北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

平成二十九年度八月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2017.08.12/08.13)

2017-08-11 20:02:24 | 北大路機関 広報
■自衛隊関連行事
 今週末はお盆期間という事で自衛隊関連行事はありません。盆踊りなどへの基地や駐屯地開放等は最寄の防衛省自衛隊地方協力本部掲示板をご覧ください。

 終戦記念日が近い今日この頃ですが北朝鮮によるグアムへの弾道ミサイル発射計画が発表され、極東地域は1996年の台湾海峡危機以来の重大な緊張に包まれています。現在のところアメリカ太平洋軍に大きな動きはありませんが、防衛省では北朝鮮が予告した島根県広島県高知県等飛翔経路下へのミサイル防衛部隊配置検討を含め、警戒監視と不測の事態へ対応準備に全力で当っている所です。

 今週末の自衛隊行事無し、という際にはそここことお庭の掃除や木々の手入れや花々の手入れ等に時間を費やしたいところですが、自衛隊行事が無いとは言っても自衛隊関連の広報施設や博物館などは開館していますので、こちらを散策してみるというもの面白いかもしれません、浜松基地の航空自衛隊広報館等は浜松基地も一望できる好立地にあります。

 浜松基地航空自衛隊広報館は浜松基地の浜松駅寄りに在ります航空自衛隊の広報施設で、過去の自衛隊機や航空自衛隊の装備と組織体系、その歴史や様々な出来事を展示しているわが国有数の航空機博物館、これほどの規模を有する施設は民間では現在は改装中ですが岐阜かかみがはら航空宇宙博物館、自衛隊では鹿屋航空基地広報館くらいものでしょうか。

 ブルーインパルス塗装のF-86が迎える浜松基地航空自衛隊広報館は、戦闘機でF-104にF-86DとF-1や零戦52型,V-107やS-62とH-21やH-19ヘリコプター、T-1,T-2,T-3やT-33とT-34等の練習機、MU-2にT-55、C-46輸送機とそれこそ多種多様な航空機が並びます、入館は自衛隊広報施設という事で無料、自衛隊の任務と役割をしっかりと知りましょう。

 さて撮影の話題、自衛隊関連行事と雨天は、極力出会わせたくない組み合わせというものですが、雨天中止という決定は、航空祭であれば基地開放か飛行展示を行うか、ギリギリまで天候偵察で、可能な展示を考えるもの、陸上自衛隊関連行事ですと、師団行事でも雨天行事として屋内で実施する場合もありますが、それでも訓練展示等、可能な範疇にて実施する場合が多い。

 すると、雨滴に濡れた場合をどうしても考えてしまいます。友人の一人は迷わず“しまむら”に直行してTシャツを代えてしまうという現代人もいますが、当方としては帰路への時間を考えまして、更に基地周辺の銭湯か温泉を探してしまいます。市街地の駐屯地は周囲に銭湯が無い立地が多いのですが、郊外の駐屯地や飛行場と艦艇基地は意外と銭湯多い。

 最近のスマートフォンは周辺検索で銭湯を一発位置標定可能で、当方が最近まで使っていた第一世代のスマートフォンとの機能発展には驚かされるのですが、装備品展示の際に思い切って周辺の温泉施設や銭湯等を聞いてみますと、意外な穴場が聞けます。聞きにくい話題ですが、雨天で濡れながら聞いてみますと、露天風呂付銭湯等、教えてもらいました。

■駐屯地祭・基地祭・航空祭

今週末の自衛隊関連行事は無し

■注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関
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北朝鮮,グアム火星12ミサイル複数発射計画を発表!アメリカは軍事行動視野に異例の牽制

2017-08-10 23:34:00 | 防衛・安全保障
■グアム八月ミサイル危機勃発
 本日は京都幕間旅情台風5号下での上賀茂神社参拝の様子を、昨日の下鴨神社参拝に続いて紹介する予定でしたが、予定を変更します。

 北朝鮮人民軍は、弾道ミサイルによるグアム島周辺への包囲射撃を断行するための作戦を慎重に検討している、と国営メディアを通じて声明を発表しました。グアム近海へ撃ち込むと発表したのは、先日発射実験を行った中距離弾道ミサイル火星12型、北朝鮮の弾道ミサイル部隊である戦略軍報道官がこのミサイル発射計画を示し、実施される可能性は高い。

 グアム島は夏休みの海外旅行先、南太平洋の楽園という観光地ですが、同時にアメリカ軍の西太平洋上における重要な戦略拠点となっており、数百機の戦闘機や爆撃機を収容可能なアンダーセン空軍基地、攻撃型原潜などが拠点とするアプラ軍港等が並びます。中国大陸や朝鮮半島に近い在日米軍基地を前線基地とし、後方の戦略拠点としての位置づけです。

 朝鮮労働党機関紙“労働新聞”10日付けの一面には前日の戦略軍発表の続報として、日本の上空を通過させグアム島周辺の海上に落とす、との具体的計画が明示されました。火星12型4発を同時発射、“日本の島根県、広島県、高知県の上空を通過”として、グアム近海へ。恐らく愛媛県を含め明確に日本本土上空を飛翔する経路を採ると発表しています。

 北朝鮮が弾道ミサイルを発射した場合、迎撃は行われるのでしょうか。イージス艦による海上MD部隊とTHAADミサイル、在韓米軍と在日米軍のミサイル警戒部隊によるレーダー情報があれば、ある程度は迎撃できる可能性はあります。そして実施したならば、湾岸戦争以来のミサイル防衛戦となります。しかしそれ以上に日米の集団的自衛権行使となる。

 日米の集団的自衛権行使について、想定されるのは北朝鮮弾道ミサイル情報が横田基地において共有されている為で、海上自衛隊イージス艦や航空自衛隊レーダーサイトからの弾道ミサイル情報は即座に日米で共有される訳です。直接迎撃ミサイルを発射する訳ではありませんが、ミサイル防衛では情報こそが第一であり、軍事上初の集団的自衛権行使です。

 グアムへのミサイル発射はグアム島近海30kmから40kmに落下させるとしており、四発の弾道ミサイル同時着弾が行われるとすればグアム島は国際観光地でもある事から、民間旅客機等へも重大な脅威となるでしょう。この距離は領海外ではありますが排他的経済水域であり、実行すればアメリカの反発は一挙に限定空爆等軍事攻撃まで突沸しかねません。

 トランプ大統領は休暇を過ごしているニュージャージー州のゴルフ場で記者会見に応じ、アメリカ国防情報国DIAの小型核弾頭の製造に成功との分析等に触れ、北朝鮮の軍事挑発に対し“世界がこれまで見たこともないような、炎と怒りを浴びることになるだろう”という、アメリカ大統領の発言としては歴史上異例というほどの厳しい言葉で抗議しました。

 マティス国防長官はこれまで一貫し北朝鮮問題では外交解決を優先するとの立場を堅持し、軍事的に米朝が全面衝突した場合、極めて憂慮する事態になるとの見解を示してきましたが、西太平洋地域における沖縄の米軍基地や東京横田基地横須賀基地横浜ノースドックの首都圏基地群と並ぶ拠点、グアムへのミサイル発射脅威への姿勢は明らかではありません。

