セガが何の会社かもあまりよくわからないが、この会社の開発技術部の指導者だと思われる方のつくられたセガの「線形代数講座」の資料がとてもいい。
私はこれを先日ダウンロードしていたのだが、いそがしかったので読む機会がなかった。昨日、意を決してプリントして読んでみた。
十分詳しくよんでいるわけではないが、私がある意味で得意としているLevi-Civitaの記号についても普通とはちがった説明がされている。もちろん、結果的には私の理解とも重なるのだが。これは私が小著『数学散歩』とか『物理数学散歩』(どちらも国土社)で述べた一般化されたKroneckerのデルタ記号に帰着する。
その辺を私の説明とは違った文脈でされているのは、あまり他では見たことがなかった。数学のよくできる人がいるものだといまさらながらに感心してしまった。
いま『四元数の発見』を英訳して出版したいと思って自分の書の中で意に満たなかった箇所を書き換えていた。先日その作業が終わったのだが、このセガの「線形代数講座」を見てもう一度再検討をした方がいいかと考えている。
私はあまり行列の固有値とかのことは詳しくないので、主に空間回転のことに関心がある。これについてもかなり突っ込んだ議論がされているように思われる。
一つだけ気になった言葉遣いだが、「スカラー積」という語がある。普通の線形代数の本では「スカラー倍」と表現されている語だが、ベクトルの内積のことをスカラー積ともいうので、この語は使うときに要注意である。ちなみにこの講座では普通の「スカラー積」の代わりに「内積」という用語を使われている。
数学者の遠山啓さんはこの語としては「スカラー乗法」としているようだ。私もスカラー倍という用語は好まないので、最近はスカラー乗法を用いている(注)。
(注)普通に線形代数の本で使われている、スカラー倍を使いたくない理由は実はある。これは遠山啓さんの所属した数学教育協議会での量の理論と関係がある。一言で説明できるのかもしれないが、いまは私にはすぐに説明する言葉がない。