[画像]エネルギー白書2010
【衆院本会議 2011年7月14日(木)】
再生可能エネルギー(自然エネルギー)の全量固定価格買い取り法案(177閣法51号)が14日の衆院本会議での趣旨説明と代表質問でやっと審議入りしました。
これに先立つ、13日午後6時、菅直人首相が記者会見し、3・11以後の「稀な体験」をした総理大臣として、「3月11日のこの大きな原子力事故を私自身体験をする中で、そのリスクの大きさ」「これまで考えていた安全確保という考え方だけではもはや律することができない。そうした技術であるということを痛感をいたしました」「そういった中で、私としてはこれからの日本の原子力政策として、原発に依存しない社会を目指すべきと考えるに至りました。つまり計画的、段階的に原発依存度を下げ、将来は原発がなくてもきちんとやっていける社会を実現していく。これがこれから我が国が目指すべき方向だと、このように考えるに至りました」と語りました。
衆院本会議で、公明党の稲津久さんは「公明党は与党時代に固定価格買い取り法を成立・施行させた」として、「(全量買い取り)法案は、公明党の構築した制度を拡充させたものだ」との認識を示しました。これにより、自民党の申し出による修正協議はあるかもしれませんが、衆参とも、過半数の賛成が見通され、今国会中に衆参で採決まで行けば、成立することがほぼ間違いなくなりました。
3月11日午前に閣議決定されながら、審議入りが4ヶ月後の延長国会になりました。しかし、怪我の功名とはよく言ったもので、いろいろなことが見えてきました。
きょうの代表質問でも、経済産業大臣の海江田万里さんが「電力多消費産業の省エネ設備投資と研究に配慮する」、国土交通大臣の大畠章宏さんが「全国のダム(の発電設備などを)を点検する」、農林水産大臣の鹿野道彦さんが「耕作放棄地はあくまでも農地だが、発電設備への利用はあり得る」と答弁しました。これだけでも、文字数は少ないこの法案が一つの川の流れとして、流域に大きな変化をあたることが分かります。
国会の内外ではいろいろな情報が出てきています。「先行したドイツでは電力料金が高くなりすぎた」(自民党の西村康稔シャドウ経産大臣)、「自然エネルギー産業は、世界で20兆円産業だが、いずれ200兆円産業になりそうだ」(公明党の稲津さん)、「今年度予算では自然エネルギー促進に関連する予算が前の年度から288億円削減された。これは行政刷新会議の事業仕分けで『効果が必ずしも明らかではない』とされたからだ」(公明党参院議員の浜田昌良さんの質問主意書に対する12日付の政府答弁書)といった多様な情報がいろいろ出てきます。
他にも、
・日本の風力発電設備のメーカーの技術は高く、内需が少ないので輸出が好調だ
・昭和シェル石油(の100%子会社)が宮崎県に太陽光パネルの世界最大の工場を建設し、中東にも進出する
・もっと早く制度が出来ていれば、(シャープ、京セラに次ぎ)国内第3位の太陽光パネルメーカーの三洋電機は生き残れた
・高付加価値型の半導体メーカーでは、(自然エネによる電力を電力会社から購入している場合は)周波数がほんのわずかでもずれてしまうとラインがストップする
などなど、いろいろなことを知りました。法案審議が遅れた怪我の功名です。この法案だけでなく、エネルギー基本計画の見直しに向けて、議論を深化させていきましょう。
さらに「太陽光、風力、小水力、バイオマスなら地域ブロック域内での地方分権につながる」といった意見まで出てきました。安全保障にもかかわります。実に奥深いのが、エネルギー問題ということになります。
ぜひ、冒頭にあげた図をごらんいただき、まかり間違っても「原発推進か?それとも自然エネルギーか?」という二元論での議論は排しましょう。
なお、参院の東日本大震災復興特別委員会では、参院野党5党共同提出の「原発賠償仮払い法案」が可決しました。あす朝の参院本会議で可決し、衆院に送られる見通しです。これは、衆院側にある、「原発賠償スキーム法案」の「対案」ではなく、その前に、(東京電力ではなく)国費で仮払いするという法案です。衆参ねじれ、閣法と議員立法、さまざまにねじれています。また、きょうの衆院・災害対策特別委員会では、「災害弔慰金の支給法(の対象者を死亡者の兄弟姉妹にも拡充する)改正案」が、各党の意見を聞き取った上で委員長が起草し、全会一致で可決しました。
さまざまな法案が各党で修正協議をしています。かなり二次元・三次元・四次元(?)の立体的な議論が国会の議事堂内・議員会館内で繰り広げられています。民主党国対委員長代理の齋藤勁(さいとう・つよし、比例南関東ブロック)さんは昨夜のブログで「原賠スキーム・仮払い・再生可能エネルギー・ガレキ処理等々の法案を、修正協議や参議院審議での衆参の大臣の振り分け等々、国対の働きどころにしても、あまりにも多忙。この他に、郵政改革法案・特例公債・他の委員会審議など、第一戦の理事の奮闘に敬意を表す」としています。
正念場(性根場)ということを今国会で何度も書いています。けさの衆院農水委では、民主党の網屋信介さん(鹿児島5区比例)は1期生とは言え53歳の社長経験者ですが、「震災後に塩釜市に行き、人生観が変わりました」。そして、答弁に立った篠原孝・農水副大臣が「海に近い漁協が損壊しました」と答弁していたのを、次の自民党議員の質疑中に、「漁協が損壊したのではなく、漁協の“店舗”が損壊したでした」と修正するなど、「緊張の夏・日本の夏2011」という風情です。
衆院総務委員会ではNHKの財産目録・バランスシート・損益計算書・キャッシュフロー計算書などについて、平成19年度分(おととしの麻生内閣の第171通常国会に提出)、平成20年度分(昨年の鳩山内閣の第174通常国会で提出)、平成21年度分(今国会提出)の3年分をいっぺんに議題にしました。一体どれだけ宿題溜めてるんだよ!という感じです。ただ、国会の制度改革よりもまず、心がけで国会が動いているという感じがします。乗りに乗っている状態です。
そして、あすは衆参本会議で野田佳彦財務大臣の財政演説と代表質問で、第2次補正予算案の審議がスタートします。3連休明けの来週中にも成立し、その後も各法案が修正協議でドンドン成立する運びとなりそうです。
まあ、こういった中で、居場所がなくなっている議員もけっこういるとは思いますが。ちょっとそこまでフォローしている余裕はありませんから、ドンドン力のある政治家の背中を押していきましょう。
きょうも夕方だけ、国会周辺に行きましたが、海側(皇居と反対側)に入道雲が見えました。夏の東京の青空はとてもきれいです。私が子供だった30年前、2日に1回は光化学スモッグ注意報が出ていました。それに比べると、私には、東京の空はきれいに見えました。日本人の智恵と叡智を集めて、前に進む道を探して、拓いていきましょう。Japan.Endless Discovery.