松岡正剛さんが読まれた本の書評をしたものであるが、松岡さんくらいの方となるとその蘊蓄がすごいし、文章もすばらしい。やはりこれでは私たち普通の人間にはまったく太刀打ちができない感じである。
人とのつきあいにしても世の中のすばらしい人とのつきあいがあるようであり、これも私たち凡人にはできない。
これは数日前になにかの折に松岡さんの数冊の本の書評を読んだだけだが、まさに世の賢者とはこういう人のことを言うのかとそれらを読みながら、ため息がでた。
書かれた文章は別に気取っているわけでもないし、なんでもないのだろうが、まったく凡人にはおよびもつかない。
その書評の中でほんとかどうか知らないが、知ったことは「思想の科学」研究会の初期の時代にそのリーダーは物理学者の渡辺慧であったという指摘である。これが本当かどうかは知らない。
鶴見俊輔さんの回想とかではそれほど渡辺慧さんの話が出てくるようではなかったが、実際はどうだったのだろう。それはともかくとして、「時間」の研究者としての特異性が渡辺慧さんにはあった。
私などもE大学工学部で原子力の講義をしていたときには渡辺さんの本『時間の歴史』(東京図書)をうまく要約して、特殊相対性理論の講義ノートをつくったりしたこともある(小著『数学散歩』(国土社)所収、これは品切れ)。
これは有名な質量とエネルギーの等価性を表す式 E=mc^[2} を導かないで原子力の講義はできないだろうと愚考したからであった。