村上雅人『なるほど熱力学』(海鳴社)を昨日の日曜から読み始めた。妻がいつもののように知人にコンサートに誘われて行き、日中いなかったので、どんどん読んで行った。だが、まだ半分くらいしか読んでいない。
だが、この本はカルノーサイクルのことを終わりの方の章に書いてあるので、するすると読める。いままで熱力学がわかり難いと思っていたのが信じられないような感じのする本である。
この本はGibbsの自由エネルギー G を中心にして熱力学を展開しており、今まであまり見たことがなかったような本である。熱力学関数としてはGibbsの自由エネルギーG とかエンタルピー H とかもちろんエントロピー S とかは出てくる。あまり出てこないのはHelmholtzの自由エネルギー F である。これは付録に説明が出てくるだけである。
村上さんは東京大学の金属工学科の出身であるので、多分金属工学科の出身の方ならよくご存じの化学反応とかの関連の話が多い。なかなかこういう種類の話は私には苦手なのだが、いまのところあまり理解につまるところはない。
『なるほど熱力学』はひょっとしたら、いやひょっとしなくても熱力学についての名著に入るのではなかろうかと思っている。
しかし、束縛エネルギーについてもう少し砕いた説明がほしいという気がしないでもない。昔ほど束縛エネルギーに対してアレルギーはもってはいないけれども。
大学に在職中に M さんという金属工学科で物理化学の講義をしていた先生の大学院のセミナーに参加したことがあったが、そのときの聞いた知識とか考え方と村上さんの書いているところと似た感じがしている。この M さんの講義に出た後でだったと思うが、Legendre変換についてのエッセイを書いたことを思い出した。
このセミナーに出たときに「自然な変数」という用語を知ったと思う。
Gibbsの自由エネルギー G なら、圧力 p と絶対温度 T が自然な変数であり、エンタルピー H なら、自然な変数はエントロピー S と圧力 p である。Helmholtzの自由エネルネルギー F なら、それは体積 V と絶対温度 T である。内部エネルギー U ではもちろん自然な変数はエントロピー S と体積 V である。
Gibbsの自由エネルギー G が有用なのは大気圧で実験を行うことが多いので、圧力と温度を変数とすることが便利だからである。