【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

[きょうの国会]国会は正常化、24議案審議、種子法廃止法成立、民法衆院通過、「民泊」「水道法」は審議入りしておらず会期末にずれ込みも

2017年04月14日 17時06分30秒 | 第193回通常国会(2017年1月から6月まで)学校法人森友・加計学園国会

[画像]衆議院厚生労働委員長、2017年4月14日、衆議院インターネット審議中継からスクリーンショット。

 おとといから不正常になった国会は、きょう正常化しました。

 24議案が審議されました。話題になっていた、種子法廃止法は成立。他に話題になっていた「民泊新法」「水道法改正案」は別の法案が先に審議入りしたため、会期内に成立するかどうか不透明な議案となってきました。

 正常化にあたり、午前9時過ぎ、丹羽秀樹厚生労働委員長がおじぎしておわび。三木派だった丹羽兵助(にわ・ひょうすけ、にわひょう)さんは、三木武夫内閣おじぎ3人衆と言われたそうです。丹羽さんは同じ愛知県選出の三木派、海部俊樹元首相の仲人をしたともききます。丹羽さんは自衛隊の駐屯地で精神疾患のある者にさされ、「やとう病院」に運ばれましたが、間違った型の血液を輸血されたこともあり、1週間ほどして亡くなりました。1990年代初頭は、自民党が永遠の与党だと思っていた人が多いので、「やとう病院」を揶揄する人も、世間話ではありました。丹羽秀樹さんもおじぎということですが、ただ、首相との関係は、三木内閣とは違うと思いますが、自民党の政権は当面長く続くでしょう。

【衆議院厚生労働委員会 平成29年2017年4月14日(金)】

 まず一般質疑を5時間コース。

●初鹿明博さんら提出の対案は採決で、否決され、廃案。 

 この後、「介護保険法改正案の民進党対案」(193衆法7号8号)が議題となりました。討論無く、採決し、自公維反対多数、民共賛成少数で否決され、廃案になりました。おとといの記事で、6月に審議未了で廃案になるのではないかとの見通しを示しましたが、採決の結果廃案となりました。共の賛同は得ることには成功しました。

【参議院本会議 平成29年2017年4月14日(金)】

●日米豪英の後方支援ACSA条約両院承認、発効へ。

 「日米ACSA(物品役務相互流通)協定の承認を求める件」(192条約2号)
 「日豪ACSA承認案」(193条約1号)
 「日英ACSA承認案」(193条約2号)

 は投票総数230、賛成158、反対72の賛成多数で、両院承認されました。私の理解だと、日米ACSAはこれをもって、旧条約から新条約に切り替わると思います。周辺地域ではなく全地球的に、銃弾も含めて後方支援できることになりました。今週、巷では、北朝鮮が核実験や弾道ミサイルで行動し、米軍が攻撃するのではないか、との懸念が高まっています。新条約で、韓国領海も含めた海からの補給などもありそうです。なお、自衛隊法への落とし込みの法案は、衆院で審議入りしていない状態です。

 「改正遺伝子組み換え作物カルタヘナ条約実施法」(193閣法32号)は、231、231、0の全会一致で可決し成立しました。条約は、来週にも参・外防委で審議入りすると思います。

 「改正国際開発協会加盟法」(193閣法13号)は230、230、0の全会一致で可決し成立しました。来週の公布日に施行。世銀グループIDAへの0・3兆円の増資が裏付けられます。

 「農業機械化促進法廃止法」(193閣法22号)は、投票総数231、賛成214、反対17で可決し、成立、来年4月1日付で同法は廃止へ。

 「種子法廃止法」(193閣法23号)。討論になり、民進党の徳永エリさんや、共産党の紙智子さんが「モンサントなどの世界的な種子メーカーが幅を利かせる」などと反対しました。採決では、投票総数231、賛成158、反対73で可決し、成立しました。

