フランス語を大学で学んだのは半年のことにすぎなかった。
しかし、そのときの N 教授の顔をいまでも思い出すことができる。彼は始めの講義でいつでも一つのフランスの詩を朗誦するので有名だった。
それはVerlaineの「秋の歌」Chanson d'automne だった。
その詩全体はあまり長いものではないが、その冒頭の箇所をだけあげておく。
Les sanglots longs 秋の日の
Des violons ヴァィオリンの
De l'automne ながいすすり泣きに
Blessent mon coeur こころ傷み
D'une langueur 単調な
Monotone. もの悲しさを誘われる
(岩波文庫『フランス名詩選』より)