【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

[きょうの国会]衆議院は空転、参・委員会はACSA承認案、種子法改正案が可決

2017年04月13日 18時39分29秒 | 第193回通常国会(2017年1月から6月まで)学校法人森友・加計学園国会

【衆議院本会議 平成29年2017年4月13日(木)】

●空転

 午後1時設定も、空転。前日の厚生労働委員会で、森友問題で質問したところ、与党が「質疑が出尽くした」として採決に踏み切ったこと。与党内にも反省論が出ており、与野党国会対策委員長を1時間以上開催。二大政党国対委員長が対応を引き取りました。

 空転はさほど長引かず、早ければあすにも正常化するのではないか、と私は思います。

【衆議院憲法審査会】

 定刻から8時間半遅れて開会し、次回の参考人質疑の手はずを地整えて、1分ほどで散会しました。


 民進党では、野田・蓮舫グループ「花斉会」のプリンス、武正公一さんが幹事をつとめていますが、この日、憲法改正に前向きな、細野豪志代表代行が、蓮舫代表に辞表を突きつけました。民進党内では、長島昭久さんが離党、松野頼久さんが派閥立ち上げの「慶應ボーイの反乱」も起きています。岡田克也さん、玄葉光一郎さん、安住淳さんらは静観のかまえ。

【衆議院その他】

 科学技術・イノベーション推進特別委員会(松野頼久委員長)の一般質疑や、衆議院総務委員会のマイナンバー関連法案の審議は、空転のあおりで、次回以降に持ち越され、きょうは、委員会は設定されませんでした。

【参議院第1種常任委員会 平成29年2017年4月13日(木)】

 経済産業委員会と文教科学委員会はありませんでした。それ以外の9委員会が開かれました。

【参議院外交防衛委員会】

●日米豪英ACSAついに次の本会議で承認。

 「日米ACSA](192条約1号)「日豪ACSA」(193条約1号)「日英ACSA](193条約2号)承認すべし、と決まりました。民進党・共産党・沖縄の風の反対、自民党・公明党・維新の賛成多数。

 首相入り質疑では、「敵基地攻撃能力は無いし、持つつもりも無い」と首相は明確に答弁しました。質疑の終局にはとくに異論はありませんでしたが、討論は1人5分前後の長いものになりました。

 民進党の大野元裕さんは反対討論で「平和安全法制による存立危機事態は、その立法事実が無く、定義があいまいで他国にも失礼だ」と指摘しました。共産党の井上哲士さんは「多国間の軍事連携を強化するものだ」としました。

 2014年7月の解釈改憲から始まった平和安保法制への抵抗も、ここまで!、というのが正直なところです。

【参議院農林水産委員会】

●種子法が可決、来年4月施行。

 「種子法改正案」(193閣法23号)が民進党・共産党・希望の会が反対し、自公維が賛成して、賛成多数で可決すべしと決まりました。

 討論では、民進党の田名部匡代さんが「種子を守るのは国の責務であり、食糧安保の面からも法規制を止めるべきではない」としました。

 「農業機械化促進法廃止法案」(193閣法22号衆修正)も採決され、共反対、自公民維の賛成多数で可決しました。

【参議院環境委員会】

 「遺伝子組み換え生物を規制するカルタヘナ法改正案」(193閣法32号)が採決され、全会一致で可決しました。元環境事務次官の中川雅治さん(自民党)も質問しました。

【参議院総務委員会】

●自治体の臨時職員法案が可決。

 「地方公務員法改正案」(193閣法51号参先議が採決され、共反対、自公民維希賛成多数で可決しました。

 平成32年度からの会計年度任用職員制度の創設による、非常勤職員の待遇改善について、正規採用を増やすことや、育児休業の整備などを話し合いました。自治官僚出身で元総務省の片山虎之助さんや、自治労出身議員も質問しました。高市早苗総務相は、被災地に派遣する会計年度職員(臨時職員)を登録する制度を、今夏にも立ち上げることを表明しました。

【参議院財政金融委員会】

 「国際開発協会加盟法改正案」(193閣法13号)が、討論無しに、全会一致で可決されました。付帯決議がつきました。

 この委員会では、自民党の中西健治さんが法案と関係ない、保証のある融資・保証のない融資について金融庁監督局長に質問。次に立った、民進党の風間直樹さんが「先ほどの麻生副総理と中西さんの質疑の中で、労働組合に関する不適切な発言があったように思うが」と切り出すと、麻生副総理は珍しく「不適切だった」と速やかに謝罪しました。元有名会社経営者の子息である、風間さんが、今まで以上に、党内でいじめられないか、少し心配なところです。

