渡辺恒雄の後継者、宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

楢崎弥之助さんが最後の“爆弾” 「菅君、直ちに辞めなさい」 91歳、元社民連同僚

2011年07月21日 20時34分18秒 | 第177常会(2011年1月)大震災・3党合意

[写真]2011年7月18日の海の日の祝日に、イッパイやりながら、懇談する法相(兼)環境相の江田五月さんと楢崎弥之助さん(右)の旧社民連の代表・書記長(幹事長)コンビ=江田さんのホームページ

 「国会の爆弾男」と呼ばれた元社民連衆院議員(当選11回)の楢崎弥之助さんが「菅直人総理の即時退陣を求める」と題する5枚つづり(あいさつ文含む)の意見書を、民主党国会議員に配布しました。

 楢崎さんは現在91歳。勲一等旭大綬章を受章し、衆院を引退。すでに世襲した息子さんも政界を引退しています。

 ペーパーによると、「私も今91歳、一人で行動するのも大変面倒な歳になってしまったが、この国難の時期にこそ菅直人君に猛省を促したくて上京した」ものの、「数分間でも菅君に意見を具申するつもりでした。しかしながら、菅君から多忙を理由に面会を断られましたので、ここに私見を申し述べ」るために、ペーパー配布となったようです。

 ここで楢崎さんが菅さんと会えなかったのは、首相官邸で秘書官が取り次がなかったのかもしれないですね。つねに時の首相の権力の下にある官邸官僚が、衆参あわせて4~6議員しかいなかった少数野党で17年前に解散した「社民連(社会民主連合)」の歴史とか知るわけないです。別に菅総理がわざと断ったわけではないと思いますが、こういう経緯が不明なところが、官邸の主の孤独というところでしょうか。

 江田五月さんのホームページ「江田五月 新たな出発」の活動日誌によると、「18時から1時間半ほど、博多から上京された楢崎弥之助さんと、夕食懇談。91歳ですが矍鑠とされ、来し方を振り返りながら、いろいろとアドバイスをいただきました」とのことです。1994年の社民連解党後は、江田さんは日本新党副代表、菅さんは新党さきがけ政調会長、楢崎さんは無所属となってしまいましたが、今は3人とも民主党員です。なぜ、江田大臣とは会えて、菅総理とは会えないのでしょうか。

 楢崎さんは意見書を6つの柱で構成しており、6つめで「即時退陣」を主張しました。

 ペーパーの書き出しは「菅直人君はご存じの通り市民運動の出身で、労働組合などの応援する組織が全くなかったが」「私は最初の立候補の時からその選挙運動を付ききりで応援してきた」として、初当選のときは「私も感極まって涙したものである」ーー若干、恩着せがましい書き出し。実に政治家らしい。「その昔、社民連に結集した同志たちは1978年の結成当時国会議員わずか6名、菅直人君が参加した時点でも国会議員5名の極小政党であったけれども、その政治理念は、『何よりも国民の安寧と幸福を第一義とし、そのための正義を政治的に実現する』ことであった」としました。ここは、菅さんの「最少不幸社会」と重なるものがあります。

 三つ子の魂百まで、といいますが、やはり政治家の志というのは、91歳になっても変わらぬようで、「ほとんどすべての政治家やマスコミも災害の復旧・復興と声高に叫んでいる。しかし現在最も肝要なことは被災者の方々の一日も早い救済である」として、復旧・復興よりも、被災者の救済を優先すべきだとして、いくつかの政策を提言しています。

 
[写真]野党時代の民主党福岡県連所属議員のパーティーに顔を見せた楢崎弥之助さんと菅直人さんら。

 楢崎さんはほとんど与党経験がなく、細川・羽田内閣の1年弱、政府外議員を務めただけです。とはいえ、55年体制において、「国会の爆弾男」として自民党長期政権の腐敗を暴いた日本を代表する政治家です。

 「2009年9月、戦後、長期間にわたる自民党の堕落、腐敗した政治体制を打ち破った」「日本の国民にもやっと明るい展望が切り開かれてきたと私も心から喜んだものであった」。

 「初めての与党の経験から学んだ足らざるところ、改めるべきところは率直に反省し、国民の利益を優先する政治を実現すべきである。次の衆議院選挙までにはまだ2年の歳月がある。すべての党員、支持者が結束して必死の努力をすれば必ずや国民に支持される政党に生まれ変わるだろう」としていてます。

 そして、6つめの柱で、「最後にもっとも重要なことは“菅直人総理は直ちに辞任すべきである”」とし、「政治は国民のためのものであって、菅直人君の権力欲を満足させるためにあるのではない。古くからの同志である私だからこそ、あえて断腸の思いで、日本国民のために辞任せよと言いたいのである。これは私の遺言である」。

