■グローバルな視点が重要
今回掲載する内容は先月末に紹介予定のものを諸般の事情で本日ご紹介することとなったものです。
今月内閣改造前、沖縄県の東シナ海ガス田開発をめぐって中国側が新たに移動式の掘削船を停船させて、何らかの作業を行っていることを確認したとして抗議する姿勢を明確としました。この海域では2008年に日中政府が一方的開発を行わない合意を行いましたが、中国側は現段階、沖縄と中国の日中排他的経済水域境界線中国側に限定し開発を進めている。
外務省は、極めて遺憾であり外交ルートを通じて直ちに抗議を行った、としています。朝鮮半島の緊張と共に忘れられがちですが、我が国安全保障上の脅威は二方面作戦を同時並行で求められています。朝鮮半島の核開発問題では中国の外交協力が不可欠ですが、その協力と並行し、我が国領域と資源への不当な圧力が加えられる事があってはなりません。
しかし、我が国は平和憲法に依拠した専守防衛を国是とする防衛政策を採っており、中国の軍事圧力を南西諸島へ掛かるものに対して特に注視し、続いて我が国シーレーンが通る南シナ海での中国の動向に注視されがちですが、中国が現在世界で生じている幾つかの軍事的空白地域へ地域安定を目的とした進出を強化しており、グローバルな視点が重要で、視野を広げる必要があります。
中国海洋進出ですが、中国がかねてより進めていた中東ジブチでの海外拠点建設が警備は初の恒久的な軍基地という位置づけでしたが、確認されているだけで三重態勢警備の要塞化とも呼べる状態まで拡張、基地は広さ約2万3000平方メートルの地下空間も備え、当初予想よりはるかに規模の大きな施設建設を行っていたとして、各国の注目を集めています。また、アフリカ地域では自衛隊が撤収した南スーダンPKOへ中国軍は地域安定化部隊活動開始とともに機械化部隊装備を増強しました。
ジブチは長く、フランスの保護領でしたが、フランス軍が長く駐留していた第13准旅団を移転した後に、中国が入ったという構図でした。ジブチにはフランス軍の舞台や米軍基地があるほか、自衛隊も海賊対処任務へ航空部隊を展開させています。しかしこの新しい中国軍基地の規模はかなり大規模なものとなりそうです。一旦施設を建設する事をジブチ政府が了承しているものの、中国の中東地域における米軍を牽制できる規模の基地の建設を想定していたかは未知数です。
一方、中東地域全般を見ますとイエメン内戦を巡るサウジアラビアとイランの対立が激しさを増しており、これに関連し、イランとの天然ガス田開発を行うカタールが中東諸国から一斉に外交関係の遮断を突き付けられ、地域安定化への大国の関与が重要度を増しています。中東ではアメリカがオバマ政権時代に撤退に転じ、トランプ政権も踏襲している。
中東は安定化への関与を必要としています。先々月26日、スカッドミサイルがイエメンからサウジアラビアへ発射されました、930kmを飛翔しサウジ紅海沿岸のヤンブー石油関連施設へ命中したとの事で、火災が発生、当局は当初事故による火災と発表していましたがイランがイエメンへ供与した弾道ミサイルスカッドが使用されたものと考えられています、大量破壊兵器拡散防止措置が徹底されていない故の問題が一つ表面化したものと云えましょう。
冷戦時代は勿論、ポスト冷戦期の従来のアメリカであれば、ブッシュ政権であれ、クリントン政権であれ、中東での不安定要素はアメリカを中心にその波及を阻止する努力が行われてきました。これは世界の最重要石油産出地域である中東地域の安定を主導する事で間接的に世界の経済的安定等、地域安定の地球規模の波及を回避する視点からの施策でした。
しかし、オバマ政権時代に政権公約に長期化したイラクからの撤収とアフガニスタン派遣の完了を掲げ、更に1991年の湾岸戦争後に実施された中東地域での米軍駐留を併せて縮小した為、中東に軍事空白が生じました。米軍駐留縮小は米軍基地施設へ依存したNATO加盟国の駐留をも縮小させました。地域の不安定要素が無くなったためにという平和故の縮小ではなく内政上必要になったからという政治的な要素に基づく撤収は不安定化要素です。
