[写真]林芳正シャドウ財務大臣と、菅直人首相
[2011年7月21日(木)22日(金) 参院予算委員会 第2次補正予算案]
「どっちもどっち」という言葉は好きではありません。広辞苑によると、「どっちもどっち」は「双方とも大した違いはなく、どちらも良くない」という意味です。日々のくらしのなかで、何か判断すべき機会に、白黒ハッキリ付けてこなかったから、そのとき権力を持っている方(自民党など)が増長してしまい、結果として原発が爆発しました。
「金権腐敗の自民党」か、はたまた「マルクスレーニン主義の社会党」かーーその二者択一はまさに「どっちもどっち」。とはいえ、私たちは1996年の総選挙から、政権担当能力がある2つの政党(新進党 vs 自民党)の選択肢を得ながら、13年間も「新しい自民党(小泉自民党)」に投票してしまいました。その間に、新進党は解党し、閣僚経験者が次々と引退したり、この世を去ったりして、政権担当能力を損ねてしまいました。いわゆる「小沢信者」はその自己正当化をしている痛々しい人に思えます。
2011年7月21日(木)の参院予算委員会の第2次補正予算(案)の質疑のトップバッターは、林芳正シャドウ財務大臣(山口)でした。林大臣は、防衛相、経財相を経験していますが、傾聴に値するさすがは、フロントベンチ(政権党とバックアップ政党の2つの政党)の中央(谷垣禎一シャドウ首相=京都6区=の隣り)に座っている人物だと感じました。
林さんが徹底的に調べたことで、驚くべき事実が明らかになりました。
ご存じの通り、1次補正審議中の4月29日(金・祝日)の3党政調会長合意で、特例公債法案(平成23年度の赤字国債発行法案)の成立に前進したように思えましたが、今年度予算が3分の1近く執行した現在でも成立しておらず、財務省は国庫短期証券(むかしの蔵券)で自転車操業しています。
これについて、林さんによると、菅直人首相(東京18区)が6月14日(火)に「総理指示」を出して、「2次補正(予算案)は本格的な復興予算に先行して編成する」としました。これについて、林さんは「財務大臣の野田佳彦さん(千葉4区)や、政調会長大臣の玄葉光一郎さん(福島3区)に事前に相談したのか?」とただし、菅さんは苦しい答弁。事実上、菅さんの独断だった可能性が高まりました。林さんは、玄葉さんをおもんばかり、「総理ねえ、それで、3党合意をしていた玄葉さんの立場が、(石破茂さん=鳥取1区、石井啓一さん=北関東ブロックとの民自公政調会長の間で)悪くなったんですよ」と指摘し、「3党政調会長合意は破られたと私は思っている」と辛辣なパンチがきました。私はこの「6月14日の総理指示」の話を知らなかったので、驚きました。
この後、自民党の山谷えり子さん(全国比例)が登場。在日韓国人献金問題の領収書を提出するように求めました。これは3月11日(金)の参・決算委員会で菅さんが追及されたのですが、委員会中の東日本大震災発生で、うやむやになりました。そして、延長国会が参院で正常化した7月7日(木)の参・予算委の集中審議で、自民党理事の礒崎陽輔さん(大分)の質問に対して、菅さんは「3月14日(月)に現金で返金し、弁護士が領収書を受け取っている」としました。ここで、礒崎理事が「領収書を提出するよう、参・予・理事会で協議したい」として、前田武志・予算委員長(民主党、全国比例)も認めました。この後、礒崎さんは「信頼できる筋からの情報」として、「報道で事件が発覚する前日の3月10日(木)に神奈川県の保土ヶ谷パーキングエリアで返金したという情報がある」としました。ですから、“3月10日情報”が正しければ、菅さんが虚偽答弁をした可能性があり、参院自民党は攻撃を強めています。
