管制装置が搭載されている状況を背景とすれば、艦載機を24機、稼働率50%として12機による一波程度の攻撃(アルファストライク)には対応できるだろう。純軍事的には過大評価をすることは禁物だ。他方で、例えばインド洋や南太平洋、東アフリカ沖における中国海軍空母の政治的な運用は、影響が生じる。今後、日本が必要とするならば、これら地域に対する戦力投射を行うための検討も、頭の片隅に置いておく必要はあるかもしれない、もっとも、本当に建造出来て戦力化された場合の話ではあるが。

HARUNA

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日米同盟を考える: 航空自衛隊 次期主力戦闘機(F-X)候補 ③

2009-02-14 14:36:22 | 防衛・安全保障

◆F-22戦闘機とはどのような戦闘機か

 米国製F-22戦闘機。航空自衛隊の次期主力戦闘機候補として最有力でありながらも高い機密性ゆえ、輸出が許可されない機体である。しかし、F-22がどのような機体であるか、という点で理解されていない点や誤解されている点がある。本日はF-22がどのような戦闘機が簡単に触れてみたい。

Img_1943  アメリカではロッキードマーティン社の雇用維持の観点から、一旦は生産の終了が見込まれたF-22戦闘機の継続生産を行うとの見通しを発表した。また、同様の理由からボーイング社にはC-17輸送機の継続生産のための発注が行われている。特にF-22の生産延長を契機として、防衛省では、F-22の航空自衛隊次期戦闘機への導入を期した働きかけが行われているとのことだ。F-22は卓越したステルス性と超音速巡航能力、そして空中における高い機動性能を発揮し、現在、進空した戦闘機の中では最高性能を誇る、とされている。

Img_1927  F-22と一口に言うが、F-22は、量産された機体で、ブロック20、ブロック30、ブロック40、ブロック50とに現段階ではわかれている。現在すでに配備されているのがブロック20で、2008年から敵防空網制圧任務(SEAD)能力を付与し、側方監視レーダーを搭載、衛星通信機能を付与させたブロック30が導入されている。ブロック20もブロック30への能力向上が行われるが、これにはF-16一機分程、航空自衛隊のF-15近代化改修費用二機分程度の改修費用がかかるとのこと。2011年以降には、ブロック40の生産が開始される計画である。

Img_1932  ステルス機としてのF-22は、第一世代のF-117,攻撃機、第二世代のB-2爆撃機に続く第三世代のステルス機として位置付けられ、特にレーダー反射面が最大となる機首前方からのエンジン空気取入口の形状が重視されており、機首前方から飛び込んだレーダー波がエンジンブレードにて反射することが無いよう、ダクトの形状をS字型としている。搭載するレーダーはAN/APG-77といい、100~150マイル以内の目標を追尾・識別が可能であり、将来的には250マイル先までを捜索範囲とする計画だ。他方、これはレーダー波を出している以上、逆に探知される可能性があることを意味している。また、機体の形状から正面や側面に比して後方からはステルス性が制限されている可能性があるともいわれる。

Img_1936  AN/APG-77レーダーは、対ステルス機用にも対応の指向型捜索と従来型の航空優勢確保を目指す広空間捜索などの切り替えが可能となっている。指向型捜索の場合、捜索範囲が狭まる為に文字通り視野狭窄に陥る可能性が出てくるが、編隊間情報共有により編隊全体で捜索することで対応、F-22以外とも情報を共有できるため、早期警戒管制機の捜索を補完することも可能となる。このレーダーは従来の捜索と追尾のみならず、電子戦能力と電子情報収集能力を備えているため、F-22に対して電子攻撃が行われると即座に電子情報を収集し解析し、対抗手段をデータリンクにより共有する能力が備えられている。機体の電子戦システムはBAEシステムズ社製のものが搭載、レーダー受信警報装置とミサイル発射感知装備を複合化したデジタル式の装備である。

Img_1941  機内には、AMRAAMを最大六発、短距離AAMを二発搭載可能となっており、AMRAAMの最新型AIM-120Dの射程は180kmに達するとされる。また、短射程ミサイルであるAIM-9も最新型のAIM-9Xでは30km以上の射程を誇り、ステルス性を犠牲にし機外にミサイルを搭載した場合の搭載量はさらに増加する。GPS誘導爆弾や対レーダーミサイルなどの運用も可能となっており、固定装備として20㍉多銃身機銃M-61A2と機関砲弾480発を搭載している。また、すべての武装を使用した後でもステルス性とデータリンク能力を活かし、戦域に滞空、任務遂行を継続することが可能だ。

