衆院本会議は2011年7月20日(水)、平成23年度第2次補正予算(案)を採決しました。民主党、自民党、公明党、社民党、みんなの党が賛成し、日本共産党が反対しました。みんなの党が予算委で組みかえ動議(予算を撤回のうえ編成替えを(政府に)求める動議)を提出しましたが、同党だけの賛成にとどまり否決されました。なお、自民党が「17兆円規模」の組みかえ動議を提出するという報道がありましたが、自民党は動議を提出しませんでした。
また、2次補正予算関連法案の2本も可決しました。
衆院財務金融委員会と同災害対策特別委員会がきょう午後、審議した「平成22年度の決算剰余金の処理の(財政法6条の)特例に関する法案」(177閣87号)と「被災者生活再建支援金の補助率のかさ上げ法案」(177閣86号)で、それぞれ、賛成多数と全会一致で本会議で可決し、参院に送られました。
2次補正の審議で3つのことが明らかになったと考えます。1つは19日の基本的質疑の自民党のトップバッターだった、小池百合子さんが指摘した、消防団員の殉職者への補償金の財源となる共済が底をついているのに、2次補正で手当てされていないと言うこと。もう1つは、一般会計で1兆9988億円の増額補正(その他に原子力賠償機構=仮称=にあげる交付国債2兆円)でありながら、予備費の積み増しが8000億円で、これに関して、「財政民主主義に反するおそれがある」「政府が被災状況を把握できていない証拠だ」という批判が各党から出ました。
そして、もう一つは19日の基本的質疑で自民党の茂木敏充さん、20日のしめくくり総括質疑で齋藤健さんが指摘した、環境省の災害廃棄物(がれき)の自治体の処理事業に要する経費の一部補助事業について。これは当初予算が763億円だったのが、1次補正後3595億円になり、2次補正では措置されていません。しかし、茂木さんによると、すでに5000億円以上の概算払い請求が自治体から環境省に寄せられているそうですが、現時点では、5000万円しか支払っていないという話です。これでは進捗率は0・1%以下という、驚くべき仕事の遅れです。
これについて改めて、当初予算からの3つの予算書の環境省所管事業をみると、驚くことがありました。環境省全体の予算は当初では1955億円で、1次補正で一気に5641億円に膨れています。そして2次補正では、環境省は何も補正されていません。現時点で、当初予算の2・9倍となった平成23年度の環境省ですが、茂木さんの話からすると、すでに当初比3・5倍以上の予算が必要な状況になっています。おそらく各自治体が業者に立て替えて払ったり、業者への支払いを猶予している状態だと考えます。おそらく業者の選定では、入札している時間的余裕が無く、随意契約だと思います。もしも、業者が震災で足元を見ていたら、トンでもないことですが、契約した以上は払わなければいけません。足元を見た業者は別のところで、天罰があたるでしょう。
廃棄物行政は元々厚生省の仕事で、環境庁の仕事ではありませんでしたが、橋本行革で、環境省に移管されています。
まず、橋本行革が、大震災による災害廃棄物の大量発生を想定していなかった可能性があると思います。それと、環境省は、自治体に「交付」する事務に慣れていないのではないでしょうか。「廃棄物・リサイクル対策の推進に必要な経費」という予算コードは「自治体が行う災害廃棄物処理事業に要する経費の一部補助」の事業だ、と予算書に書いてあります。ですから、環境省が自ら手がけるものではないようです。がれき処理の遅れに対応して、自民党の小里泰弘衆院議員や公明党などが議員立法で「東日本大震災で生じた災害廃棄物(がれき)の処理の特別措置法」(177国会衆法19号)を提出しました。この法案を見ましたが、これも「国による代行ができる」としているだけで、環境省から移管するという考えはないようです。もちろん現在進行形ですから、担当府省を変えるべきではありません。しかし、毎年度の予算額の2・9倍が手当てされているものの、予算規模が3・5倍以上になるのは確実な情勢なのに、2次補正ではまったく盛り込まれていない。これは環境省も混乱しているだろうし、官僚統治機構の総称として「霞が関」の力が落ちてきているような感じがします。辞任した松本龍・環境大臣(兼)防災担当大臣もストレスがたまっていたでしょう。
このほか、農水省が担当する「海のがれき」の処理事業についても、2次補正に入っていないことが、日本共産党の塩川鉄也さんの質問に対する鹿野道彦農相の答弁で分かりました。また、鉄道の再建事業についても、大畠章宏・国土交通相が「3次補正に先送りする」と茂木敏充さんの19日の質問に答えました。これも、法律と現実がちぐはぐしています。公共交通機関である以上、事業主がJR東日本でも、第三セクターの三陸鉄道という相対的に小さい企業体であっても、国の補助率が違うというのは、違和感を感じます。鉄道利用者にとって、企業体が大きいか、小さいかは関係ない話です。私は、むしろ、国の補助率100%で全額を建設国債でまかなっても、鉄道再建は復興のスタートになると考えます。
どうにも、霞が関の力が落ちてきているような気がします。