これに対して、菅さんは21日の答弁で、「領収書は、(返金処理を反映した平成23年の草志会の政治資金収支報告書の提出=来年3月めど=のために必要だ」、「領収書の提出に関して、これが先例となる可能性があるので、慎重にしたい」として、提出を拒みました。領収書の提出に関しては、参・予・理事会での協議で決定していて、森ゆう子・与党側筆頭理事(新潟)が菅総理に伝えていた、と報じられています。
そのため、審議はストップし、委員会を中継して、理事懇談会に入ってしまいました。この混乱で、当時は参院自民党と民主党の基本的質疑だけで終わってしまい、翌日に公明党、みんなの党、日本共産党、たちあがれ日本(新党改革と統一会派)、社民党の質問がずれ込みました。ここで散会してしまい、しめくくり質疑、討論、委員会採決、財金委・復興特での2つの予算関連法案の趣旨説明→審議→採決、本会議での委員長報告、討論、採決がすべて、週をまたぐ結果となりました。現時点では、あす25日(月)の午後4時半~午後5時過ぎには成立するのではないかと思われます。
このように2次補正の成立が3日以上遅れてしまいました。もちろん、原賠スキームは法案が間に合いませんが、被災者生活再建支援金の国庫補助率かさ上げは3日遅れたといっていいでしょう。「政治とカネ」を人質にとった参院自民党のせいだ、と言いたいところですが、菅さんの答弁にも誠意が無く、また他の閣僚に答弁にもキレがありませんでした。
まさに「どっちもどっち」です。
たちあがれ日本の初代総務大臣、片山虎之助さん(比例)が、補正額2兆円のうち、予備費が0・8兆円を占めることについて、「3次補正で予備費の組み替えで財源をつくるつもりではないか?」と問い、財務相の野田さんは「ない」と断言しました。片山さんが「国会をバカにしないで欲しい」というと、野田さんは「日本国憲法第87条に基づき、事後に承諾を得る」と堂々としていました。
公明党の渡辺孝男さん(比例)は、22日の質疑で、「質問通告していないが・・・」として、前日の記者会見での民主党幹事長の岡田克也さん(三重3区)の発言に触れ、「09マニフェストについて、岡田幹事長が“国民にお詫びしたい”と述べたのは評価したい。総理も謝罪しますか?」と問い、菅さんは「09マニフェストは党の方で検証している。岡田幹事長から、一定の方向性が示された。岡田さんの言うとおり、歳入面で不足があり、歳出面でのマニフェスト実行が不可能になった面もある。実現した施策も多いが。岡田幹事長と私は考え方は一致している」と述べました。公明党学生局長の石川博崇さん(大阪)も初めて、TV入り質疑に立ちました。
ただ、この2次補正は「遅すぎ、小さすぎ」と言われますが、ここまでの予算の執行で目詰まりや滞りがあることが分かりました。予算は組んで終わり、成立して終わりだけでなく、執行までしっかり見届けないといけません。その点では総務省管区行政評価局が「地方年金第三者委員会」の兼務を終えますので、すべて、会計検査院の出先機関に衣替えし、年度初めから、検査院がチェックできるように制度改正すべきでしょう。
明治憲法は、イギリスの「三読会」システムを取り入れ、本会議中心主義だったので、1日の議事日程が30本ぐらいあることもざらでした。現在は多くても7本、会期末の参院でも15本以内でしょう。その後、日本国憲法で、アメリカの「委員会中心主義」のシステムが入りました。これにより、本会議の審議とは異なり、委員会には審議および調査の権限が加わりました。来週辺りにもいろいろな常任委員会、特別委員会が委員派遣をして、さまざまな「調査」をするようですが、視察し、陳情を聞くだけでなく、2次補正後の予算書がちゃんと執行されているかをチェックするという観点から現地を見て、帰京後に計数を調べたり、衆参スタッフや役所に確かめるという作業も必要でしょう。「3次補正で国が手当てしろ、来年度当初で予算を付けろ」ばかりでやっていくと、日本の終わりは近いです。