渡辺恒雄の後継者、宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

「再生エネ法案」が審議入りしていなかった理由が明らかになった民主党の轟木利治さんの良い質問

2011年07月07日 22時38分30秒 | 第177常会(2011年1月)大震災・3党合意

[画像]参・予算委で質問する民主党の轟木利治(とどろき・としはる)さん=参議院インターネット審議中継から

(未定稿)
(利害関係者の方は、必ず会議録やインターネット審議中継などで確認してください。あくまでも私の手元のノートから書き起こした国会傍聴記です)

【2011年7月7日(木)参院予算委員会集中審議】

 きょう(7月7日)から、参院でも審議が再開しました。

 トップバッターは民主党・新緑風会の轟木利治さん(全国比例)でした。「初めて総理に質問します」、「この機会を与えていただいた先輩に感謝します」、「この委員会の与野党の理事のみなさんにも感謝します」ということで、TV入り・総理出席の「集中審議」に、さしかえで予算委員に起用されたことがうかがえます。で、私は、なぜ轟木さんが起用されたかは、ピンと来ました。彼は「基幹労連」(日本基幹産業労働組合)の組織内として、民主党比例代表で当選しています。

 轟木さんは「再生可能エネルギーの全量固定価格買い取り法案によって電気料金が上がる。業種によっては、コスト高になる。(法案審議では)その産業に配慮すべきだ」と指摘しました。基幹労連は、鉄鋼・非鉄金属などの素材産業のはたらく仲間が参加しています。

 轟木さんは「菅直人総理は、先日の国会答弁で、『コスト高になるので反対している業種がある』としているが、それはどの業種を想定しているのか?」と聞きましたが、菅さんは「新・成長戦略の会議で、米倉弘昌・経団連会長が書面で提出した意見によるものだ」として、具体的にどの業種かは想定していないが、経団連から「業種別では(電気料金高で)コスト高になる産業がある」との意見が出ているとしました。

 「総理のお考えは分かりましたけれども」として、「日本の電気料金は世界的に高いポジションにあります」としました。

 そして、再生エネ法案(177国会閣法51号)について、担当の海江田万里・経済産業大臣に説明を求めました。海江田答弁から、現在の法律でも、余剰分の買い取り制度はすでにあり、買い取り価格も現在も電力料金に負荷されていることを確認して、「再生エネ法案は“全量固定価格買い取り制度”という名前でどうも難しく考える方もおられますが、理解していただけたかなと思います」と述べました。だれが?理解していただけたのか・・・となると、おそらく、素材産業の経営者だったり、労働者だったりするでしょう。支持者の中でも、ちょっと理解不足で、法案への反対論を轟木事務所にぶつけている人がおそらくいるのでしょう。大組織をバックに当選した議員も楽でないですね。

 轟木さんは法律や政府の決定にある「電力多消費産業」とは何か? そして、それに対する国の支援はあるのか?と経産相に問いました。

 海江田さんは「私どもの頭の中にあるのは、電炉業、曹達業、鋳造業・・・こういったところに属する事業者は電気を大量に消費しているという認識があります」としたうえで、国の支援策として考えられるのは「その業種の会社が省エネ設備を新設したり、省エネ研究をしたりするときの補助だ」としました。この辺はいかにも与党と閣僚の答弁という感じですが、私としては、なるほどという感じです。

 調子が出てきた轟木さんは「この3つの電炉業、曹達業、鋳造業は他の産業の10倍電気を使います。いわば“電気が原材料”です」と述べました。「電炉業と言っても、あまりピンとこない方もいらっしゃるでしょうが、鉄をつくっています」とTV入りですので、かみ砕いて説明しました。

 原材料に、「工場・電気・労働力」を加えると、製品ができあがる・・・というのが経済学のイメージですが、現場のイメージは、「電気も原材料だ」と。これは専門家でないと出て来ないヒトコトだと感じました。

 そして、はたらく仲間は「(電力料金の安い時間に操業するので)土日も、深夜も、お盆も・・・とにかく人が休んでいるときに稼働している産業です」としました。これ以上の電気料金という“原材料高”はごめんだ、だから「再生エネ法案」は審議するな!~~と論が進むのか思いきや、轟木さんも民主党国会議員です。支持者の聞きたいことを引き出し、自分たちの産業のこともTV入りでアピールしたうえで、「こういった産業もあります。(電力高で生産コストが上がれば国際競争力が下がるので)新成長戦略にも影響もあります。そういった点もふまえて、再生エネ法案の審議をしてほしいと思います。本日は大変ありがとうございました。以上でございます」。