【参議院内閣委員会】

 「地方分権第7次一括法案」(193閣法36号)が山本幸三地方創生相から趣旨説明され、質疑は次回にすることにして、散会しました。

 これに先立つ一般質疑では、自民党の有村治子さんが「国旗を上下に並べることは外交儀礼上失礼にあたるか?」と尋ね、首相の実弟の岸信夫外務副大臣が「そうだ」と答えました。私はてっきり日教組かなにかの関係かと思いましたが、有村さんは「先日放送のNHKニュースウォッチ9が、日中の国旗を上下に並べた」としてやり玉に挙げました。日本会議系自民党議員の批判の矛先はあらゆるところに及んでいるようです。

【参議院法務委員会】

 「裁判所法改正案」(193閣法5号)が趣旨説明されました。金田法相は「司法修習生の給付金を復活させ、最高裁がその額を決める。貸与制と併存させる。非行があった修習生は司法修習を止めさせることができる」としました。質疑は後日にして、散会しました。これに先立つ、一般質疑では、特区制度で家事代行などにも解禁された、外国人技能実習生をめぐり、入国管理法に関する質問が目立ちました。

【参議院国土交通委員会】

 「住宅セーフティーネット法案」(193閣法8号)が石井啓一国土交通大臣から趣旨説明されました。次回は、参考人質疑をする手筈をととのえて、きょうは散会しました。

【参議院厚生労働委員会】

●相模原やまゆり園の精神保健福祉法案はていねいな審議に。

 「精神保健福祉法改正案」(193閣法34号参先議)の参考人質疑。その後、委員と政府の質疑がありました。法案提出後に関係団体の反発をうけて、厚労省がレクチャー用の概要を補充したことについての不満が出ました。措置入院者の退院後の処遇について、拘束が強すぎるとの懸念が出ているようです。質疑は次回も続くことになりました。参議院先議だから、参議院でていねいに審議をしようという意識が与野党にあるようです。

このエントリーの本文記事は以上です。

(C)2017年、宮崎信行。

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[訃報]本岡昭次・第24代参議院副議長 マクロ経済スライド改正年金法で天下の奇策、岡田民主党の改選第1党につながる

2017年04月13日 07時35分16秒 | その他

[写真]本岡昭次さんが、国会議員要覧(平成16年2月版、国政情報センター刊行)から一部キャプチャ。

 本岡昭次(もとおか・しょうじ)第24代参議院副議長が、さる平成29年2017年4月10日(月)亡くなったそうです。朝日新聞などが報じました。享年86。

 昭和55年1980年から平成16年2004年まで、参議院議員を4期つとめました。日教組出身で、兵庫選挙区選出。

 副議長在任中の第159回通常国会最終盤の、平成16年2004年6月5日(土)の午前4時過ぎに、議長不信任案の採決にあたり、副議長が議長席に座ったとたんに「散会」を宣言する奇策で、マクロ経済スライド導入の改正国民年金法成立に抵抗しました=議事録後掲=。

 その1か月前に急きょ登板した、岡田克也民主党代表(ネクスト首相)は、「選対も国対も連合任せ」(毎日新聞)などと揶揄されました。この参議院の奇策には賛否両論ありながらも、会期後の第20回参院選で岡田克也代表は親友である笹森清会長率いる連合と連携し、折からの第1次岡田ブームもあり、大躍進し、改選第1党に。この選挙で当選した蓮舫議員らの任期は2010年まででしたから、2009年の衆参両院での民主党・国民新党などでの過半数、政権交代につながりました。

 この2004年通常国会では、民主党の山本孝史・参議院厚生労働委員会筆頭理事、森裕子議員らが反対一辺倒で奮闘。その後、2012年通常国会で、岡田克也副総理が法律の内容を一部評価し、3党合意につながりました。2015年、塩崎厚労相が初めて年金マクロ経済スライドを発動すると、年金受給者から「何事が起きたのか」と不安の声が出て、主導した公明党議員ですら「名前を変えられないか」と意見しました。 

 天下の奇策の議事録は以下の通りです。

参議院会議録から抜粋引用はじめ]

第159回国会 本会議 第28号
平成十六年六月五日(土曜日)
   午前零時十一分開議
(略)