これとは別に、20日の基本的質疑の中で、みんなの党幹事長の江田憲司さんが、首相官邸の内閣参事官室(内閣総務官室に改称)に通産省から出向していた頃、海部俊樹首相からすべての閣僚を罷免して、衆議院を解散することができるかどうか調べるよう指示されたことがあり、その結果「できる」と報告したことがあると明かしました。これについて、『政治とカネ 海部俊樹回顧録』の150ページには、1991年9月30日に、金丸信・自民党副総裁と竹下登元首相に解散の了解をとり、「閣僚を罷免して解散する方法を衆議院事務局に問い合わせることもした」と書いています。これは、官邸内の内閣参事官室を通じて、詔書が来たときの、本会議の開催について、衆議院事務局に問い合わせたという意味合いだと思われ、江田さんの発言を裏付けているといえそうです。
きょうは衆議院第1委員室が珍しく、2つの委員会に使われました。午前9時~午後0時半まで衆院予算委員会、そして午後5時~午後8時ごろまで、衆院東日本大震災復興特別委員会です。復興特では、参院を通過した、参院自民党・公明党・みんなの党・新党改革・たちあがれ日本の野党5党提出の「原子力災害被害の(東京電力ではなく)国による仮払い法案」(177参法9号)が議題となり、参議院の佐藤正久さんが趣旨説明をしました。前回のねじれ国会では、参院で可決し衆院に送られた「郵政民営化一時凍結法案」(自見庄三郎さんら国民新党・民主党共同提出)が衆院で、ナント1年間も委員会に付託されなかったことがあります。しかし、今回のねじれ国会では、参法が衆院で審議入りし、実務者による修正協議が行われます。国会の力は少しだけ、パワーアップしてきました。しかし夏休みの宿題がたまって、午後8時までやっているわけですが、それは国民全員の責任でもありますから、与野党どこをとがめても、どうにもなりません。メリハリをつけてスピードアップした国会審議を願います。
なお、177国会としては3度目の予算審議となりますが、本会議では民主党からは賛成討論は立ちませんでした。委員会での賛成討論には、“ベテラン1年生”の金森正さん(東海ブロック比例単独)が起用されました。自民党は小泉進次郎さんでした。組みかえ動議と政府原案の討論(賛成)ではみんなの党国対委員長の山内康一さんがしゃべりましたが、予算の2兆円弱について「しょぼい」「しょぼい」と述べたのは、いかがなものかと。予算関連法案は、衆院本会議も迫っており、ミスが許されないところです。衆財金委の「決算剰余金繰り入れ法案」では、民主党は今井雅人さん(岐阜4区比例)が起用されました。災害特の「被災者生活再建支援金の補助率のかさ上げ法案」には、小山展弘さん(静岡3区)が起用されました。小山さんは先週7月13日(水)の衆財金委での一般質疑でも質問に立っています。延長国会になって、とてもめまぐるしい状態になっているので、実力のある人が起用される「正念場」になっています。暑いですが、国会への関心を一日5分でも持つようにしていただきたいと思います。
[画像]中野寛成・国家公安委員長、2011年7月20日、衆院予算委、衆議院インターネット審議中継から。
【2011年7月20日(水) 衆院予算委員会 第2次補正予算案 しめくくり質疑】
2次補正審議は、衆院予算委でしめくくり質疑に入っています。
公明党理事の富田茂之さんは、大震災によるご遺体について、安藤隆春・警察庁長官(次官級)が現地を視察した際に、地元の方から「最後の一人まで捜索してください」と言われたことを紹介しました。安藤長官の上司にあたる、中野寛成・国家公安委員長に「阪神・淡路大震災では、(災害発生の1月17日から)54日後に、最後の(行方不明の)ご遺体が発見された」として、「どのような姿勢で臨むのか、また財政は大丈夫か」と富田さんは質問しました。
中野さんは答弁で「たいへん厳しい状況ですが、最後のご遺体まで捜索したい」と述べました。そして、昨日の捜索結果として、「7人のご遺体を発見しました」とし、そのうち、6遺体は海上を浮遊していたものを収容し、1遺体は海岸に打ち上げられていたものだと説明しました。そのうえで「警察はあまり重機を持っていないので、手作業で“思い出の品物”を探している」として、「今後ともあきらめることなく、全力を尽くす」と語りました。そのうえで、「予算面については、1次補正で9月までは確保していただいている」とし、その後も、予備費や3次補正などで予算を確保したい考えを示しました。
菅内閣の対応が遅いという批判があるのは当然です。しかし、阪神のときとは、様々な違いがあることを意識しながら、ステップを踏んでいかなければなりません。「3・11」の本質から外れないようにすれば、国政に関する議論からイライラを排することができるのではないでしょうか。
富田さんは、警察庁の資料を引用するかっこうで、「ここ20日間で2000体を発見している」と評価しました。47都道府県から派遣されている警察官のみなさんは、「なでしこジャパン」のように輝かしい冠はありませんが、公僕の鑑です。ずっと、各警察本部の後輩たちに語り継がれると思います。
第2次補正予算(案)の審議は、日程上は滞りなく進んでいます。