 ということで、轟木質問で、素材産業が労使協調で、再生エネ法案の慎重審議を求めているらしい、ということが、参・予算委員会の集中審議という場で明らかになりました。こういう風に、轟木さんが質問してくれたので、見えなかった論点が見えてきました。やはり国会議員たるものは、非公開の政調部門会議はほどほどにして、ヒラバの国会でドンドン発言して欲しいと考えます。

 轟木さんは最後まで「基幹労連の出身だ」と名乗りませんでしたが、名乗ってもいい、ハッキリした国会審議を私たちは求めてもいいのではないでしょうか。

 ぜひ、政府も出したい法案は、国会冒頭にどーんとだして、各委員会は定例日には必ず開いて、理事会もネット中継して、法案の審議入り自体がされないというルール改正をしてほしいです。これは野党も賛同するでしょう。この前日の衆院予算委員会では自民党が「津波対策推進基本法案」を9ヶ月も審議してもらえなかったとしています。しかし、自民党が与党だった頃には、野党である国民新党・民主党共同提出の「郵政民営化一時凍結法」が参院で可決された後、衆院で1年間議論されなかったことがありました(郵政株式売却凍結法案、1年間の眠りから覚める)。

 当ブログは、5月18日付エントリーで「再生可能エネルギーの全量固定価格買い取り法案(177閣法51号)の成立を呼びかけよう!」ということで、各種団体だけでなく、国民の声も一般法案の審議に届けようと呼びかけさせていただきました。しかし、その後、「3つの想定外」が重なってしまい、やや困惑しております。1つは、審議入りしないという状態になり、大手マスコミと違い、体が1つの当ブログとしては、「なぜ審議入りしないんですか?」と国会議事堂に出向き、与野党理事から本音を引き出す取材が難しいという状態になりました。これはきょうの轟木質問でスッキリしました。そして、2つめは、当ブログが他のブログに引用され、「菅直人は初めから脱原発派だった」という「原発vs再生エネ」の二元論が展開されました。わが国の政治議論のなかで、「いまだにこんな低水準の議論を展開する国民がいるのか?」と思うと、うんざりです。わが国土のエネルギー源はほとんが火力と水力で、原子力も再生エネルギーも少数派です。脱原発で、LPGをドンドン燃やしたり、川をせき止めてダムをドンドンつくるという選択肢もあるわけですから、この二元論はあり得ません。政治的思惑です。そして3つめは、菅総理が、政権延命の3条件に使っている。ただ、第176臨時国会の所信表明演説(2010年10月1日)でも、菅総理は、再生可能エネルギーの全量固定価格買い取り制度の創設に言及しています。

 なお、2011年6月16日の民主党幹事長定例記者会見で、私は「(再生エネ法案が)(衆院)経産委員会で審議入り自体されていない状況にあるが、経団連の一部企業からの圧力があるのか」と質問しています。岡田幹事長は、「そういったことを私、感じたことはありません。それから、この固定価格買取制度によって、大きく電力料金が上がるわけではありませんので、諸外国の例を見ていても。それが競争力を失わせるとか、そういう議論ではないと考えております」と答えています。

 一方、なぜ太陽光パネルでは、日本のシャープ、京セラ、三洋電機などがドイツ企業としのぎを削っていたのに、太陽光パネル産業でドイツが国際競争力を強めたのかを調べたら、これは、やや古い文献でも、「ドイツでは2000年の再生可能エネルギーの全量固定価格買い取り法の成立による国内での普及」によるものということでほとんど一致しています。三洋電機なんか全体では再建企業になってしまいました。この10年間の政治の怠慢が悔しいです。昭和セル石油も太陽光パネル産業に進出してきていますから、産業政策としても、修正協議もして、再生エネ法をしっかり成立させましょう。

 また、電炉業、曹達業、鋳造業の経営者・労働者が納得できるよう、ていねいに説明し、また、修正協議も辞さない構えが求められます。きょうは、国会内で、衆院経産委の民主党側筆頭理事を見かけました。この法案だったんでしょうか。ちょっと声をかけようかと思いましたが、面識のない方ですので自重しましたが、しっかりと延長国会を見ていきたいと考えています。

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岡田克也幹事長、落選県議・政令市議候補に「県連政策委員で年60万円」の再チャレンジ制度導入