 グアム近海へ北朝鮮が弾道ミサイル攻撃を実施した場合、アメリカが採り得る選択肢はどのようなものでしょうか。北朝鮮へ海兵隊を上陸させ占領する可能性はまだ低いですが、日本近海の駆逐艦や攻撃型原潜からのトマホークミサイルでの限定攻撃、もう少し緩慢な施策としてF-15EやP-8A等の航空機による北朝鮮港湾への機雷封鎖、等が考えられます。

 国連による北朝鮮経済制裁では、既に今月6日に“北朝鮮主要収入源である石炭、鉄、鉄鉱石、海産物、その輸出を上限や例外無く一切、禁止する”という異例なほどの厳しい制裁決議が、ロシアと中国を含めた安全保障理事会全会一致で可決されました。仮に厳格に履行されたならば、北朝鮮は輸出総額の三分の一を一挙に失い大打撃を受ける事となる。

 ニューヨークでの国連安保理での中国とロシアの制裁合意、この経済制裁は、先月4日と28日に実施したICBM大陸間弾道弾発射実験を受けての経済制裁であり、北海道から落下する弾道ミサイルの映像が撮影される程、沿岸近くに撃ち込まれたとの新しい段階の脅威が映像を通じて国連安全保障理事会での危機感として共有されたものとも言えるでしょう。

 グアムを狙う背景には、北朝鮮は国連経済制裁の全面解除を要求すると共に核開発を北朝鮮の正当な権利として認めるよう要求しています。また、今月21日からは毎年恒例となっている米韓合同軍事演習が行われ、北朝鮮は毎回中止を要求しています。中止と共に在韓米軍撤退も要求し、これらが認められるまで核とミサイル開発を継続すると考えられます。

 ロシア国防省極東シベリア地域のハバロフスクに司令部を置く東部軍管区司令部は、本日北方領土等の千島列島演習場において軍事演習を始めたと発表しました。北朝鮮ミサイル実験が波及した形です。しかし、これは北朝鮮軍がロシアへ侵攻する事を警戒しているのではなく、朝鮮半島緊張に伴う西太平洋地域での米軍行動への牽制が目的と考えられます。

 千島列島においてロシア軍が演習を実施した場合、我が国陸上自衛隊も対抗演習を開始します。これは万一、演習のための兵力集積が千島列島の北海道の一部と位置づける北方領土からロシア軍が直接北海道へ侵攻する可能性を抑止するためであり、数年前にもロシア軍の極東での大規模演習に呼応し北海道大演習場や矢臼別演習場で即応体制を執りました。

 朝鮮半島情勢が早速、極東北部地域へ波及した形ですが、北朝鮮が実際にグアム方面へミサイル実験を実施へと進めた場合、牽制するべくアメリカ軍部隊は極東地域へ増強派遣される事は必至で、これをロシア軍は牽制する必要があると共に、中国についても南シナ海や東シナ海、台湾海峡や九州近海での牽制行動を行う可能性は高いといわざるを得ません。

 日本海での実験に加え遠からず、北朝鮮は弾道ミサイル射程を誇示するミサイル実験を太平洋方面に対し実施する可能性はありました。しかし、今月に入り突如、それもグアム方面に対し弾道ミサイル実験を実施し、しかも太平洋上の要衝であるアンダーセン基地の数十km以内に複数を着弾させるという選択肢を誇示する事は中々予想できませんでした。

 第二のキューバ危機、というような表現程幸いまだ情勢は緊迫していません。しかし、北朝鮮は核弾頭を小型化させ弾道ミサイルによる運搬能力を獲得したとの国防情報局DIAの分析もあり、アメリカは懸念しています。第二次世界大戦後としては印パ国境紛争核危機以来の、核兵器使用さえ含めた、極めて憂慮すべき事態が始りつつあるのかもしれません。

北大路機関:はるな くらま
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【京都幕間旅情】下鴨神社,玉依姫命賀茂建角身命祀り神武帝御世に始る社殿へ台風直下参拝

2017-08-09 20:01:30 | 写真
■下鴨神社に台風通過を祈る
 台風五号が京都に最接近した一昨日、突風と豪雨が少し止み間を迎えましたので傘を差し防災を祈りに、下鴨神社へ参拝してまいりました。

 下鴨神社、左京区下鴨にありますこの神社、下賀茂神社は正式には賀茂御祖神社といい、山城国一宮という位置づけで旧社格は官幣大社です。境内には糺の森が広がり御手洗川が流れ、美しい国土を境内に再現した中に浮かぶ朱色の楼門は中なかなかに神秘的です。

 葵祭、京都三大祭の一つであるこの祭事が正しくは賀茂祭といい、そして葵祭の神社といいますと、歴史装束の時代行列が御所から下鴨神社と上賀茂神社へと向かう情景と共に、下賀茂神社の京都における位置づけが思い浮かべられるでしょうか。京阪出町柳駅の近く。

 玉依姫命とその父にあたる賀茂建角身命を主祭神と祀る神社です。玉依姫命は賀茂別雷命の母という親和上の存在ですが、玉依姫命は日本書紀にて鸕鷀草葺不合尊と結ばれ、四子を授かり、その末子が神日本磐余彦尊とされています、神日本磐余彦尊とは神武天皇です。

 創建は京都で最も古い神社の一つという事以外分かっておらず、千年二千年という単位の前の話のようです、初代天皇神武天皇治世下御蔭山に玉依姫命が降臨し、神社を建立する事となりました、紀元前90年即ち崇神7年に神社の一部を修復したとの記録もあります。

 神武天皇即位は紀元前660年、その時代に神武天皇の母御是と祖父が京都に降臨した為に造営された神社、我が国伝統の奥深さを考えさせられるものです。玉依姫命が東本殿に祀られ賀茂建角身命が西本殿に祀られていまして、ここは1953年に国宝へ指定されました。

 式年遷宮日本の寺社仏閣で当方が考えさせられる神事が式年遷宮ですが、下鴨神社では21年に一度の式年遷宮という歴史的な行事が進む最中です。式年遷宮、定期的に神社の全ての建物を取り壊して建て替える神事で、これが日本の民族性に影響しているよう思える。

 日本の国土は巨大火山と世界の地震の一割が発生する環太平洋上の台風の通り道に位置しまして、常々日本人の定義とは民族性云々ではなく巨大災害連発下に人の生き方悟り楽しく暮らせる人々と思う事がありますが、定期的に零に戻す式年遷宮の価値観と重なります。

 源氏物語や枕草子にも度々登場するのですが、この頃から葵祭が執り行われており祭事に集まる人々が多い事から朝廷から警備を強めるよう命じられたとの記録も残ります。興味深いのは徳川家に繋がる家系で松平信光が賀茂朝臣として仕え、葵の御紋の由来ということ。

