[画像]参・予算委で質問する民主党の轟木利治(とどろき・としはる)さん=参議院インターネット審議中継から
(未定稿)
(利害関係者の方は、必ず会議録やインターネット審議中継などで確認してください。あくまでも私の手元のノートから書き起こした国会傍聴記です)
【2011年7月7日(木)参院予算委員会集中審議】
きょう(7月7日)から、参院でも審議が再開しました。
トップバッターは民主党・新緑風会の轟木利治さん(全国比例)でした。「初めて総理に質問します」、「この機会を与えていただいた先輩に感謝します」、「この委員会の与野党の理事のみなさんにも感謝します」ということで、TV入り・総理出席の「集中審議」に、さしかえで予算委員に起用されたことがうかがえます。で、私は、なぜ轟木さんが起用されたかは、ピンと来ました。彼は「基幹労連」(日本基幹産業労働組合)の組織内として、民主党比例代表で当選しています。
轟木さんは「再生可能エネルギーの全量固定価格買い取り法案によって電気料金が上がる。業種によっては、コスト高になる。(法案審議では)その産業に配慮すべきだ」と指摘しました。基幹労連は、鉄鋼・非鉄金属などの素材産業のはたらく仲間が参加しています。
轟木さんは「菅直人総理は、先日の国会答弁で、『コスト高になるので反対している業種がある』としているが、それはどの業種を想定しているのか?」と聞きましたが、菅さんは「新・成長戦略の会議で、米倉弘昌・経団連会長が書面で提出した意見によるものだ」として、具体的にどの業種かは想定していないが、経団連から「業種別では(電気料金高で)コスト高になる産業がある」との意見が出ているとしました。
「総理のお考えは分かりましたけれども」として、「日本の電気料金は世界的に高いポジションにあります」としました。
そして、再生エネ法案(177国会閣法51号)について、担当の海江田万里・経済産業大臣に説明を求めました。海江田答弁から、現在の法律でも、余剰分の買い取り制度はすでにあり、買い取り価格も現在も電力料金に負荷されていることを確認して、「再生エネ法案は“全量固定価格買い取り制度”という名前でどうも難しく考える方もおられますが、理解していただけたかなと思います」と述べました。だれが?理解していただけたのか・・・となると、おそらく、素材産業の経営者だったり、労働者だったりするでしょう。支持者の中でも、ちょっと理解不足で、法案への反対論を轟木事務所にぶつけている人がおそらくいるのでしょう。大組織をバックに当選した議員も楽でないですね。
轟木さんは法律や政府の決定にある「電力多消費産業」とは何か? そして、それに対する国の支援はあるのか?と経産相に問いました。
海江田さんは「私どもの頭の中にあるのは、電炉業、曹達業、鋳造業・・・こういったところに属する事業者は電気を大量に消費しているという認識があります」としたうえで、国の支援策として考えられるのは「その業種の会社が省エネ設備を新設したり、省エネ研究をしたりするときの補助だ」としました。この辺はいかにも与党と閣僚の答弁という感じですが、私としては、なるほどという感じです。
調子が出てきた轟木さんは「この3つの電炉業、曹達業、鋳造業は他の産業の10倍電気を使います。いわば“電気が原材料”です」と述べました。「電炉業と言っても、あまりピンとこない方もいらっしゃるでしょうが、鉄をつくっています」とTV入りですので、かみ砕いて説明しました。
原材料に、「工場・電気・労働力」を加えると、製品ができあがる・・・というのが経済学のイメージですが、現場のイメージは、「電気も原材料だ」と。これは専門家でないと出て来ないヒトコトだと感じました。
そして、はたらく仲間は「(電力料金の安い時間に操業するので)土日も、深夜も、お盆も・・・とにかく人が休んでいるときに稼働している産業です」としました。これ以上の電気料金という“原材料高”はごめんだ、だから「再生エネ法案」は審議するな!~~と論が進むのか思いきや、轟木さんも民主党国会議員です。支持者の聞きたいことを引き出し、自分たちの産業のこともTV入りでアピールしたうえで、「こういった産業もあります。(電力高で生産コストが上がれば国際競争力が下がるので)新成長戦略にも影響もあります。そういった点もふまえて、再生エネ法案の審議をしてほしいと思います。本日は大変ありがとうございました。以上でございます」。
