前にも書いたことがあるが、私が特に関心をもってその著書を集めている方々に遠山啓と武谷三男がいる。
この二人は日本の社会に与えた影響はそれぞれ大きいはずだが、「日本の古本屋」というインターネットの古本市では最近になって違いが出ている。
遠山は数学者としては途中で数学教育の方へ専念するようになったので、学者としては自分の生きたいようには生きられなかったと思われる。
もちろん、遠山は社会的には大きな影響を数学教育を通じて与えた。その広がりはかなり大きい。
日本の古本屋にも彼の著書はかなりまだ出されている。もちろん、これは彼自身の著書以外に彼が推薦の言葉を書いた書まであるから、かなりの数にのぼっている。また、最近でも彼の書いた数学の本は文庫とかでも新しく出されている。
一方の武谷は数年前までは遠山と比べてそれほどの差はなかったが、ここ一年くらいで武谷の著書の古本がだんだんと少なくなりつつある。
もちろん、彼の代表著作である、「弁証法の緒問題」の新装版が勁草書房から2010年に出されたり、彼の編著である、「原子力発電」(岩波新書)が東日本震災後に原発事故のせいで、再版されたりはしているが、やはり衰退の感じがする。
私個人は武谷の研究者の一人であるのだが、そういう違いがあると感じている。これはどうしてなのだろうか。こういう問題意識を密かにもっている。