議長(倉田寛之君) これより会議を開きます。

(略)
議長(倉田寛之君) これにて休憩いたします。
   午前一時四十四分休憩
   午前四時二十一分開議
○副議長(本岡昭次君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 これにて本日は散会いたします。
   〔副議長退席〕
   〔議長着席〕
○議長(倉田寛之君) 先ほど副議長が散会を宣告いたしましたが、これは本院規則第八十二条の規定に反し、無効でありますので、会議を続けます。
 藁科滿治君外十二名から、議長不信任決議案が提出されております。
 本決議案は、直ちに審議を要するものでありますが、私の身上に関するものであり、また、本岡副議長にも事故があるものと認めざるを得ないので、議事を進めるためには、まず仮議長を選挙することになります。
 その準備のため、これにて休憩いたします。
   午前四時三十三分休憩

(略)

[参議院会議録から抜粋引用おわり] 

 奇策にもかかわらず、法律は成立。この混乱にもかかわらず、会期末の6月16日、副議長及び議員勇退にあたって、議長のねぎらいの言葉や、本岡さんのあいさつが残っています。

[参議院会議録から抜粋引用はじめ]

第159回国会 本会議 第31号

平成十六年六月十六日(水曜日)
   午前十一時三十一分開議
(略)

○議長(倉田寛之君) これより会議を開きます。

(略)

○議長(倉田寛之君) 今期国会の議事を終了するに当たり、一言ごあいさつを申し上げます。
 去る一月十九日に召集されました今常会は、会期終盤に各会派間で緊張が高まる局面もありましたが、本日、百五十日間にわたる会期を終了する運びとなりました。
(略)
 さて、本年は本院議員の改選期に当たり、皆様の半数の方々は来る七月二十五日をもって任期を満了されるわけであります。とりわけ、今回の改選を機に勇退される皆様には、長年にわたる議員生活の御労苦を多とするものであります。

 本岡副議長におかれましては、三年間副議長をお務めになられ、また、二十四年の長きにわたる参議院議員としての任期を全うされ、今期限りで御勇退なされます。(略)
 ありがとうございました。
   〔拍手〕
 副議長本岡昭次君から発言を求められております。発言を許します。本岡昭次君。

○本岡昭次君 副議長を退任するに当たりまして、お礼のごあいさつを申し上げます

 先ほどは、議長から御丁寧なごあいさつを賜り、ありがとうございました。


 平成十三年八月、私にとって望外のことでありましたが、副議長に選任され、この三年間、井上、倉田両議長の下で何とかその大任を果たすことができました。これもひとえに、議長を始め議員各位の温かい御友情と御支援のたまものでございます。高いところからではございますが、心より感謝を申し上げます。


 副議長の三年間に、世界各国要人の表敬を参議院として議長とともに百三十五回受けました。国の数では三十九か国にも及びます。倉田議長と機会を見ては、世界に誇れる被爆国日本の平和主義の問題や、アジアの発展と平和を求めてアジア上院議長会議開催の問題など、参議院の二十一世紀における議会外交の重要性について熱っぽく語り合ったことが忘れられません。

 私事でございますが、私は今期をもって引退いたします。政権交代を可能にする民主主義を目指し、政界再編の戦国時代を生き抜いた四期二十四年間であったと思っています。その志道半ばでございますが、悔いはございません

 また、消費税廃止法案、阪神・淡路大震災の被災者生活再建支援法案、三十人学級法案等、野党の立場から参議院より議員立法を提出し、参議院の存在と権威を高める政策活動として展開してまいったことも思い出深いことでございます。

 先輩、同僚議員の皆さんとは、時として民主主義の発展を願い立法府の権威と国民の信頼を高めていこうとする政党人として激突する場合がございました。この間、皆様方から賜りました幾多の御厚情を顧みるとき、感慨ひとしおでございます。ここに謹んでお礼を申し上げる次第でございます。


 今、国内外の情勢は誠に多難であり、参議院に対する国民の期待はますます高まっております。どうか皆様方におかれましては、御自愛の上、参議院の権威高揚と参議院改革により、二院制の下で議会政治発展のため更に御尽力くださいますようお願い申し上げまして、私のお礼のごあいさつとさせていただきます。

 ありがとうございました。

(後略)

[参議院会議録から抜粋引用おわり] 

このエントリーの本文記事は以上です。

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