トランプ政権誕生は、オバマ政権の実績と施策へのアメリカ世論の反発を支持として大統領選に勝利した背景から一見、偉大なアメリカの復活を周辺地域への軍事的安定の付与という施策への転換を期待させるものでしたが、大統領選での施策は戦前の孤立主義への回帰を示唆するものであり、大統領就任後多少方向性は修正されつつも、例えばアメリカの環太平洋地域での影響度を高めるTPPやNAFTAからの脱退やEUとの距離感など、孤立主義的な政策としての幾つかの骨幹政策は不変です。
中国の軍事力展開強化は、アメリカの後退を受けての地域不安定要素に強力な軍事力を前方展開させる事で、安定化を提供させる、いわば国際公共材への軍事力の提供というものですが、併せて当然自国の権益保護の強化等の施策を展開しています。アフリカ地域への進出はジブチのほか、南スーダンへの派遣強化等同時並行され、今後も継続されましょう。すると、安全保障上の懸念事項となる前に、これら地域と日本の協力関係を模索する必要が大きくなるやもしれません。
注意したいのは、中国の軍事力は平時における地域安定という範疇では必ずしも派遣先との対立を生むものではなく、しかし、同時並行で他国領域を占領し人工島建設による海洋閉塞化を実施している同じ国が世界規模での展開を行っている事でもあり、潜在的不安要素となっている訳です。勿論安易に、地域安定化へ日本も積極的に海外派遣を、という視点を提示する訳ではありませんが、中東アフリカ地域の事情と中国の長期戦略の部分的一致が現状に反映されている、という事を理解すると、全体が分かりやすくなります。
北大路機関:はるな くらま
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
今回掲載する内容は先月末に紹介予定のものを諸般の事情で本日ご紹介することとなったものです。
今月内閣改造前、沖縄県の東シナ海ガス田開発をめぐって中国側が新たに移動式の掘削船を停船させて、何らかの作業を行っていることを確認したとして抗議する姿勢を明確としました。この海域では2008年に日中政府が一方的開発を行わない合意を行いましたが、中国側は現段階、沖縄と中国の日中排他的経済水域境界線中国側に限定し開発を進めている。
外務省は、極めて遺憾であり外交ルートを通じて直ちに抗議を行った、としています。朝鮮半島の緊張と共に忘れられがちですが、我が国安全保障上の脅威は二方面作戦を同時並行で求められています。朝鮮半島の核開発問題では中国の外交協力が不可欠ですが、その協力と並行し、我が国領域と資源への不当な圧力が加えられる事があってはなりません。
しかし、我が国は平和憲法に依拠した専守防衛を国是とする防衛政策を採っており、中国の軍事圧力を南西諸島へ掛かるものに対して特に注視し、続いて我が国シーレーンが通る南シナ海での中国の動向に注視されがちですが、中国が現在世界で生じている幾つかの軍事的空白地域へ地域安定を目的とした進出を強化しており、グローバルな視点が重要で、視野を広げる必要があります。
中国海洋進出ですが、中国がかねてより進めていた中東ジブチでの海外拠点建設が警備は初の恒久的な軍基地という位置づけでしたが、確認されているだけで三重態勢警備の要塞化とも呼べる状態まで拡張、基地は広さ約2万3000平方メートルの地下空間も備え、当初予想よりはるかに規模の大きな施設建設を行っていたとして、各国の注目を集めています。また、アフリカ地域では自衛隊が撤収した南スーダンPKOへ中国軍は地域安定化部隊活動開始とともに機械化部隊装備を増強しました。