 この後、参議院先議の「地方公務員法改正案」(193閣法51号参先議)。投票の結果、総数231、賛成217、反対14で可決し、衆議院に送られました。

 伊達忠一議長が、通例着席のまま読み上げる原稿にもかかわらず、立ち上がり一拍おいてから、「本日はこれにて散会します」。

【衆議院本会議 平成29年2017年4月14日(金)】

 きょう通過した議案は、会期内に参でも議了すると思われます。

 「福島復興特別措置法改正案」(193閣法19号)は起立多数で可決し、参に送られました。法文は「公布日に施行」となっていますから、参での迅速な審議を期待します。

 「土壌汚染対策法改正案」(193閣法43号)は、起立多数で可決、参送付。委員会では「豊洲」と絡めた質問もありましたが、大過なく衆を通過しました。

 「都市緑地法及び都市公園法改正案」(193閣法24号)も起立多数で可決、参へ

●医療ビッグデータ法案は野党も含めた修正議決で、参へ。

 「医療ビッグデータ法案」(193閣法53号)は政府原案ではなく「自公民修正案」を議決しました。参では修正案を前提に審議がされます。

●120年ぶりの民法債権編改正案は、実質原案通りで淡々と可決。

 「民法債権編改正案」(193閣法63号)及び「その実施にあたっての一括改正法案」(193閣法64号)。委員長報告の後、討論無くすぐに採決され、民反対、自公共維の賛成多数で委員長報告通り可決しました。政府原案に技術的な修正が入りました。120年ぶりの抜本改正とのことですが、なにごともなく可決しました。参へ。会期内に参でも議了する公算は8割程度と言ったところでしょうか。

 「原子炉廃炉等積立金法案」(193閣法9号)は賛成多数で可決しました。参送付

 この後、「日印原子力協定承認案」(193条約3号)審議入りしました。核保有国に対する初めての原発輸出となりますが、代表質問は、民進党、日本維新の会がしました。週当たりの登壇回数は各会派の紳士協定があるので、共産党は他の機会にとっておいたのかもしれません。

【参議院東日本大震災復興特別委員会】

 午後開かれ、一般質疑だけで散会しました。上述の福島復興再生特別措置法改正案は「公布日に施行」なのでできるだけ急いでほしいところです。

【衆議院法務委員会】

●いわゆる共謀罪法案が委員会審議入り。

 「いわゆる共謀罪法案こと組織犯罪処罰法改正案」(193閣法64号)趣旨説明されました。次回の予定は未定。

 これに先立ち一般質疑がありましたが、与野党とも共謀罪法案のさや当てが続きました。野党筆頭理事の逢坂誠二さんは「刑法体系を大きく変えるので、慎重に議論したい」と語りました。

【衆議院文部科学委員会】

 「森友」にかかわらず、順調に進んでいます。
 「学校教育法を改正して、専門職大学・専門職短期大学を設ける法案」(193閣法56号)趣旨説明されました。質疑は後日。今週の大臣の諮問では来年も大学の定数は0・5万人増えるということで、各学校法人の積み上げではなく、省が総量規制をしてほしいと私は思います。

【衆議院経済産業委員会】

 「外国為替法(外為法)改正案」(193閣法41号)趣旨説明され、来週19日(水)に質疑することを決め、散会しました。輸出規制の締め付けを強化する内容で、私の家業絡みでもありますが、できれば強化しないでほしいですが、強化すると老舗が優位性を失わないという側面もあるかもしれません。科学系大学の外国人学生への技術流出防止の条項もあり、やむを得ないところですが、教授らが改正内容をよく理解してほしい。経産委は、「設備投資減税」と「保証協会」の法案は後回しとなりましたが、会期内に両案とも成立するでしょう。

【衆議院国土交通委員会】

 「水防法改正案」(193閣法25号)趣旨説明され、次回は19日(水)9時からと決まりました。これにより、「民泊新法」は後回し。衆議院での審議入りは、連休に前後することととなりました。国交委は参側は民進党が委員長ポストを持っているので、会期末闘争の材料になる気配が出てきました。

【官報】

 1条約2法が公布されました。

 「日本イラン投資協定」(国会審議時の議案番号は190条約3号)は、「平成29年4月14日条約6号」として公布されました。ホメイニ師が最高指導者になって以降途絶えていた、イランとの二国間条約で、「受刑者相互移送」「投資」の2分野で再整備されたことになります。

