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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

日米同盟を考える: 航空自衛隊 次期主力戦闘機(F-X)候補 ④

2009-02-20 19:03:37 | 防衛・安全保障

◆ボーイング案:F-15FXとF/A-18E

 F-22の輸出が難しいということを受け、急浮上してきたのが、ボーイング社が製造し米空軍や米海軍に供給している機体だ。F-15Eは米空軍の戦闘爆撃機として、F/A-18Eは米海軍空母艦載機の代名詞的存在として活躍している。

Fximg_1916  F-15Eの日本輸出モデルとしてのF-15FXは、基本的にF-15Eを近代化した機体である。F-22を装備する米空軍でも、すべての機体をF-22に統合することは難しく、多くの兵装を搭載することができる在来型の戦闘機が有するポテンシャルは依然として無視できないものがある。例えば、F-22は、F-15Eの編隊を支援し、絶対航空優勢を確保し、このもとでF-15Eが必要な戦力投射任務を遂行する、という構想があるようだ。もともと、F-15Eも高い空戦能力を有しており、訓練では有視界戦闘に限ればF-22に対抗できたベテランもいるとのことだ。

Fximg_1826  F-15Eは機体寿命を長くするためにF-15Cと比べて60%ほど補強されているとのこと。また、レーダーも新型のAPG-70が搭載されており、航空自衛隊向けの機体にはAESA(電子走査アレイレーダー)方式のAPG-63V3の搭載も想定されているといわれる。AESA方式のレーダーが採用されれば、航空自衛隊の現有F-15Jの段階近代化改修計画にも搭載するという計画が現実味を帯びてくるかもしれない。特色が、エンジンで、米空軍の装備するプラント&ホイットニーF100-229か、航空自衛隊のF-2が装備するGEのF110-129,もしくはF-16の最新型が装備しているGEのF110-132を選択できるとのことだ。仮にF110-129を採用すれば、F-2との相互互換性が生まれる。

Fximg_1909  F-15Eの航続距離は、フェリー時で5900kmと長く、空中給油を受けることで延伸する。機体に密着するコンフォーマル方式燃料タンクを装着することができ、この燃料タンクにも武装を搭載することができるため、最大で19箇所のハードポイントを有し、対艦ミサイルや精密誘導爆弾の搭載も可能である。この搭載量は11トンを上回り、航空自衛隊のF-2支援戦闘機よりもかなり多くの装備を搭載することが可能だ。F-15Eは、機体重量がF-15Cよりも大きくなった分、エンジン出力を強化することで相殺しており、これは最先端の技術を積んで大型化した機体を強力なエンジンで最強レベルの格闘性能を付与させたF-15Aの設計思想を受け継ぐものである。

Fximg_1785  F/A-18Eは、今年で部隊配備から十周年を迎えた機体だ。データリンクなどの面でE-2Cとの相互互換性がいいかもしれない。他方で、E-2Cが航空自衛隊に導入された際にデータリンクで苦労したように、海軍機であるF/A-18Eにも不安は残る。

 そもそもF/A-18Eは、F/A-18が導入された際の、F-14よりも空戦能力に劣り、A-7よりも兵装搭載量が少ない、という問題点を改善した機体で、更に空気取入口などレーダー反射面積の顕著な部分を再設計し、ステルス性を付与させたのが特色だ。

Fximg_1910  F/A-18Eの兵装搭載量は、航空自衛隊のF-2の武装搭載量とほぼ同じである。空対空ミサイルに加えて、精密誘導爆弾や対艦ミサイルも搭載可能だ。主翼面積がF/A-18Cよりも25%増大、搭載燃料量が増加などを行い、その分強力なエンジンを搭載する、F-16CとF-2の関係を思い出させる機体だ。従って、機体も再設計されており、F/A-18Cと形状は非常に似ているものの、F-16とF-2がまったく別の機体であるように、F/A-18CとF/A-18Eもまったく別の機体である。