Img_1948  搭載されているエンジンは、プラット&ホイットニー社製F119-PW-100エンジン。このエンジンは、アフターバーナーでの運用が一分以内という非常に厳しい制約がある為、マッハ1.8の最高速力での飛行に制限が加わるものの、アフターバーナーを使用しなくとも超音速飛行を行うことがF119-PW-100エンジンには可能である。これがF-22の利点として提示される超音速巡航能力で、超音速巡航の状態は30分程度維持できるとのことである。ただし、超音速巡航を行う場合は燃料消費も増大するため、F-22は通常、亜音速で運用される。それでも、超音速にて移動できる距離はF-22の場合、700kmとF-15Cの1.8倍に達するという。ちなみにF-22は、フェリー航続距離の場合3200kmを移動することが可能だ。一般に、離陸したらどこまでも超音速巡航が可能だといわれる方もいるようだが、それは誤解である。

Img_2127  問題点はコストで、F-22の調達コストはF-15の三倍程度の費用を要するとのことである。加えて、整備性が第二世代や第一世代のステルス機よりも向上しているとはいえ、米軍の実績は2007年の時点で65%とのことだ。予備部品の供給などによっても向上には至らず、一個飛行隊の定数もF-15よりは縮小しているため、稼働作戦機の数に影響している。したがって、一定数の作戦機を稼働状態に置くためには、その分多数の機体を配備する必要が生じるのだが、これがコスト的に難しく、付け加えれば前述のようにブロック20からブロック30への近代化改修にも多くのコストを必要とする。

 総合的には極めて優れた航空機である。これだけのステルス性を付与させた機体を高い機動性とともに完成させ、レーダーの機能なども特筆できる航空機といえるが、自衛隊の対領空侵犯措置任務にあたる次期戦闘機候補とした場合、コスト面や稼働率では、慎重な事業評価を要する機体ともいえるのではないか。

HARUNA

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C-17輸送機 15機29億ドルの発注で生産終了は回避

2009-02-13 20:31:09 | 先端軍事テクノロジー

◆生産継続

 C-17輸送機について、生産終了か、継続かという話題が出ていたが、動きがあったので掲載したい。

C17_img_9470  アメリカ国防総省は、空軍用の戦域間輸送機としてC-17輸送機15機を29億ドルで発注したとのこと。ただし、いかなる場合も29億5000万ドル以上の支出とならない前提で行われる。1機あたり2億ドルを切るというのは一種驚きであるが、同時にC-17輸送機は生産終了か継続の瀬戸際にあったため、今回の発注によりC-17輸送機の生産ラインは維持されることとなる。

C17_img_9471  C-17輸送機は、大陸間の輸送にも用いられる戦略輸送機と、戦略輸送機により蓄積された物資を第一線に届けることができる戦術輸送機の中間を担う輸送機で、戦域間の輸送、つまり米本土から最前線までを直接輸送できる便利な機体であるが、コスト的に弱点があり、充分な数がそろわないまま生産終了か継続かが議論されていた。

C17_img_9977  F-22戦闘機も、F-15の後継機としての十分な数が確保されないままコスト的な理由から生産終了が危惧されていたが、雇用確保の観点から生産を継続しよう、という案と、その分に予算を回されることで縮小するであろうF-35との均衡をとろうとする試みが続けられている。生産を終了すると、再生産には大きな費用がかかり、生産設備の維持を行うにも大きなコストを要する。

C17_img_9460_1  他方で、今回の生産継続により、防衛省にはF-22の次期戦闘機としての採用の可能性が継続される、という見方があるようだが、同時に難航する次期輸送機C-Xの代案にC-17輸送機が提案される可能性も生じてくる。ちなみに、初度調達品や整備器具、施設などを含めると、C-17は上記の費用で導入できるわけではないということは一応記載。

HARUNA

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オーストラリア南部ビクトリア州での山林火災に自衛隊の大型ヘリを派遣できないか

