妻の知人が村上春樹の小説を数冊貸してくれた。だが、妻は「ねじまき鳥クロニクル」という小説がなかなか読み進めないという。
ところが昨日 N 市に親戚の葬儀に出かけたが、その K M さんのご両親は戦争終了時に満州の牡丹江というところで、すくなくとも父親は亡くなったということがわかっている。そういう話を葬儀で聞いた妻はたったそれだけのことで読み続ける動機づけができたという。
満州がどうのこうとか主人公が井戸の中にこもるとかいう話でうんざりしていたらしいが、牡丹江で KM さんの両親が亡くなったらしいという話で、いろいろ仮想的な話だったのが、そうではなくて、現実味を帯びた話になったという。
作家はちょっとした知識から、想像を膨らましたり、人の心理を推し量ったりするので、いろいろと話を拡張できるが、普通の私たちにはそのリアリティが乏しいと感じると退屈になる。ところが、知っている人がそれらのことに関係があるかもしれないとなるとがぜん関心がわいてくる。
いつも、温厚でゆったりした人柄の KM さんだったが、そういった悲しい過去があったということに気がついた。そういったことを KM さんが自分で話すことはほとんどなかったが、それでもやはり親戚だから、少しは漏れ伺っていた。