2011年07月07日 20時48分02秒 | 岡田克也、旅の途中


【きょう上梓の石川知裕さん著『悪党 小沢一郎に仕えて』は選挙必勝本?】

 きょう2011年7月7日(木)、待望の石川知裕・衆院議員(北海道11区、現在は無所属)の著書『悪党 小沢一郎に仕えて』が出版されました。私も、きょう、国会内の石川事務所で購入しました。夕方に帰宅して、すでに読了しました。これは、言ってみれば、あるいは、歴史書といえるかもしれません。この手の本にしては珍しく、245ページとかなりボリュームは厚く、小沢事務所に入った「1996年2月3日」(50ページ)からの回想部分が実に面白いです。ですから、海部内閣の小沢「剛腕」幹事長のころのことはありませんが、その後の小沢氏の「壊し屋」政治人生が石川さんの人生と重ね合わす格好で書かれています。ベールに包まれた小沢秘書軍団も実名で登場します。例えば、秘書時代にはよく「どうやったら(小沢さんの)秘書になれるのか?」と聞かれることがたびたびあったそうですが、その答えは「紹介のみ(でしか秘書になれない)」だったというエピソードが語られます。

 ところが、どういうわけか、「2002年ごろ、日本大学の就職課に秘書の募集をかけた」ことがあったと書かれています。これとは別の部分にこの答えがあり、小沢さんの奥さんは上智大学を卒業しているそうで、これは私は初耳でしたが、小沢夫妻がけんかになり、奥さんが「上智でも早慶より入るのが難しい学部もあるのよ」と言うと、小沢さんが「そんなはずない」と譲らない。石川さんは推測として次のように書いています。「小沢は慶応を出た後、日大の大学院に入りながら司法試験の合格を目指した。私が察するに、アイデンティティーは慶応ではなく日大にあると思う。2浪しても東大に受からずにしぶしぶ入りながら、大学院に進ませてもらえなかったからか、小沢が慶応の愛校心を語るのを聞いたことがない」としています。

 年齢が上で市議の経験もあるけれども、小沢事務所としては後輩になる大久保隆規さんが、公設秘書に昇格することになったときのことも振り返っています。大久保さんは、石川さんのことを、「石川」でもなく、「石川さん」でもなく、「石川ちゃん」と呼んでいたそうで、大久保さんが秘書寮にある自宅に石川さんを呼んだときの回想。また、小沢流選挙必勝法では、やはり詠んでいて唸るような部分があり、参考になりました。小沢さんは「中選挙区を知っているから、小選挙区に強い」ということで、「何のこっちゃ?」と思いましたが、つまりは、中選挙区時代に自民党で対立していた陣営が、それぞれの小選挙区で棲み分けているので、その支持者間の過去の因縁を突くという戦法です。これが、北海道11区で中川昭一さん(故人)と闘う上で、石川さんと鈴木宗男さんが共闘することにつながったとのことで、けっこうドロドロした話ですが、小選挙区を闘う人は必読でしょう。しかしまあ、最後の衆院中選挙区選挙からもう18年が過ぎていますから、この作戦もだんだん使えなくなっていくでしょう。こういった「小沢一郎」が古びていっている、と感じさせるエピソードも多く、歴史書という感じもします。小沢事務所を2日間で辞めた人、元衆議院議長秘書が小沢事務所に移籍したけどすぐに辞めた話などもあります。今後も時折、このブログでもご紹介しようかと思いますが、待ち遠しい方は、ぜひ、お買い求めのうえ、ご一読いただきたく存じます。いわば「当事者が書いた週刊誌」といった感じで、読み進めると止まらなくなりました。石川さんはきょうは、出版社の人と書店周りをしましたので、東京の方では、店頭に平積みにしてくれた本屋さんも出たかと思います。みなさんのお手軽な方法でぜひ、お手元に1冊ご用意下さいませ。

 なお、このエントリーを更新した時点で、amazonでは全体で75位になっています!パチパチ!政治部門で75位ではないですよ、全体で75位です。これはもう、読まなきゃ恥ずかしい!それと、くれぐれも読んだ後、速攻で中古本に出品するのは止めてください。1年以上は自宅で保管してください。頼みますよ。お世辞抜きで、面白いよ(^_^)v

【岡田幹事長、落選候補予定者を「県連政策委員」や「県連嘱託職員」に起用で、パワーマネーを注入、土曜日の全国幹事長会議で正式決定へ】

 さて、民主党幹事長の岡田克也さんと、選挙対策委員長の石井一さんは、第18回統一地方選(2015年4月)に向けて、第17回統一選の「落選した地方議員候補者に対する再チャレンジのための支援策」をまとめました。すでにおととい(5日)の第528回民主党常任幹事会に提出し、あさって土曜日(7月9日)の全国幹事長会議に諮ります。