ジブチは長く、フランスの保護領でしたが、フランス軍が長く駐留していた第13准旅団を移転した後に、中国が入ったという構図でした。ジブチにはフランス軍の舞台や米軍基地があるほか、自衛隊も海賊対処任務へ航空部隊を展開させています。しかしこの新しい中国軍基地の規模はかなり大規模なものとなりそうです。一旦施設を建設する事をジブチ政府が了承しているものの、中国の中東地域における米軍を牽制できる規模の基地の建設を想定していたかは未知数です。
一方、中東地域全般を見ますとイエメン内戦を巡るサウジアラビアとイランの対立が激しさを増しており、これに関連し、イランとの天然ガス田開発を行うカタールが中東諸国から一斉に外交関係の遮断を突き付けられ、地域安定化への大国の関与が重要度を増しています。中東ではアメリカがオバマ政権時代に撤退に転じ、トランプ政権も踏襲している。
中東は安定化への関与を必要としています。先々月26日、スカッドミサイルがイエメンからサウジアラビアへ発射されました、930kmを飛翔しサウジ紅海沿岸のヤンブー石油関連施設へ命中したとの事で、火災が発生、当局は当初事故による火災と発表していましたがイランがイエメンへ供与した弾道ミサイルスカッドが使用されたものと考えられています、大量破壊兵器拡散防止措置が徹底されていない故の問題が一つ表面化したものと云えましょう。
冷戦時代は勿論、ポスト冷戦期の従来のアメリカであれば、ブッシュ政権であれ、クリントン政権であれ、中東での不安定要素はアメリカを中心にその波及を阻止する努力が行われてきました。これは世界の最重要石油産出地域である中東地域の安定を主導する事で間接的に世界の経済的安定等、地域安定の地球規模の波及を回避する視点からの施策でした。
しかし、オバマ政権時代に政権公約に長期化したイラクからの撤収とアフガニスタン派遣の完了を掲げ、更に1991年の湾岸戦争後に実施された中東地域での米軍駐留を併せて縮小した為、中東に軍事空白が生じました。米軍駐留縮小は米軍基地施設へ依存したNATO加盟国の駐留をも縮小させました。地域の不安定要素が無くなったためにという平和故の縮小ではなく内政上必要になったからという政治的な要素に基づく撤収は不安定化要素です。
トランプ政権誕生は、オバマ政権の実績と施策へのアメリカ世論の反発を支持として大統領選に勝利した背景から一見、偉大なアメリカの復活を周辺地域への軍事的安定の付与という施策への転換を期待させるものでしたが、大統領選での施策は戦前の孤立主義への回帰を示唆するものであり、大統領就任後多少方向性は修正されつつも、例えばアメリカの環太平洋地域での影響度を高めるTPPやNAFTAからの脱退やEUとの距離感など、孤立主義的な政策としての幾つかの骨幹政策は不変です。
中国の軍事力展開強化は、アメリカの後退を受けての地域不安定要素に強力な軍事力を前方展開させる事で、安定化を提供させる、いわば国際公共材への軍事力の提供というものですが、併せて当然自国の権益保護の強化等の施策を展開しています。アフリカ地域への進出はジブチのほか、南スーダンへの派遣強化等同時並行され、今後も継続されましょう。すると、安全保障上の懸念事項となる前に、これら地域と日本の協力関係を模索する必要が大きくなるやもしれません。
注意したいのは、中国の軍事力は平時における地域安定という範疇では必ずしも派遣先との対立を生むものではなく、しかし、同時並行で他国領域を占領し人工島建設による海洋閉塞化を実施している同じ国が世界規模での展開を行っている事でもあり、潜在的不安要素となっている訳です。勿論安易に、地域安定化へ日本も積極的に海外派遣を、という視点を提示する訳ではありませんが、中東アフリカ地域の事情と中国の長期戦略の部分的一致が現状に反映されている、という事を理解すると、全体が分かりやすくなります。
北大路機関:はるな くらま
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