『日本語からはじめる科学・技術論文の書き方』という本の紹介が物理学会誌の8月号であった。
著者は石黒鎮雄氏である。とはいっても「石黒さんて誰?」となるのが普通であろう。
昨年だったか一昨年だったかにノーベル文学賞を受けたカズオ・イシグロさんのお父さんといえば、だれでもああと思うだろう。
カズオ・イシグロさんのお父さんが科学者であることは知っていたが、どんな人かは知らなかった。海洋物理学者であるという。長年イギリスで研究をして、カズオさんもイギリス人となった。
この書は丸善から1994年に出版されていたというが、いまでは絶版らしい。それで古本で入手可能かと探したが、「日本の古本屋」でも在庫していない。
E大学のOPACにはあると出たが、研究室の図書となっているので、借りるのが面倒である。
この本は英語に直す前に日本語を直すべきだとか書いてあるようである。
こういう考えの人は少なからずいて、作家の小田実さんは作家活動の傍らで予備校の英語の先生をしていたが、彼は英作文の時間を受け持っていた。
英語に日本文を直す前にはその授業時間の大部分を英語に直しやすい日本語文にするということにかなりの時間を使ったとは彼のエッセイで読んだことがある。
(2024.12.5付記) どなたかがこのブログにアクセスされていたので、読み返した。1957年ころだが旺文社のラジオ受験講座を聞いていたが、その中で海江田進先生という東京外国語大学の英語の先生が和文英訳の講義を担当されていた。
この海江田先生が英訳する日本文があったときにそれを英語に訳しやすい日本文に直してから、それを英語に直すという指導法だった。そのときはじめてそういう指導法というか、やり方を知った。
小田実さんの予備校での指導法だって彼の独創ではなかったかもしれない。どこで小田さんがやさしい日本語に直してからそれを英語に直すという方法を学んだのかはいまではわからない。独自に思いついたのかもしれないが、むしろどこかで学んだという風に想像している。
私の場合には海江田進先生の指導法に感銘を受けた。