2009-02-12 15:22:15 | 国際・政治

◆豪州山火事災害へCH-47を派遣する提案

 オーストラリア(以下豪州)南部のビクトリア州で一月に発生した山林火災は、既に東京都の二倍にあたる面積を焼き尽くし、200名近い犠牲者が確認されているとのこと。すでに日本の外務省渡航情報でも情報が記載されている。

Img_7599  豪州の山火事対処に自衛隊の大型ヘリを派遣してはどうか、というのが本日のお話。豪州は、長期間特に南部や中部地域での干ばつが続き、長期間続けられた植林による環境変化などにより干ばつが終息に向かう見通しが無い。こうした中で枯死し乾燥した植物に火が付き、火勢は急速に拡散している。豪州には、防災無線などのシステムが整備されていないため避難などは個々人の判断に一任され、避難の遅れにつながったという指摘もあるようだ。火災は、メルボルン郊外のキングレイクなど十か所で発生し2月7日までに死者14名、家屋100棟以上を焼き尽くすという大規模なものとなっていたが、その後、更に拡大しており、シドニーにも煙が達しているとのこと。

Img_8260 現在、消火活動には3000名以上の消防士に加え、豪州軍も出動しているとのことだが火勢は沈静化には向かっていない。ここで思うのは、陸上自衛隊や航空自衛隊の運用するCH-47Jなどの大型ヘリコプターを消火支援に派遣できないか、ということ。折からの熱波により、ビクトリア州の最高気温は47度に達しており、これにより乾燥した地域で新たな火勢が生じるという状況になっている。

Img_8699   豪州軍は、周辺に仮想敵国がいないというその地政学上の特性から、陸海空軍の合計人員で53000名と、陸上自衛隊の三分の一強という程度の人員しかおらず、今のところ、国内での災害派遣などの対応の必要性が生じていないという背景のもとで、自衛隊のヘリコプターを豪州へ派遣する意義はあるかもしれない。

Img_6939  また、豪州に大型ヘリコプターを派遣するということは、捕鯨問題や反捕鯨団体による海上での破壊活動への対応などで温度差の生じた、両国間の政治的良好関係の継続にも大きな意義があり、加えて、陸上自衛隊に50機程度、航空自衛隊に15機程度の大型ヘリコプターが配備されている日本には、一応、その余力はある。災害派遣というかたちで、国際緊急人道支援隊としてCH-47を派遣するという方式は、様々な視点から意義があるように思う次第だ。

HARUNA

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ソマリア沖海賊対策事案 護衛艦さみだれ・さざなみ派遣へ

2009-02-11 20:17:16 | 防衛・安全保障

◆訓練と実任務の両立が課題

 ソマリア沖の海賊に関して、海上自衛隊の海上警備行動や特別措置法の立法を以ての派遣であるが、一つ動きがあったようなので掲載。

Img_0816  海上自衛隊は、呉基地の第4護衛隊群第8護衛隊より、護衛艦さみだれ(DD106)、護衛艦さざなみ(DD113)、をソマリア沖に派遣する。それぞれ、満載排水量は6200㌧、6300㌧と各国のフリゲイトと比較して大型である。二隻の護衛艦では、海賊対策の訓練を実施、実際の派遣では護衛艦による哨戒や護衛を実施、加えて海上保安官の同乗による海賊取締を実施する予定だ。

Img_0983  二隻の母港は呉基地で、臨検などを行う特殊警備隊の派遣も行われるようだ。第8護衛隊は、イージス艦きりしま、護衛艦いなづま、とともに二隻の護衛艦を加え四隻で一個護衛隊を編成しており、イージス艦ともう一隻の護衛艦は今回派遣されない。写真は、さざなみ、の写真が無かったので、おおなみ、で代用。

Img_1255  また、二隻の護衛艦にはSH-60J/K哨戒ヘリコプターが搭載されている。哨戒ヘリコプターは、北朝鮮工作船侵入事案に伴い、順次機関銃や防弾板の設置などの改修が行われており、捜索レーダーとともに高度な紹介能力を発揮できよう。また、K型であれば、対艦ミサイルの搭載も可能である。