 皇室の氏神様を祀る神社という事で飛鳥時代奈良時代と特別の崇敬を集めると共に奈良時代に807年からは斎王として皇女が神に奉仕する制度が始まりました、斎王とは内親王が伊勢神宮または賀茂神社に奉仕する制度です。平安遷都を経て一層の崇敬を集めました。

 室町末期、戦乱を経て貴族の位置づけに代わり個々人の崇敬が支える時代にも栄えると共に江戸時代には上記の通り徳川家と同じ葵を掲げる神社との事で格別の保護を受け、明治初年に伊勢神宮と共に官幣大社首位として我が国の神社に在って筆頭に挙げられています。

 神武天皇治世下に始まり日本の歴史の大きさを感じると共に、糺の森を歩み祝詞舎に四脚中門と細殿や舞殿と続き神服殿や供御所を経て東本殿と西本殿との社殿に向かいますと、大都市にもこうした空間があるのか、との静寂さへのある種何か感慨深いものを抱きます。

 祭事も数多く葵祭や節分神事はこれまでに当方もお伝えましましたが、一月に御粥祭と蹴鞠はじめ、五月には葵祭を筆頭に流鏑馬神事と奉納演武に御蔭祭が執り行われ、七月には御手洗祭が行われる。葵祭は平安時代に祭りといえば本祭事を示す程で15日に行われます。参拝終えた頃、台風は和歌山に上陸しました。

北大路機関:はるな くらま
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八月八日は“八八艦隊の日”,全通飛行甲板護衛艦四隻体制確立とF-35運用開始で揃う将来防衛

2017-08-08 23:32:56 | 北大路機関特別企画
■新八八艦隊DDH×8&DDG×8
 八月八日は“八八艦隊の日”、毎年恒例の八月提言、海上自衛隊には新しい八八艦隊が必要だ、という特集を今年も考えてみましょう。

 海上自衛隊は現在4隻運用するヘリコプター搭載護衛艦を8隻に増勢し、護衛艦隊隷下の4個護衛隊群隷下にある8個護衛隊全てをヘリコプター搭載護衛艦、イージス艦、2隻の汎用護衛艦、以上4隻で編成を統合すべきではないか。更に航空自衛隊において試験運用が開始されたF-35A戦闘機の運用基盤をもとに護衛隊群に垂直着陸と短距離離陸が可能なF-35B戦闘機12機を基幹とする航空隊を配置し、2隻に分散配置することで艦隊戦闘優勢へ活用すべきではないか。

 八月八日は88艦隊の日、ということで毎年恒例となりましたこの一日ですが、本年は新ヘリコプター搭載護衛艦かが竣工により、巡洋艦型ヘリコプター搭載護衛艦最後の一隻であった護衛艦くらま除籍となり、全通飛行甲板型のヘリコプター搭載護衛艦四隻が全て揃うこととなりました。F-35A戦闘機の三菱小牧FACO初飛行により、航空自衛隊へ第五世代戦闘機時代が漸く到来し、二つの意味で防衛力変革の一年と言えるかもしれません。

 防衛力変革の一年と同時に昨年度は航空自衛隊の対領空侵犯措置任務緊急発進回数が1100回と過去冷戦最盛期の950回台を一挙に大きく突破し、脅威という視点でも大きな転換点にあります。中国海軍は国産空母の建造を本格化させており、大凡十余年を経て複数、二十余年の先には五隻程度の航空母艦を保有している可能性も否定できず、脅威の進展という意味でも変容が進んでいます。現在でこそ、アメリカ海軍のニミッツ級原子力空母と最新型のジェラルドフォード級空母が優勢となっていますし、中国が建造中の航空母艦とは単艦で視た場合でも有力な設計ですが、日中を見た場合には、現状を放置すれば深刻な抑止力の欠缺に達する可能性が高い。

 88艦隊、これは日本海軍が夢見た巨大艦隊の創設計画で、戦艦8隻巡洋戦艦8隻を主体とした16隻の決戦兵力創設を目指したものでした。この88艦隊という言葉の響きは戦後海上自衛隊が、護衛艦隊護衛隊群を編成する場合に護衛艦8隻とヘリコプター8機を基幹とする艦隊に88艦隊の呼称を用いたほど、親しみを込めて顧みるもの。日本海軍は太平洋戦争開戦時に10隻の戦艦を保有し、開戦直後に戦艦大和が竣工、続いて武蔵も竣工していますので、88艦隊といわれたとしても錯誤が介在しますが、88艦隊とは1920年代に新型戦艦のみで艦隊を建造する壮大な計画でした。

 戦艦長門、16インチ砲を世界に先駆け採用した巨大戦艦は88艦隊最初の1隻であり、二番艦陸奥、とともに土佐型戦艦の建造に着手、同時に巡洋戦艦天城、戦艦加賀、と建造を展開する途上でしたが、第一次世界大戦後の世界的な軍縮機運とともにワシントン海軍軍縮条約が成立、日本も批准した事で長門と陸奥を除き、未成戦艦となっています。もちろん、当時の日本の経済力では88艦隊編成は限界があり、仮に実行したならば予算の大半が88艦隊にまわり、結果、艦隊航空や護衛艦艇建造に大きな影響が及んだであろう事はいうまでもありません。

 新しい88艦隊、これは海上自衛隊に高速戦艦を建造するというようなものではなく、ヘリコプター搭載護衛艦8隻と艦隊防空用イージス艦8隻を護衛艦隊に配備させ、海上防衛の主軸に充てる、というものです。既にイージス艦は6隻に加え8200t型護衛艦としてより大型のイージス艦2隻が建造され、ミサイル護衛艦8隻がイージス艦により充足され、全通飛行甲板型護衛艦は、ひゅうが型いずも型の4隻が竣工していますので、この壮大な案はヘリコプター搭載護衛艦を4隻増勢すべき、というものです。

 ヘリコプター搭載護衛艦、海上自衛隊が1973年に最初のヘリコプター搭載護衛艦はるな竣工とともに長く日本独自の装備体系として練成しました艦種で、大型の対潜ヘリコプターを3機集中運用し、対潜中枢艦とする運用です。イタリア海軍のヘリコプター巡洋艦アンドレアドリア級やイギリス海軍のヘリコプター巡洋艦タイガー、日本を度々親善訪問したフランス海軍ヘリコプター巡洋艦など、世界をみればヘリコプター巡洋艦は多種多様ですが、対潜戦闘へ日本ほど体系化した実例はありません。

 ひゅうが型護衛艦、いずも型護衛艦、全通飛行甲板型護衛艦を4隻そろえた海上自衛隊ですが、こうした運用を実施しているのは日本だけでしょう。全通飛行甲板型護衛艦の最大の利点はF-35B戦闘機を運用できる点です。航空自衛隊が装備するF-35Aは空軍型で、F-35Bはアメリカ海兵隊が岩国航空基地へ前方展開させている機種で、垂直着陸と短距離離陸が可能です。しかし、F-35BはF-35Aにたいし、燃料搭載能力の関係で航続距離だけは若干劣りますが、空対空戦闘能力や戦場情報統制能力では全く同等の能力を有しています。

