科学や工学の分野において、三角方程式を解いたことがないと思っていた。
いつだったか、「arcsin x+arccos x=\pi /2を理解する」というタイトルのエッセイの旧稿を改訂したときに、三角方程式を解く羽目になったと記憶する。もちろん、これはarcsin x+arccos x=\pi /2を理解する方法のたった一つにしかすぎない。
それ以外に高校で数学の三角方程式の問題を解いたことがあるが、それだけかなと思い、よく考えてみた。そうしたら、三角方程式を解くことにあたるのかどうかはわからないが、tan \delta =・・・とかを解いて\delta を求めるというようなことを研究の一部として、していたことを思い出した。
やはりこれも大きな意味では三角方程式を解くことにあたっているのではなかろうか。これは量子力学の散乱問題でphase shift \delta が決まれば、散乱の断面積が決まるといった問題である。大学院のころにしていたのは、それからphase shiftを求めることである。そればかりをやっていた。
やさしい問題なら、解析的に解けることもあるが、そういう場合はほとんどまれである。だから、ポテンシャルが与えられたときに、そのphase shiftの数値を決定することはそれほど簡単なことではない。
プログラム言語Fortranにはそれで二つだったか、arc tanの値を求めるサブルーチン・ライブラリーがあったと思う。それらがどう用途が違うのかは先輩から聞かされていたが、いまっちょっと思い出せない。そして、そのことをいつか数学エッセイとして書こうと思っていたが、そのままになっていたことも思い出した。
三角関数の話題を実際的な観点から書いてみたいと思っているためである。そのときに、三角方程式をどういう場面で解くことがあるのかなと思った。
しかし、私の経験はかなり特殊な経験であったのかもしれない。