Img_2613  はるな型や、しらね型のような、5インチ砲を背負い式に装備した威圧的な護衛艦を派遣した方が、ソマリア沖の海賊は、米軍のイージス艦であっても見境なしにロケット弾で攻撃してくるので、これは強そうだ!という印象を与えることで、凄みを利かせられるのでは、と考える次第。もっとも、従来型のヘリコプター搭載護衛艦はこれから減ってゆくのだが。

Img_1279  他方、忘れてはならないのは、本ブログでも繰り返し指摘され、当方も幾度か掲載している内容であるが、インド洋対テロ海上阻止行動給油支援のための艦艇派遣である。過去には、この程度の任務と両立できない訳が無い、というコメントもいただいたことがあるが、補給艦と護衛の護衛艦を稼働艦の中から訓練体系の隙間を見つけて派遣することは、容易ではない。交代の艦艇を含めると問題はかなり大きいのだ。

Img_0229 インド洋への艦艇派遣と今回の海賊取締任務、ともにいわゆる出口戦略が確立しておらず、しかも多数の後退にあたる艦艇とを確保しなくてはならないことを考えると、自衛艦隊隷下に南洋艦隊か、インド洋艦隊、名称が刺激的であるならば外洋艦隊というようなものを編成して、必要な部隊と訓練体系の両立を図るべきではないか、と考える。

Img_0217  海上自衛隊は、このほかにも弾道ミサイル防衛や、工作船の侵入に備えた哨戒、そして南西諸島の島嶼部防衛などにおける護衛艦や哨戒機などを充当しなければならない。こうなると、実任務にあたる部隊と訓練に専任する部隊のローテーションを考えた編成への改編も射程に収め、議論を行う必要性があるのかな、と考える次第。

HARUNA

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みねゆき 旧地方隊用護衛艦に再びヘリコプターを搭載

2009-02-10 19:41:45 | 海上自衛隊 催事

◆旧舞鶴地方隊所属の護衛艦

 舞鶴基地を撮影し、ヘリコプター護衛艦はるな、の姿を写真に記録したが本日はもうひとつ珍しい写真を掲載したい。

Img_8465  舞鶴基地の沖に停泊する海上自衛隊の護衛艦みねゆき。12隻が量産された、はつゆき型護衛艦の三番艦として1984年に就役、護衛艦隊用の汎用護衛艦として活躍したのち、舞鶴地方隊第24護衛隊に編入されたが、昨年度末の護衛艦隊改編により、第14護衛隊として護衛艦隊に編入され、今日に至る。

Img_8152  みねゆき、は最後まで護衛艦隊に配属され、最後に地方隊に配属されたのだが、地方隊への移管とともに、哨戒ヘリコプターの運用に関わる装備を一時取り外していた。ガスタービン推進を採用し、国産のFCSとともに対空対潜対水上の各種誘導弾を搭載、ヘリコプターの運用能力を満載排水量4000㌧に収めたのが、本型の特色である。

Img_8153  地方隊に移管するとともに、航空機運用能力を省き、着艦や整備関係の設備を一時取り外していたのだが、護衛艦隊に復帰して以降、ヘリコプターを搭載するようになった。そのヘリコプターんぼ搭載が行われている様子を写したのが本日の写真である。これにより、対潜戦闘や哨戒任務で大きく能力が向上することになる。

Img_7736  他方で、ヘリコプターを搭載するということは航空機の整備要員などを乗せる必要があり、同じ型式の護衛艦であっても護衛艦隊での運用時よりも少ない人員で護衛艦を運用する地方隊[実際、パンフレットを見ると定員の数字が異なる]には難しく、ヘリコプターを有さない地方隊もある中では難しかったのだが、改編により、このように搭載することが可能となったようだ。

HARUNA

[本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる]

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DDH141 はるな 海上自衛隊最古参の護衛艦は舞鶴に健在!