 F-35Bを海上自衛隊に配備する、この利点はF-35戦闘機のレーダーに探知されにくいステルス性能と卓越した情報統制能力にあります。こういいますのも、F-35は戦域情報優位を念頭に情報支配こそが戦域支配に直結するとの思想に基づき設計された第五世代戦闘機の鏑矢で、相手に探知されることなく水上戦闘艦や航空母艦などの目標位置を把握し、艦隊ミサイル戦闘の先手を打てる点、更に水平線を越えて水上戦闘艦艇のレーダーからは捕捉できない遠方の目標を探知できるほか、必要であれば艦隊防空戦闘、陸上戦闘機部隊の邀撃戦闘能力の補完さえ、可能となるでしょう。逆の視点から、アメリカの友好国以外にはF-35Bは調達できず、第五世代戦闘機は勿論、第四世代戦闘機を艦上運用する場合には40000t以上の大型艦が必要となります、即ちF-35にアクセスできる日本ならではの選択肢といえるのです。

 8隻のヘリコプター搭載護衛艦を必要だ、として88艦隊の必要性を提示する背景には、1個護衛隊群へ2隻のヘリコプター搭載護衛艦を配備することで、仮に一方が大きな損害を被ったさいにも戦闘行動を群として維持できるという部分、更に1個護衛隊群の能力を無理矢理2個の群として行動させる場合の運用を考慮したものです。数の上では、中国海軍が大量生産する小型水上艦艇に海上自衛隊は対抗しえるものではありませんが、質的優位を喪失することは、抑止力の破綻に直結しますので絶対にさけなければなりません。

 1個護衛隊群に2個の群としての機能を付与させる、この視点について。これは1個護衛隊群に1個航空群を配置させ、艦上から機動運用させるという施策を意味します。海上自衛隊は現在、1個護衛隊群に航空隊に相当する哨戒ヘリコプター部隊を配置しています。SHー60J/K哨戒ヘリコプター部隊を艦上運用していますが、ここに12機のF-35Bを搭載することで、SH-60の航空隊とF-35Bの航空隊を配置することとなる。SH-60は対潜戦闘を主眼に哨戒任務に当たる航空機ですが、F-35Bは空対空戦闘と対地戦闘を含め哨戒任務にあたる航空機で、この二機種が配備されているならば、自衛隊が求める洋上任務のかなりの部分を遂行できるでしょう。

 Fー35B航空隊とSH-60航空隊で航空群を編成し、2個護衛隊を基幹として運用される護衛隊群に配備する、いわば護衛隊群に航空群という2個群を洋上に展開させることができるのです。この威力は大きい、我が国へ軍事的冒険を考える勢力は常に航空自衛隊のF-35とF-15に気を配るとともに陸上の航空基地以外の艦上から飛来するF-35Bの能力を想定しなければなりません。そして、航空機の進出速度は大きく、護衛隊群の展開海域から離れた方面へも迅速に展開できるのです。この利点は大きく、ヘリコプター搭載護衛艦運用k版を最大限活用する施策であると考えます。

北大路機関:はるな くらま
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【EOS-M3特報】横須賀サマーフェスタ二〇一七,日米英仏艦船大集合!(2017-08-05)

2017-08-07 22:38:04 | 陸海空自衛隊関連行事詳報
■横須賀サマーフェスタ二〇一七
 横須賀サマーフェスタ二〇一七、久しぶりに、そう何年振りでしょうか、台風五号の動きが鈍い事もあり、行ってまいりました。まずはEOS-M3の写真にて速報記事です。

 横須賀サマーフェスタは海上自衛隊横須賀基地の一般公開行事です。横須賀基地は土曜や日曜日の一般公開は基本的に行われていませんので貴重な一般公開行事といえるでしょう。舞鶴基地や佐世保基地に呉基地ですと艦艇広報や桟橋一般公開といった自由に見学できる機会が週末に開かれているのですが、ね。

 地方総監部広報によればサマーフェスタでの行事は艦艇一般公開ということでしたが、詳細は試験艦あすか、砕氷艦しらせ一般公開、ということでしたので、護衛艦が一般公開されない、という希有な行事となっていまして、護衛艦の任務増大という厳しい情勢が反映されているのでしょう。

 試験艦あすか、砕氷艦しらせ、潜水艦たかしお一般公開、という内容でした。潜水艦たかしお一般公開は現地に足を運び、驚かされたもので、上甲板のみ公開で艦上撮影は禁止というものでしたが、鋼鉄の鯨の真上を歩くことができたのは貴重な経験、待ち時間も10分ほどでした。

 護衛艦が一般公開されない、ということは基地入り口と総監部にちかい逸見桟橋のみが一般公開されるのか、と思っていますと砕氷艦しらせ、は吉倉桟橋、あの横須賀線車窓から田浦駅を出て暫く後に見える桟橋似停泊していましたが、驚いたのは吉倉桟橋に護衛艦が皆無だったこと。

 あすか艦上には新型艦対艦ミサイルの発射装置が搭載されていました、四連装発射筒は90式艦対艦誘導弾Bともハープーンミサイルとも異なる形状で防衛装備庁がデータリンク能力と射程延伸に主眼をおいて開発しています新型、Nから始まる型式名称で試作名も公開されていません。

 軍港巡り遊覧船乗船券に余裕があると友人から一報貰い、基地で偶然会った友人共々ヴェルニー公園を遊覧船乗り場へ、海上自衛隊の護衛艦は全部出航していますが、アメリカ海軍艦艇は水上戦闘艦が多少在泊していまして、先日衝突事故にあったフィッツジェラルドもドックにいます。

 フランス海軍の情報収集艦デュピュイドロームやアメリカ沿岸警備隊の大型カッターマンローが停泊していまして、これは横須賀基地からは見えない位置ではあるのですが中々興味深い艦船が入港している、という印象です。ハミルトン級はフィリピン海軍へ輸出されていますね。

 デュピュイドロームは通信情報収集を主任務とする情報収集艦で、フランス海軍にはこのほか、弾道ミサイル追跡を主任務とする情報収集艦モンジュなど多数の情報収集艦が配備されています。北朝鮮弾道ミサイルがパリを射程内に収めた事への対応、ということでしょうか。

 イギリス海軍のタイドー級補給艦二番艦タイドレースが寄港です。韓国の大宇重工が建造した補給艦で、4隻で4億ポンド少々、つまり一隻でF35B戦闘機と同額の格安補給艦です。海外任務増大のため旧型の11000t型を35000t型補給艦で安価に置き換えようとしたもの。

 砕氷艦しらせ、再度手荷物検査を経て横須賀基地へ入構です。横須賀サマーフェスタは大混雑という印象がありましたが、近年の体験航海終了や飛行展示非実施により来場者が減ったのでしょうか、また同日アメリカ海軍横須賀施設も公開され分散したのでしょうか、空いていました。

 海上自衛隊最大の艦艇は、長らく先代の砕氷艦しらせ、でした。CH-101輸送ヘリコプター2機を搭載する格納庫や、コンテナ貨物輸送を大きく想定した艦内設備、極地観測支援任務への観測隊員用区画等は、本艦も災害派遣などでは大きな役割を果たし得るもので、災害から防衛出動まで、有事の際には病院船転用という施策をもっと考慮するべきなのかな、とも思いました次第です。

