『ヴィジュアル複素解析』(培風館)の序文の冒頭につぎの引用文があった。
よくわかっていることがらに関して、異なる物理的な考え方によって記述されている理論がいくつかあったとしよう。これらの理論は、帰結される予測全体からみれば同等になっているので、理論としては科学的に区別できないことになるであろう。しかし、まだよくわかっていない領域に踏み込んでいくときは、それらの理論は心理的には同じとはいえない。なぜなら、視点が異なれば、異なる種類の変更を思いつかせることになるからである。したがって、まだよくわかっていないことがらを理解しようと試みるときは、異なる視点は、導き出される仮説からみれば、同等ではない。R. P. Feynman (1966)
とあった。これほど徹底した観点からではないが、私もいくつかの違った理解をしようとしてきた。
この序文の冒頭の文章はたぶんに『ヴィジュアル複素解析』の著者が立とうとしていた立脚点であるのだろう。
ところで、この文章の出典はFeynmanのノーベル賞受賞講演にあるという。その訳は江沢洋 訳『物理学はいかにして発見されたか』(岩波現代文庫)に出ている。