ということで、轟木質問で、素材産業が労使協調で、再生エネ法案の慎重審議を求めているらしい、ということが、参・予算委員会の集中審議という場で明らかになりました。こういう風に、轟木さんが質問してくれたので、見えなかった論点が見えてきました。やはり国会議員たるものは、非公開の政調部門会議はほどほどにして、ヒラバの国会でドンドン発言して欲しいと考えます。
轟木さんは最後まで「基幹労連の出身だ」と名乗りませんでしたが、名乗ってもいい、ハッキリした国会審議を私たちは求めてもいいのではないでしょうか。
ぜひ、政府も出したい法案は、国会冒頭にどーんとだして、各委員会は定例日には必ず開いて、理事会もネット中継して、法案の審議入り自体がされないというルール改正をしてほしいです。これは野党も賛同するでしょう。この前日の衆院予算委員会では自民党が「津波対策推進基本法案」を9ヶ月も審議してもらえなかったとしています。しかし、自民党が与党だった頃には、野党である国民新党・民主党共同提出の「郵政民営化一時凍結法」が参院で可決された後、衆院で1年間議論されなかったことがありました(郵政株式売却凍結法案、1年間の眠りから覚める)。
当ブログは、5月18日付エントリーで「再生可能エネルギーの全量固定価格買い取り法案(177閣法51号)の成立を呼びかけよう!」ということで、各種団体だけでなく、国民の声も一般法案の審議に届けようと呼びかけさせていただきました。しかし、その後、「3つの想定外」が重なってしまい、やや困惑しております。1つは、審議入りしないという状態になり、大手マスコミと違い、体が1つの当ブログとしては、「なぜ審議入りしないんですか?」と国会議事堂に出向き、与野党理事から本音を引き出す取材が難しいという状態になりました。これはきょうの轟木質問でスッキリしました。そして、2つめは、当ブログが他のブログに引用され、「菅直人は初めから脱原発派だった」という「原発vs再生エネ」の二元論が展開されました。わが国の政治議論のなかで、「いまだにこんな低水準の議論を展開する国民がいるのか?」と思うと、うんざりです。わが国土のエネルギー源はほとんが火力と水力で、原子力も再生エネルギーも少数派です。脱原発で、LPGをドンドン燃やしたり、川をせき止めてダムをドンドンつくるという選択肢もあるわけですから、この二元論はあり得ません。政治的思惑です。そして3つめは、菅総理が、政権延命の3条件に使っている。ただ、第176臨時国会の所信表明演説(2010年10月1日)でも、菅総理は、再生可能エネルギーの全量固定価格買い取り制度の創設に言及しています。
なお、2011年6月16日の民主党幹事長定例記者会見で、私は「(再生エネ法案が)(衆院)経産委員会で審議入り自体されていない状況にあるが、経団連の一部企業からの圧力があるのか」と質問しています。岡田幹事長は、「そういったことを私、感じたことはありません。それから、この固定価格買取制度によって、大きく電力料金が上がるわけではありませんので、諸外国の例を見ていても。それが競争力を失わせるとか、そういう議論ではないと考えております」と答えています。
一方、なぜ太陽光パネルでは、日本のシャープ、京セラ、三洋電機などがドイツ企業としのぎを削っていたのに、太陽光パネル産業でドイツが国際競争力を強めたのかを調べたら、これは、やや古い文献でも、「ドイツでは2000年の再生可能エネルギーの全量固定価格買い取り法の成立による国内での普及」によるものということでほとんど一致しています。三洋電機なんか全体では再建企業になってしまいました。この10年間の政治の怠慢が悔しいです。昭和セル石油も太陽光パネル産業に進出してきていますから、産業政策としても、修正協議もして、再生エネ法をしっかり成立させましょう。
また、電炉業、曹達業、鋳造業の経営者・労働者が納得できるよう、ていねいに説明し、また、修正協議も辞さない構えが求められます。きょうは、国会内で、衆院経産委の民主党側筆頭理事を見かけました。この法案だったんでしょうか。ちょっと声をかけようかと思いましたが、面識のない方ですので自重しましたが、しっかりと延長国会を見ていきたいと考えています。