 試験艦と砕氷艦のみの一般公開、と聞きつつ歩みを進めれば潜水艦一般公開が加わり、しかも試験艦には新型対艦ミサイルが搭載、軍港めぐり遊覧船に上船すれば米英仏海軍艦艇の横須賀大集合を撮影できました今回の横須賀サマーフェスタ、久々に散策しましたが実り多いもので、その後沼津経由で帰途に就きました次第です。

北大路機関:はるな くらま
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【日曜特集】第4施設団52周年大久保駐屯地祭【2】方面施設部隊観閲行進(2013-05-26)

2017-08-06 20:19:58 | 陸上自衛隊 駐屯地祭
■大久保駐屯地祭観閲行進
 大久保駐屯地第4施設団52周年記念行事、第二回は観閲行進の様子とともにその歴史をお伝えしましょう。

 92式地雷原処理車の地雷原を吹き飛ばす迫力の装備です。大久保駐屯地祭、第4施設団と第3施設大隊の駐屯地祭です。第4施設団は中部方面隊隷下、団本部、段本部付隊、第6施設群、第7施設群、第304水際障害中隊、第304施設隊、第305施設隊、第102施設器材隊、第307ダンプ車両中隊、との編成となっています。

 75式装甲ドーザ、敵の防御陣地を力任せに押し潰す。施設団は現在の編成に至る際、数多の改編を経ていますが施設団創設当時、全国の施設部隊は施設大隊と建設大隊を分けており、特に建設大隊の編成は陸上自衛隊創設当時の第二次世界大戦敗戦からの僅か数年という戦禍の記憶に配慮した部隊呼称となっていました。

 1973年、建設大隊と地区施設隊を統合する新しい改編が行われる事となりました。この当時の編成は第101建設大隊と第105建設大隊に第109施設大隊に地区施設隊と施設器材隊やダンプ車両中隊等を併せた編成でしたが、この改編により現在の施設群が誕生します。

 第101建設大隊が第6施設群へ改編され、第313地区施設隊と第318地区施設隊が統合された。第105建設大隊は第319地区施設隊と第323地区施設隊を統合し第7施設群へ改編、第109施設大隊を第320地区施設隊と第325地区施設隊とを第8施設群へ改編しました。

 団隷下、3個の施設群創設は、第一線工兵任務への能力集中という意味があり第102施設器材隊が新設されますが、併せて指揮系統が改編され地区施設隊を団直轄部隊へ改編される事となります。そして徐々に地区施設隊を施設群へ統合する一連の流れが形成されてゆく。

 施設団は元々建設工兵ですので大型ドーザ等を装備している。現在、自衛隊は水陸機動団新編へ自衛隊全体の定員を変えず、人員を部隊の整理縮小と改編拡大を併用する難しい施策を実施しています。しかし、現在度の部隊も任務に対し人員余裕が限られ難渋する様子が垣間見えますが、冷戦時代は地区施設隊が活躍しています。

 第8施設群第325地区施設隊は新編部隊への如何という形で上記命題へ対応しました。1981年、四国を防衛警備管区とする第2混成団新編に伴い、高知駐屯地へ新編される第2混成団施設隊へ管理替えの形で移管しました。第2混成団とは善通寺、現在の第14旅団ですね。

 第2混成団新編の1981年は陸上自衛隊に1962年の管区隊師団創設以来の部隊改編となった一年です。第1混成団は沖縄返還を以て先んじて那覇駐屯地に創設されていますが、第2混成団が新編された年は第7師団の師団改編、自衛隊機甲師団誕生の年でもあった訳です。

 四国の混成団は、基盤的防衛力整備という現在変革が進む従来型の防衛力整備の先駆けでもありました。現在では大津にある第2教育団が善通寺駐屯地に当時ありましたが、多くの隊員を自衛隊へ送る四国では定年間近になり郷里近くの駐屯地を希望する退院の受け皿がない一方、四国では防衛上着上陸脅威は少ないものの防災上の要求が多くありました。

 92式浮橋が展開して参りました、橋梁は地味な装備と思われますが、地図上で架線を渡れないと全く何もできず、作戦を考える程戦略上重要な装備と分かる。さて、善通寺に新しい混成団を創設する構想は、こうして第2教育団を大津駐屯地に移駐させ、善通寺に第2混成団を創設が実現する事となり、広島の海田市に司令部を置く第13師団より移管する善通寺第15普通科連隊を中軸として、四国に新しい混成団が創設されました。

 大久保駐屯地ですが、この四国の混成団創設と共に間接的に影響を受ける事となります。これは善通寺に在った第2教育団が大津駐屯地に移駐した事を受け、当時松山駐屯地に駐屯していました第4陸曹教育隊がのちにここ大久保駐屯地へ移駐する事となった訳です。

 浮橋本体と動力ボートの観閲行進、架線に橋節を浮かべて次々繋ぎ、動力ボートで流れに逆らって橋梁を維持する。中部方面隊の建設工兵部隊という位置づけにて日本第二の大都市圏京阪神地区の一角である京都府宇治市の大久保にて防衛警備任務の一端を担った第4施設団ですが、東西冷戦の終結や部隊の整理縮小、国際貢献任務の要求へ応じ、更なる改編が重ねられる事となる。

 1990年、第4施設団は隷下部隊の地区施設隊廃止改編を実施しました。地区施設隊の内、施設群隷下部隊は基本的に施設群隷下に置かれていますが、金沢駐屯地第302地区施設隊と山口駐屯地第304地区施設隊は廃止部隊となり、二部隊は、その歴史の幕を閉じました。

 1999年には第4施設団隷下の第8施設群が廃止される事となります。第8施設群は善通寺駐屯地に駐屯していまして、これにより善通寺駐屯地には第2混成団が唯一の部隊という位置づけとなった。他方、第2混成団は大幅に増強し第14旅団となったのはご承知の通り。

 第8施設群の廃止改編に併せ、出雲駐屯地に第304施設隊、善通寺駐屯地第305施設隊が新編される事となり、こちらは施設群に属せず施設団直轄部隊という位置づけとなっています。このあたり、北海道で第3施設団が北部方面施設隊に改編される等、混迷でしたね。

 道路整地車両、これで舗装道路へアスファルトを敷きます、有事の際に道路が維持できるとは解らず民間建設会社が砲弾落下の地域には来てくれません、その為に各国軍隊はこうした装備を持ちますが、自衛隊の装備は国際貢献で役立った。自衛隊の冷戦後の将来像を模索する中で、実はこの地区施設隊廃止改編と第8施設群廃止改編の中間期、自衛隊の任務に大きな変容がありました。これはPKO協力法に基づく自衛隊の国連平和維持活動への参加開始です。1992年、カンボジアへ自衛隊が派遣されました。