Fximg_1790  レーダーは、ブロック2生産分からAESAレーダーであるAPG-79が搭載されている。搭載エンジンはF414-GE-400で、双発機だ。このF414エンジンシリーズは、より高出力なモデルを開発するとの計画があり、一応将来への近代化改修で高性能化を目指す余地はあるようだ。

 他方で、機体を大型化させたため抵抗が増大し、飛行性能面では不利な点があるともいわれる。フェリー航続距離では4000km程度、前述のF-15Eよりも下である。

Fximg_1823  ボーイングの次期戦闘機候補は、ロッキードのF-35計画の進展による米軍航空機体系との関係を無視するべきではない。F-15EをもとにしたF-15FXであるが、これは現在国際共同開発が進められているF-35の進展により米空軍における将来が決まってくる。また、F/A-18Eにしても同様だ。即ち、この強力な戦闘爆撃機は、F-35が導入するまでの期間の繋ぎであるのか、ということだ。F-35は、4.99㌧、ステルス性を犠牲にして機外搭載を行えば最大7.7㌧の兵装を搭載することが可能である。ボーイングの生産している機体がF-35の導入により、急速に陳腐化するのであれば、近代化改修などの優先度が低下してくる可能性がある。

Fximg_1822  F-15Eは、輸出用の生産は続けられているが米空軍への納入は完了しており、これから日本が導入した場合、F-15FXは2040年代、場合によっては2050年代まで運用されることとなろう。他方で、米空軍の運用するF-15Eが退役したのちは、近代化改修を日本ですべてプログラム推進する必要がある。これは、F-4EJがF-4Eの米空軍運用終了後の状況と似ている。この際、搭載レーダーや戦闘情報システムを含め、どこまで情報が開示されるのか、そしてどのレベルまでライセンス生産が認められるか、ということが重要になってくる。他方で、航空自衛隊が導入すれば、F-4EJ改の後継とともに、F-15Jの近代化改修に対応していない初期の機体の後継機ともなり得る。すると、2050年代まで運用が続くので、毎年夏の横田基地日米フレンドシップデイでは、まだ航空自衛隊はF-15を運用しているのか!?と、米空軍のパイロットが懐かしんで集まってくるのだけは確かである。たぶん、岩国でも嘉手納でも人気だろう。

Fximg_1787  F/A-18Eは、先に述べたが、相互互換性で不安が残る。また、航続距離の点で問題があり、付け加えれば空戦機動の点でも、よい話は聞かない。もっとも、比較対象が、ハリアー以外に対抗できないとされたF-14からの機種転換組が以前の機体と比べているため、という話もあるので、なんともいえない、とは付け加えておく。ただし、米海軍で導入が続く機体であるから、前述のF-15E退役後のF-15FXのような問題は生じてこない。半ば冗談、半ば本気で書くと、F/A-18Eは、航空自衛隊で運用するとともに、海上自衛隊での運用を黙示的に将来展望に含めるのならば、有用な機体ともいえる。

Fximg_1921  少なくとも、ボーイング案のF/A-18EとF-15FXについては、即戦力となる装備である。しかしながら、F-15FXについては基本設計が古いこともあり、ベテランか新卒を採るのか、という点。F/A-18EについてはF-35と兵装搭載量が重なることから、F-35の装備化後の去就が注目される。また、航空自衛隊の次期戦闘機には間に合わないことだけは確かなのだが、F-35がいつになったら初度作戦能力を付与されるのか、ということも、本論とは直接関係ないのだが気になる点でもある。もうひとつ重要な点は、この二機種は三菱重工でのライセンス生産が認められる可能性が高いことで、日本の将来にわたる航空機生産能力の基盤を維持するためには、理想的な提案であり、稼働率を高めるための予備部品供給などにも期待がもたれる機種だ。付け加えれば、F-22よりもコスト的には優れた機体であることも確かである。もうひとつは、米軍との相互互換性も、忘れてはならない二機種のポテンシャルだ。

HARUNA

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コメント (6)
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