 「人間引き際が肝心である。遅きに失したとはいえ君の即刻の辞任こそが多くの国民に安堵感と少なからぬ希望の光を与えるであろう。菅直人君、直ちに辞めなさい」と結んでいます。

 なお、国政の現状として、①第2次補正予算②特例公債法案③再生可能エネルギー法案の3つが成立すれば、首相が辞任するという、「岡田勧進帳」(6月21日に民自公幹事長合意、22日に首相修正を自公幹事長が拒否して白紙の状態)に基づいて、国政は動いていますが、楢崎さんはペーパーで、「二次補正などいくつかの法案が通ったら菅総理は辞職すると聞いている。しかしそれらの法案は菅総理がいなくても十分に対応可能である。むしろ菅内閣のもとでは必要な法案さえ通すことが出来ないと思う」と憤懣やるかたないようす。楢崎さん、まさに即日辞任を求めての上京だったようです。

 ちなみに、社民連の衆院議員だった江田五月さんは法相(兼)環境相で、書記長や国対委員長を務めた旧山形2区の阿部昭吾さんもご健在なんですね。ですから創設者の江田三郎さん(江田法相の父)が亡くなった後、衆院議員だった人は、みんな、お元気ということで、小政党ながら選挙に強いスター軍団だったゆえんを感じます。

 このほか、民主党の県連顧問や、後援会長、総支部顧問などでは、日本社会党の田辺誠元委員長、政治改革派の堀込征雄さん、自民党・新生党では中島衛・元科学技術庁長官らがいます。どうしても、民主党は若い組織なので、こういった引退したベテランをうるさ型として、煙たがっている気がします。それでいて、現時点での実力者にはひれ伏して、ヘコヘコしている感じがします。サラリーマン議員ならそれでいいけど、せめて植木等さんのような「気楽で表現上手なサラリーマン」がいてほしい。民主党は400人以上の議員がいるんだから、政府は動きます。私の言う「自民党55年長期政権の後ろ半分(40日抗争以降)はハマコーのおかげ」、「与党・民主党には河村たかし議員が必要だった」というところです。

 
[画像]麻生内閣による第171国会での衆議院解散のもよう、左端が、民主党幹事長の岡田克也さん、代表の鳩山由紀夫さん、代表代行の菅直人さん、代表代行の小沢一郎さん(背中)、最高顧問で元首相の羽田孜さんら(肩書きはすべて当時)=2009年7月21日、NHKニュースの映像からキャプチャ。

 ところで、ちょうど2年前、2009年7月21日、麻生自民党内閣は衆議院を解散しました。「政権選択解散」といっていいでしょう。このとき、民主党の鳩山代表、岡田幹事長がバンザイをしなかったことが話題になりました。その理由について明確な返答は、鳩山・岡田コンビからはありませんでした。鳩山さんは官房副長官の経験がありますが、2人とも、政府外議員を中心に2~3期、4年~9年ほどの与党の経験があります。このとき、バンザイをしなかったことは、2年後の現状への予感があったことは間違いありません。ちなみに、官房副長官・自治相経験者の小沢一郎代表代行(当時)はすでに本会議場から去ろうとしています。ところが、菅直人代表代行は、「いよいよ政権交代選挙だ」と笑いを隠しきれないようすです。この辺の個性がうまく、まとまれば魅力的なのですが、まとまらなくなると、なかなかゴタゴタします。ですから、自民党以上に、民主党には大黒柱の存在が不可欠です。

 昨年9月から民主党幹事長に復帰している岡田克也さんは2011年7月21日の定例記者会見で、マニフェストについて「見通しの甘さを国民に素直におわびする」と述べました。残り2年で建て直せるかどうか。これは私はもちろんあきらめては居ませんが、今回の任期(第45回衆院選)ではかなり難しいのかな、という気もします。国民が政治家を鍛え、国民が政治を学ぶ「訓政期」です。政治は退屈なものであり、100%完璧な政治家はいません。

 楢崎弥之助さんは、初当選前に、松本治一郎さんの秘書をしていたことがある、と「議会制度百年史」にはあり、松本龍さんとは同じ中選挙区の選出でした。少し物言いが似ている面もあるようですが、楢崎さんは「いまや歴史的な国難の時期です」との認識を示しながら、「政府と与党民主党が国民の期待に真に応えることができるような存在になっていただきたいと思っております」ということで、民主党愛を感じます。

 どこか政治家を突き放すのはもうやめて、民主党ないし自民党を、国民として自分が育てていくんだ、という意識を持ちたいものです。












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