 建設工兵の実力は意外と知られていませんが、大型トラックが通行出来て数十年維持可能な橋梁や鉄筋コンクリートの建物にダムや堤防などの治水設備と用水路などの灌漑設備は建設工兵が簡単に建設できます、トーチカや対戦車壕と野戦陣地に架橋の応用ですからね。カンボジアPKO任務第一次派遣隊は、ここ第4施設団が主力となり編成、京阪神地区は革新自治体が多く、自治体防災訓練へ自衛隊の参加が府県知事要請により参加できずオブザーバーに留まるなど独特の価値観がある為、大久保駐屯地営門前は大変であった、とのこと。

 国際貢献での海外派遣と云えば現在では自衛隊の主要任務に数えられる時代ですが、当時は海外での大災害への緊急人道支援も社会党の圧力で実施できず、海外にて邦人が紛争地に取り残されても自力で運命を切り開くしかない、という特攻精神が国民に求められた。

 ダンプ中隊の観閲行進が始まりました、地対地ミサイルに見えますがダンプです、妙に迫力が凄い。さて、邦人救出ではイランイラク戦争にてイラク軍から無差別ミサイル攻撃の通告を行われたイランの首都テヘランに邦人が取り残され、運輸省の日本航空への邦人輸送要請が労組の反対で却下、自衛隊のC-1輸送機派遣は憲法上無理と国会で一蹴、最早これまでか、となる。

 イランに孤立した邦人はトルコ航空の人道精神、1890年に和歌山県串本沖で発生したトルコ海軍遭難事案、エルトゥールル号遭難事件へ日本側が地元住民の救助、遭難時は悪天候で地元にも食糧が枯渇した状況での生存者の治療と保護した歴史の返礼で、助けられます。

 イランイラク戦争にて邦人救出へ日本航空があてにならない事を痛感した政府はボーイング747ジャンボ機2機を政府専用機として導入する事となりました。しかし、この政府専用機が配備されたのは1992年で、カンボジア派遣はその年に執り行われた訳なのですね。

 無事カエル、とは大久保駐屯地に置かれているモニュメントがあります。これはカンボジアPKO任務へ第一次派遣部隊として展開する第4施設団が全隊員の無事帰還を祈念し設置したもの。カンボジア内戦はポルポト派による大量虐殺、戦闘も一部地域で続き懸念されました。

 しかし、一番大変だったのは輸送部隊の展開です。海上自衛隊に大型輸送艦は満載排水量4000tの輸送艦みうら型3隻のみ、現在のような満載排水量14000t輸送艦おおすみ型はまだ無く、フィリピン沖で台風に遭遇し、陸上自衛隊員は時化に不慣れ、船酔いが凄かった、と。

 ダンプ中隊の観閲行進は迫力がありますが、中隊32両のダンプは建設工兵の任務に不可欠で、これを通常のトラックとスコップで実施した場合は大変な事になる。国際貢献任務はPKO協力法制定時、相当左翼陣営がこれで外国を侵略し徴兵制や核武装が始まると相当脅していましたが、実際はそうならず、海外派遣先の国家と本当に人と人を通じた信頼関係を深め、今日に至っています。その第一陣は、大久保から派遣されました。

北大路機関:はるな くらま
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【くらま】日本DDH物語 《第二〇回》日本版ハリアー断念と仮想敵国ソ連のVTOL研究展開

2017-08-05 20:14:03 | 先端軍事テクノロジー
■T-1VTOL機研究機断念の影響
 T-1練習機改造V/STOL機研究機の断念は、続くべき次をすべて解消させました。

 T-1練習機改造V/STOL機研究機、研究用模型の写真などを見ますとT-1練習機がジェット練習機として高速飛行に対応する後退翼を採用しているのに対し、T-1練習機改造V/STOL機研究機はT-33練習機のような直線翼を採用する構造でした。これは、JR-100エンジンの左右噴出部を左右の主翼に配置、垂直離着陸時の安定を確保するものでしょう。

 JR-100エンジンはT-1練習機の胴体部分に配置し、練習機としての複座構造の内、操縦席一つをエンジン区画に転用し単座型とした構造を採用する計画でした。この構造では、ジェットの噴射により垂直離着陸は可能で、主翼を燃料タンクとして用いる事から先行するJR-100フライングテストベッドよりは飛行時間は長かったでしょうが、実用性は難しい。

 JR-100フライングテストベッドに続いて、中止されたT-1練習機改造V/STOL機研究機を完成させていたとしても、この機体に70mmロケット弾を搭載し支援戦闘機として運用するような、実用航空機へ展開する事は難しく、更に姿勢制御機構を研究し、その上で主翼からの整備上複雑過ぎる噴出機構に頼らない構造としなければ、実用機とはなり得ません。

 しかし、仮にT-1練習機改造V/STOL機研究機が完成していたならば、勿論その為に必要な費用を相当に掛けており事業評価上中断リスクが大きくなるという理由もありますけれども、実現性が高まる事で、用途模索は広範に行われるでしょう。この実例として、ソ連のYak-36試作垂直離着陸機がありました、試作機ですがこの完成が転換点となったのです。

 海上自衛隊がHSS-2対潜ヘリコプターの運用を通じ着実にその能力を最大限活かした戦術運用を研究する同時期、我が国が事実上の仮想敵国として対峙していたソ連海軍ではモスクワ級ヘリコプター巡洋艦の建造を進めていました。モスクワ級ヘリコプター巡洋艦は1950年代にアメリカ海軍が進めたポラリス原子力潜水艦への対抗策として要求されたもの。

 モスクワ級ヘリコプター巡洋艦は基準排水量14000tと大型巡洋艦で、艦橋構造物と煙突及びマスト部分を一体化し、船体前部にSUM-N-1対潜ミサイル及びSA-N-35対空ミサイルという強力な兵装を搭載し、船体中央部から後部に掛け、船体内部に航空機格納庫を配置し、その上部を全て飛行甲板とした設計で艦載機にヘリコプター14機を搭載していました。

 1967年に一番艦モスクワが竣工、二番艦レニングラードが翌1968年に就役しています。艦載機はソ連発の艦載機として開発されたカモフKa-25ホーモン対潜ヘリコプターで1961年にツシノ航空ショーにて初めて公開された機種でした。広大な飛行甲板には着艦支援用ネットが設置され、着艦と同時に船体動揺による横滑りを防止する構造となっています。

 モスクワ級ヘリコプター巡洋艦は当初10隻程度が建造される計画でした。ポラリス弾道ミサイルを搭載しソ連中枢部を狙うアメリカのポラリス原潜からソ連本土を防衛するにはそれだけの規模が必要だと考えられたのですが、モスクワ級ではYak-36試作垂直離着陸機の実験を行った際に、実用性と共に将来発展性に限界があるとして量産が断念されたのです。つまり、モスクワ級ではVTOL機が運用できない、として見限られた訳ですね。

 Yak-38VTOL攻撃機は、1971年にYak-36試作垂直離着陸機の技術的成果を以て開発されました。実用性では飛行時間が極端に短く、搭載量も限られ、短射程空対空ミサイル2発と機関砲を搭載する事しか出来ず、実用性は難色が付くものでしたが、Yak-36試作垂直離着陸機初公開から僅か4年後にYak-38VTOL攻撃機を完成させた程影響力があったのです。