2009-02-09 18:04:08 | 海上自衛隊 催事

◆舞鶴の象徴

 佐世保基地から舞鶴基地に移り、日本海防衛の重鎮として活躍した護衛艦はるな、2月8日撮影の近況を本日は掲載したい。

Img_7720  海上自衛隊最古参の護衛艦はるな。海上自衛隊にヘリコプター搭載護衛艦という新しいシーレーン防衛の方法を定着させ、今日の海上自衛隊艦隊航空の基礎を築いた護衛艦である。そして、1973年の就役時から2009年まで36年の長きにわたって護衛艦種別として第一線にあり、これは水上戦闘艦としては、特務艦や海防艦などに種別変更された艦船を除けば、旧海軍から海上自衛隊に至るまで俯瞰しても最長といえる。

Img_8185  はるな、第二次大戦の敗戦を大破した状態ではあったが生き延びた旧海軍の戦艦榛名より受け継いだ名である。機動部隊とともに常に第一線にいた名前を受け継いでいる。3機のヘリコプターを搭載できる護衛艦はるな、は海上自衛隊の貴重な戦力投射集団として今日までそのポテンシャルを維持することができたといえる。

Img_8175 はるな艦尾に掲げられた自衛艦旗。自衛艦旗が掲げられている限り、本艦は現役の護衛艦である。とはいいつつも、冒頭の写真からもご覧のとおり、乾舷がかなり高くなっており、燃料は既に多くが取り出されているようで、海上自衛隊の護衛艦としていよいよ最期の時を迎えようとしていることも確かである。

Img_8080  ヘリコプター護衛艦はるな、その象徴の一つが後部のヘリコプター格納庫と飛行甲板と共に、前甲板に搭載された背負い式の二門の5インチ砲である。対空対地対水上に万能の5インチ砲ではあるが、見てみると除籍後に砲身を取り外すための作業用の足場が組まれているのがみえる。

Img_8143  はるな、が護衛艦として必要な搭載された様々な装備があるのだが、これも取り外すための足場が組まれているのがみえる。第3護衛隊群旗艦として活躍した護衛艦であるのだけれども、ううむ、と考えさせられる一こまだ。艦首から艦尾にかけて満艦飾の準備が為されていたのが印象的であった。

Img_8191  マックとともに掲げられているのが、第3護衛隊の司令旗がみえる。ここには本来、群司令旗が掲げられているのだが、現在は3護隊司令旗。しかし言いかえれば、はるな、はこの時点でも護衛隊の旗艦であるということを象徴的に示している一枚。ちなみに、機関は動いていたようで、白煙が昇っていた。

Img_7709  第3護衛隊群旗艦として、群司令旗をマストに掲げていたのは、はるな、の向かい側に停泊していた護衛艦あたご、である。はるな、と同じく第3護衛隊に所属するミサイル護衛艦で、海上自衛隊で最も新しいイージス艦である、あたご型のネームシップだ。はるな、の1.5倍もの満載排水量を誇る一隻だ。

Img_7842  舞鶴の美しい青空を背景に見上げる巨大な艦橋。あたご、は満載排水量10000㌧、海上自衛隊の護衛艦としては、現在最大の護衛艦であり、ひゅうが型ヘリコプター護衛艦の一番艦ひゅうが、が三月に就役するまでは、二番艦あしがら、とともに海上自衛隊最大の護衛艦である。

Img_7883  あたご、はイージス艦としての高い戦闘能力とともに、設計が新しいこともあり旗艦としての機能も充実している一隻である。昨年の千葉県沖での漁船との衝突事故は残念な出来事ではあったが、その後、衝突回避の技術を研磨し、その技量を以て、領海侵犯した国籍不明潜水艦の潜望鏡を発見したことは有名だ。

Img_8104  あたご、の全容。舞鶴基地の第3護衛隊群には、テポドンミサイルの飛来を探知したり、海上自衛隊発の海上警備行動命令を受け日本海に北朝鮮の工作船を追尾したことで知られる、みょうこう、が配備されている。艦橋の周りの様子などは、あたご、と、みょうこう、やや違っているのだが、全体でみるとよりスマートな印象を与える。

Img_8244_2  ヘリコプター護衛艦はるな。出来ることならば、雪景色の舞鶴基地と、はるな、という情景を望んでいたのであるが、この舞鶴基地一般公開の日は、清涼な朝風が吹き、叢雲がゆっくりと動いていた。遠く山の頂には峯雪が残り、桟橋には漣が打ちつける。かつて、この護衛艦とともに防衛の重責にあたった護衛艦の由来、この列島を包む大自然とともに、最後の日を待っていたのが印象的だ。

HARUNA

[本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる]

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