摂動論といえば、天体力学を専門にしている者でなければ、たぶん量子力学の摂動論であろう。
ここに述べたいのももちろん量子力学での摂動論である。2005年に逝去された私の先生の量子力学の講義ノートを編纂しているのだが、この摂動論でわからないことがあった。
そこが分らないということで編纂の手が停まってしまい、1年以上が過ぎてしまった。しかし、あまりに義理がわるいので、さすがに鈍感な私でも気になり始めた。
それで昨年末から少しづつ作業を再開したのだが、やはりここが依然としてわからなかった。それでいくつかの本を参照したのだが、説明がある本でもなかなかわからない。それに本によってはそこの説明がないのもある。
いろいろ探しているうちに『大学演習 量子力学』(裳華房)の摂動論のところを見たら、詳しい説明が例題3に出ていた。これほどきちんとした説明を見たことがなかった。
だれか頭のいい人に聞いてみようかと思いながら、そのままになっていた。
量子力学の標準的なテクストであるシッフの本にも問題点の説明があるのだが、私には納得ができなかった。
もっとも上に挙げた『大学演習 量子力学』(裳華房)の摂動論の箇所を前に読んだことがあるらしく、赤で下線が引かれていた。もっともそこにはわかったときにつける青鉛筆で丸がついていた。この丸の印はその後読み返してわかったということの印である。
だから、この私のもっていた問題点はすでに一度は解決したことに入っていたのだろう。しかし、このことはまったく記憶に残っていなかった。
今回ようやくこの長年の問題点が解決したわけである。いつか「数学・物理通信」にこのことを書いておきたいと思っている。