北大路機関:はるな くらま
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平成二十九年度八月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2017.08.05/08.06)

2017-08-04 20:10:03 | 北大路機関 広報
■自衛隊関連行事
 八月に入り広島原爆慰霊の日が近づく中、台風五号も近づいていますが、皆様備えは大丈夫でしょうか、そんな中ではありますが今週末実施される自衛隊関連行事の紹介です。

 横須賀地方隊サマーフェスタ2017、明日土曜日に行われる海上自衛隊横須賀基地の一般公開行事で、横須賀基地は自衛艦隊司令部などが置かれる海上防衛の要衝です。艦艇一般公開が予定され体験航海はありません。公開艦艇は砕氷艦しらせ、試験艦あすか、が予定され、加えてヘリコプター地上展示と児童生徒対象特別機動船体験航海も予定されています。

 横須賀サマーフェスタといえば、当日抽選の体験航海や基地内を利用した救難飛行展示にアメリカ軍艦艇の一般公開が護衛艦一般公開と共に行われていましたが、これは過去の話で、一般公開が砕氷艦と試験艦のみというのは少々寂しい気もします。同日、第70回清水みなと祭が開催され、ちょっと遠いですが掛け持ち同日展開というのもどうでしょうか。

 佐世保地方隊サマーフェスタ2017第13回させぼシーサイドフェスティバル、土曜日と日曜日に行われる佐世保基地の一般公開で、会場は広く佐世保基地一杯を会場として用います。倉島岸壁での護衛艦さわぎり一般公開、三浦岸壁での護衛艦あきづき一般公開、新みなと岸壁での掃海艇たかしま一般公開、立神岸壁での電燈艦飾などが予定されています。ただ、台風接近により予定変更が予想されるとのこと。 

 第70回清水みなと祭。静岡市清水の行事で、護衛艦むらさめ一般公開、土曜日と日曜日に予定されています。ブルーインパルス飛行展示や浜松基地第1航空団T-4飛行展示と静浜基地第11飛行教育団T-7の飛行展示も実施されます。ブルーインパルス飛行展示は6日の1300時に実施が予定されており、台風が接近する中の快晴を期待したいところですね。

 第12施設群創設42周年記念岩見沢駐屯地祭、北海道岩見沢市の駐屯地で岩見沢駐屯地創設64年記念行事でもあります。第3施設団隷下の第12施設群が駐屯していまして、隷下に第335施設中隊と第336施設中隊と第337施設中隊を第398施設中隊及び第399施設中隊と第400施設中隊へ改編し、第302坑道中隊と共に全て岩見沢駐屯地に駐屯しています。

 出雲駐屯地サマーフェスタ、サマーフェスタですが訓練展示模擬戦も行われる。第13偵察隊と中部方面隊第4施設団隷下の第349施設中隊が駐屯しています。元々1999年までは第13特科連隊第1大隊と第13対戦車隊及び第13偵察隊に方面隊の第303地区施設隊が駐屯していましたが、第13師団が第13旅団へ改編され、偵察隊主体の駐屯地となりました。

 さて。撮影の話題として昨今考えさせられるのは、自衛隊がかなり忙しくなっている、という事でしょうか。特にこの季節が顕著です。端的に言うならば艦艇広報の規模が大幅に縮小されていまして、勿論航空自衛隊の戦闘機も緊急発進で忙しいのですが、十年前であればこれほど忙しくなかった、という事はこのWeblogアーカイブスの過去に全国で行われました多彩な艦艇と、盛況な行事から見て取れる事でしょう。

 海上自衛隊地方隊の展示訓練は今年も行われませんでした。昨年度は熊本地震災害派遣から部隊を休ませる必要があった為ですが、本年も展示訓練は行われていません、実任務での警戒監視任務が増大した為でしょう。当方は別として艦艇広報は学生や生徒に職場としての海上自衛隊を伝える重要なリクルートの場です、その縮小は実のところ深刻なもの。

 海上保安庁も羽田沖観閲式を沖縄警備強化の名目でここ数年中断しており、本年は巡視船の増強で余裕が生まれ規模を第三管区海上保安本部展示総合訓練として縮小した上で五年ぶりに実施へ漕ぎ着けました。忙しいという事は仕事の遣り甲斐にも繋がる一方、度を越せば労働災害へ繋がります。艦艇広報縮小はこうした懸念と焦燥を感じさせられるのです。

■駐屯地祭・基地祭・航空祭
・8月6日:第12施設群創設42周年記念岩見沢駐屯地祭…http://www.mod.go.jp/gsdf/nae/11d/jgsdf-post/images/iwamizawa/
・8月5日:横須賀地方隊サマーフェスタ2017…http://www.mod.go.jp/msdf/yokosuka/index.html
・8月4日5日6日:第70回清水みなと祭…http://www.minatokappore.jp/
・8月6日:出雲駐屯地サマーフェスタ…http://www.mod.go.jp/gsdf/mae/13b/izumo/index.html
・8月5日6日:佐世保地方隊サマーフェスタ2017…http://www.mod.go.jp/msdf/sasebo/index.html

■注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関
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第3次安倍第3次改造内閣発足と初閣議,防衛大臣に小野寺五典氏/外務大臣に河野太郎氏着任

2017-08-03 22:25:51 | 国際・政治
■外務・防衛大臣に防衛上の重責
 第3次安倍第3次改造内閣が今夕、発足しました。外交防衛上の重大問題が並ぶ中の内閣改造です。

 第3次安倍第3次改造内閣は副総理兼財務大臣に麻生太郎氏留任、総務大臣に野田聖子氏で女性活躍担当大臣も兼務、防衛大臣に小野寺五典氏、官房長官に菅義偉氏が留任、外務大臣に河野太郎氏、国土交通大臣に公明党石井啓一氏が留任、法務大臣に上川陽子氏、文部科学大臣に林芳正氏、厚生労働大臣に加藤勝信氏、農林水産大臣に齋藤健氏、経済産業大臣に世耕弘成氏が留任、と。

 環境大臣に中川雅治氏、復興大臣に吉野正芳氏が留任、国家公安委員長兼防災担当大臣に小此木八郎氏、沖縄北方担当大臣兼消費者担当大臣に江崎鉄磨氏、一億総活躍担当大臣に松山政司氏、経済再生担当大臣に茂木敏充氏、地方創生担当大臣兼行政改革担当大臣に梶山弘志氏、オリンピック・パラリンピック担当大臣に鈴木俊一氏、陣容は留任に再任と初入閣併せ以上の通り。

 防衛大臣に小野寺五典氏が再任されましたが、小野寺大臣には南スーダン日報問題により生じた防衛省自衛隊と政府国民との関係の再構築という重責があります。平和憲法の下、軍事力ではない実力という位置づけでの防衛省自衛隊という曖昧な立場の下、国連の集団安全保障任務への参加を行った我が国ですが、憲法明文程国際情勢は簡単ではありません。

