先回に引き続き、NHKのラジオのフランス語講座に関したことで記憶していることを書いてみよう。
ある年に南館先生という方が講座を担当されていた。
彼が言うにはcafe au laitと家庭ではいうが、カフェーではcafe au cremeというのだというのであった。30年以上このラジオ講座を聞いているのだが、これを他の講師の方からは注意されたことがなかった。
もちろん、cafe au laitといっても通じるから、cafe au cremeという語を知らなくても、カフェーでcafe au laitがでてこないというわけではない。
だが、営業上はcafe au cremeという。こういう細かい差異を知っていたからとどうってことはないのだが、南館先生の注意深さに感心をしたものである。
立花英裕(?お名前を失念してしまっている間違っていたなら失礼)先生の講座も丁寧で、聴いていたときは印象深かったのだが、残念ながらあまり頭に残っていないのは講師の立花先生には申し訳ないことである。
石井先生からは語末のmはnと同じ発音をすることが多いと教わった。それは石井先生の長年の教育経験に根ざしたものであったろう。
例をあげれば、「おなかがすいた」というのにJ'ai faim.というが、これをカタカナで表すと、ジェファンであって、ファムではない。これは私も石井先生のご指摘まで同じ間違いをしていたと思う。
フランス語ではaiは単独では、エと発音するが、faimではaiは単独ではなく、aimまたはainと続いている。だから発音が少し違って来る。
ところで、aiをエと発音しないのは例外的な場合だとは毎年聞くことである。faireの変化で1人称複数の「私たちは ~する」 のnous faisonをヌーフゾンと発音して、ヌーフェゾンとは発音しないことも毎年の講座で注意される。
ところで、石井先生は大学時代に作家の大江健三郎氏と東大のフランス語科の同級生であった。その年のフランス語のテクストに大江氏のエッセイが載ったと記憶している。そこには大江さんが学究の道を諦めて作家となった理由も述べられていたように思う。
しかし、私の知っているドイツ人の外交官で、ドイツのフンボルト財団の事務局長をされた、オーステンさんが大江さんにインタビューしたときにはフランス語で話をされたとオーステンさんご自身に伺ったので、大江さんのフランス語の実力は間違いがないだろう。