 当ブログが独自のルートで入手した常幹提出ペーパーは、この後ろに付けます(赤線は筆者が参考用に引いたものです)。

 これは、道府県議選(昨年末の茨城県議選含む)と政令市議選(2月の出直し名古屋市議選含む)の落選者のうち、「惜敗した候補者」のなかから、「県連政策委員」を任命し、年間60万円の「政策活動支援交付金」を支給するということです。政策委員の人数は、道府県ごとの落選者を勘案することになっています。

 政策委員になる条件は、「次回選挙での捲土重来を期す固い決意を有する者」で、その他にも、①前回選挙の惜敗率、②次回選挙時点の年齢、③選挙区情勢ーーも「任命要件」になります。

 ただ、やはり岡田さんというのはやさしさと厳しさが合わせ鏡になった男ですから、厳しい条件があります。まず、道府県連の申請を受けて党本部がこれを認めた者に限ります。そして、1年ごとの更新制となっており、3回を限度に更新できるということになっています。ちなみに、次の選挙までの残り年数は4年弱ですから、3回更新すれば、次の選挙で勝って、歳費を受け取れ、息切れすることはありません。しかし、道府県連は、毎年、政策委員の活動状況を点検し、党本部に報告することになっています。

 これとは別に、「主に地域政党の伸長などにより、県議、政令市議が大幅に減少した府県連」すなわち「大阪、愛知、神奈川、千葉、埼玉の5府県連」では、落選候補者を嘱託雇用するための資金を党本部が府県連に援助します。この場合の「落選候補者」は一般市長村議も対象になるものと思われます。この嘱託雇用職員の条件は、「次回選挙での捲土重来を期す固い決意を有する者」で、①前回選挙の惜敗率、②次回選挙時点の年齢、③選挙区情勢ーーも選定要件になります。手続きは、所管地域の総支部長が推薦し、府県連幹事会(人事委員会)でこれを認めた者は、府県連と嘱託契約を締結することができます。

 府県連は「地域基盤再建計画」と「人事活用計画」を策定しなければいけません。そして、それを党本部が審査し、党本部が府県連に対して貸付金を交付することになっています。ただ、「後日その実績を審査し、(党本部が府県連に対して)一部貸付金の返還免除を行う」ことができます。この辺も岡田さん流のやさしさと厳しさが合わせ鏡になっています。また、嘱託者が①次期選挙出馬を取り止めたとき②他の選挙への立候補が決定したとき③後見人、府県連がその人に不適格であると判断した場合ーーはその資格は失うことになります。


[画像]第20回参院通常選挙での岡田克也代表率いる民主党の快勝を伝える新聞。

 ところで、岡田さんは民主党でも屈指の資金力を誇り、唯一の政治資金管理団体の「岡田かつや後援会」は昨年1億9650万円の収入(繰越金含む)を挙げています。岡田さんは他に三重県第3区総支部の代表者もしており、9月末、政治資金収支報告書が公開されると分かりますが、あわせて3億円前後の収入(繰越金含む)があると思います。

 が、勘違いはいけません。このお金・貸付金は、民主党本部のオカネです。以前、NHKを見ていて、たしか埼玉だったと思いますが、“水年寄”という役目があり、集落の長老が務めるそうですが、水の湧く泉から用水路に流れる水を、棒で配分する習慣があるようです。この“水年寄”が岡田幹事長であり、配分役とそのルールをつくるのは岡田幹事長です。「パワーマネー受給資格」を1年更新にしたのは、そのときの幹事長(水年寄)に、限られた資源である党本部資金の配分の裁量の余地を与えた面もあると考えられます。以前、民主党には、党のオカネをあたかも自分のオカネのようにふるまう幹部がいましたが、今はいません。そういう意味では、岡田さんは幹事長に適任でしょう。岡田さんには、ぜひ政権交代可能な二大政党デモクラシーの完成のために、党のルール、国会のルール、選挙のルール作りに没頭して欲しいものです。どす黒い漆黒の孤独の暗闇の内閣総理大臣官邸・公邸になんて行ってほしくないですね。

 落選候補者も、なかなか、秘書の仕事も少ない昨今。県連政策委員や、県連嘱託職員をしながらも、いくばくかの不労所得を得られるシステムをつくっておくと、4年後に(仮に)議員になった後も行動しやすいと思います。息切れしないように、各々のペースを考えながら、しっかりと前に進みましょう。

 





[画像]岡田克也幹事長が第528回民主党常任幹事会に提出した資料
 (当ブログが独自のルートで入手したものをキャプチャ、赤線は筆者が参考用に引いた物です)

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