 防衛という重責に対し、特に現在我が国は国際平和維持活動への参加を全面的に停止させていますが、日本という国家のポテンシャルを海外に示し、平和国家としての立場と国際安全保障への責任という姿勢を示すうえで、特にアフリカ地域での行動の終了は必ずしも最適解とは言い切れません、憲法という根本と難しい関係を強いられますが責任重大です。

 北朝鮮弾道ミサイル脅威、中国海洋進出と沖縄県への軍事圧力、防衛大臣としては南スーダン日報問題が世論への大きな影響力を持ちつつ、しかし展開次第では国民生命財産に直接脅威を及ぼすのは本土ミサイル攻撃と中国軍沖縄侵攻の懸念です。財政難下の限られた防衛予算にて過去の予算不足による装備の更新と必要な新装備調達、自衛隊は統合機動防衛力整備へ転換しており着実な防衛力整備が求められる。

 外務大臣に河野太郎氏、4年以上にわたる岸田外務大臣に代わり、日本の外交という重責を担います。しかし、北朝鮮問題、南西諸島日中問題、更に米ロ関係の緊張波及、フィリピン安全保障問題への協力、イギリスEU離脱問題に揺れる欧州各国との関係強化、中東地域の緊張、日韓慰安婦問題対日再交渉要求、こう列挙しただけでも諸問題は山積しており、外交に猶予はありません。

 前任の岸田外務大臣は今月1日、沖縄県の東シナ海のガス田開発をめぐって中国側が新たに移動式の掘削船を停船させて、何らかの作業を行っていることを確認したとして抗議しました。この海域では2008年に日中政府が一方的開発を行わない合意を行いましたが、中国側は現段階、沖縄と中国の日中排他的経済水域境界線中国側に限定し開発を進めている。

 岸田大臣は、極めて遺憾であり外交ルートを通じて直ちに抗議を行った、としています。朝鮮半島の緊張と共に忘れられがちですが、我が国安全保障上の脅威は二方面作戦を同時並行で求められています。朝鮮半島の核開発問題では中国の外交協力が不可欠ですが、その協力と並行し、我が国領域と資源への不当な圧力が加えられる事があってはなりません。

 第3次安倍第3次改造内閣は安倍総理自身が原点回帰を示し、内閣改造後の初閣議を既に終えました。安倍総理は国民不信への陳謝を掲げています。しかし、内政問題のミクロ視点のマクロ解釈という命題への対応は最低限の解決すべき命題であり、政権基盤を盤石なものとした上で、山積する外交上の問題と防衛上の脅威への施策を期待したいところです。

北大路機関:はるな くらま
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【京都幕間旅情】祇園祭二〇一七,後祭の宵山は京都市内の熱夜に浮かぶ山鉾の情景を愉しむ

2017-08-02 20:23:48 | 写真
■祇園祭後祭宵山情景紀行
 祇園祭後祭宵山情景紀行、熱波と湿気の不快さえも愉しむ夜の情景、一週間遅れとなりましたが紹介しましょう。

 祇園祭、山鉾巡行が先祭と後祭へと別れまして、一週間の中休みを置く構図となりましたが、賛否両論があるようです。賛否両論と云いますと当方の視点を示す事になりますが、ちょっと複雑です、やはり一度の山鉾巡行で全ての山鉾を見る事が出来た時代が懐かしい。

 宵山が先祭と後祭へ分かれていますので、多忙な時期と宵山が重なってしまった場合でも、一週間間を置くので先祭と後祭のどちらかを散策できる、という視点ではいいのかもしれません、しかし、半分づつ山鉾巡行というのでは迫力も半分づつになってしまうのですね。

 超広角レンズ、同行の友人で法理論とPC関連で幾度もお世話になっている友人が今回の撮影に投入していまして、ちょっと羨ましくなりました。CANONユーザーとしてはEF-M11-22mm F4-5.6 IS STMか一眼レフ用EF-S10-18mm F4.5-5.6 IS STMレンズ、世界観と表現力が一新するレンズが急に欲しくなります。

 熱い京の夜、暑いではなく熱いのです。厚いという理由もあるのかもしれません。京都盆地に滞留した真夏の加熱された湿気が辻道に更に積層して、ここに宵山へ集う熱気が厚く蒸気機関の内部のように高熱が蒸留される。散策と共にどんどん汗が流れ出てゆきました。

 山鉾巡行、先祭と後祭へ分ける事への賛成の意見では、従来の32もの山鉾が巡行する様子は四条通の観覧席で視ていますと、丸々半日、山鉾を見続けるということで疲れてしまう、という意見があったようです。実際、有料観覧席は後半になると空席が目立った、と。

 鱧や鰻を美味に頂くにはそれくらいの暑い山鉾巡行を熱く眺めてこそではないのか、と思うのですが、もしかして当方も五十年も経てば体力的に厳しい、と思うようになってしまうのか、そう十年前に思ったのですが、あれから十年、まだまだ体力は一日充分続きます。

 大船鉾は完成していますね、神功皇后が三韓征伐として百済に任那加羅と新羅、朝鮮半島を攻めた故事を描く山鉾です。鯉山は中国の故事に因み、山の険しい川を上る鯉は登竜門へと至り、山を乗り越える事で龍となる、その登竜門を越えた瞬間を再現した山鉾というもの、完成している。

 祇園祭山鉾巡行を〇〇一日、愉しむほど時間を捻出でき無かった時代には、半休で正午過ぎにちょっとだけ阪急へ飛ばし、半休に阪急という力技で阪急烏丸を烏丸御池まで一走りしたならば、山鉾巡行を正午過ぎでも少しだけ眺める事が出来たのですよ、祭りに浸れた。

 先祭と後祭へ分かれてしまいますと、これは当然ながら山鉾巡行の一回当たりの巡行の時間も短縮されてしまいますので、正午過ぎにタクシーを飛ばして地下鉄経由で御池通りに飛び込んでも、悲しいかなすべては文字通り後の祭り、先祭と後祭共に後の祭りなのです。

 京都三大祭であり、日本三大祭りである祇園祭、もちろん、祇園祭は山鉾巡行が一番の盛り上がりであると共に、祭事そのものは一か月間にわたり続くものなのですから、山鉾巡行以外にも、神幸祭や環幸祭の御輿熱気に浸るも祇園祭なのですが、やはり頂点がみたい。

 北観音山は1353年の創建という歴史を誇り、楊柳観音像と韋駄天立像を安置する山鉾です。南観音山、は善財童子が南を南へと53の聖者を訪ね菩薩道修業をした華厳経の説話を再現する楊柳観音像を報じた山鉾です。鉾建から数日間なのですが絢爛豪華とはこの事ですね。

 後祭宵山、しかし気付かされるのは鈴鹿山はじめ、かつての祇園祭ほど、また先祭ほど規模も大きくありませんので、一時間少々で全て廻れるところでしょうか、また、先祭と違い四条通交通規制も出店も出ず無茶苦茶な雑踏もないのです。先祭と後祭へ分ける是非、長い目で散策したいです。

北大路機関:はるな くらま
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