 「原子炉等規制法を改正する法律」(193閣法17号)は、平成29年4月14日法律15号に。3年以内の政令で定める日に施行。震災後に議員立法でできた、原子力規制委員会としては初めての大きな改正で、昨年度の国際原子力機関の勧告を反映した内容となっています。

 「臨床研究法」(190閣法56号)は平成29年4月14日法律16号。提出から1年かかりましたが全会一致で成立し、公布されました。施行は1年以内の政令で定める日。製薬会社が教授に資金提供をしたら、情報をしっかり公開すべし、という現実的な法律です。 

このエントリーの本文記事は以上です。

(C)2017年、宮崎信行。

[お知らせはじめ]

宮崎信行の今後の政治日程(有料版)を発行しています。

国会傍聴取材支援基金の創設とご協力のお願いをご一読ください。 

このブログは以下のウェブサイトを活用しエントリー(記事)を作成しています。

衆議院インターネット審議中継(衆議院TV)

参議院インターネット審議中継

国会会議録検索システム(国立国会図書館ウェブサイト)

衆議院議案(衆議院ウェブサイト

今国会情報(参議院ウェブサイト)

各省庁の国会提出法案(閣法、各府省庁リンク)

日本法令索引(国立国会図書館)

予算書・決算書データベース(財務省ウェブサイト)

インターネット版官報

[お知らせおわり]


「会期延長検討表明論」が浮上、自民党衆議院国対、共謀罪法案の成立、都議選越え延長も

2017年04月14日 07時10分21秒 | 第193回通常国会(2017年1月から6月まで)学校法人森友・加計学園国会

 国会はきょう正常化し、「いわゆる共謀罪法案こと組織犯罪処罰法改正案」(193閣法64号)が委員会審議入りする予定です。

 ただ、残り8週間となった第193回通常国会(平成29年2017年6月28日(日)まで)での成立は見通せない状況。

 そのため、自民党の衆議院の国会対策委員会幹部から「会期の延長を検討していると表明する論」が浮上しました。14日付読売などが一部報じています。

 今国会は、終了後の6月23日(金)告示7月2日(日)投票の都議選があるため「延長できない」という説があります。私は不思議でならないのですが、識者とされる教授まで、断定調で発言しています。たしかに、4年前の安倍総理は延長しませんでした。が、8年前(麻生追い込まれ国会)、12年前(小泉郵政国会)は、都議選をまたいで会期が延長されています。そもそも712人いる国会議員で、応援演説や組織周りに動員される人など都連所属を含めても2割前後でしょう。

 衆参単独過半数の自民党ですが、昨秋は、衆のTPP条約、会期末の参のカジノ法案、今週の介護保険法改正案(および共謀罪法案)で、野党などの日程闘争を浴びています。

 そこで、共謀罪法の確実な成立をめざして会期延長を検討している、と表明して、野党や、参議院自民党をけん制したい考えのようです。

 官邸主導とされる自民党の国会運営ですが、森友学園問題では隠ぺいすることでかえって混乱を招いており、官邸の国対への影響力が下がることが予想されます。また、半年前の、内閣改造で閣僚を退任した議員が自民党国対委員長についたため、秋以降のポストへの執着心はあまりないと思われます。このため、衆自国対が、投げやりな雰囲気に包まれつつあります。主導権争いが流動的。力のある者が、それとなく、気づかれないうちに主導権を持つことが予想されます。

このエントリーの本文記事は以上です。

(C)2017年、宮崎信行。

[お知らせはじめ]

宮崎信行の今後の政治日程(有料版)を発行しています。

国会傍聴取材支援基金の創設とご協力のお願いをご一読ください。 

このブログは以下のウェブサイトを活用しエントリー(記事)を作成しています。

衆議院インターネット審議中継(衆議院TV)

参議院インターネット審議中継

国会会議録検索システム(国立国会図書館ウェブサイト)

衆議院議案(衆議院ウェブサイト

今国会情報(参議院ウェブサイト)

各省庁の国会提出法案(閣法、各府省庁リンク)

日本法令索引(国立国会図書館)

予算書・決算書データベース(財務省ウェブサイト)

インターネット版官報

[お知らせおわり]