田舎おじさん 札幌を見る!観る!視る!

私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

古賀茂明著「日本中枢の崩壊」

2011-12-16 23:17:40 | 本・感想

 現役の経済産業省官僚だった古賀茂明氏が退職前に著した「日本中枢の崩壊」という本を読みました。日本の国力が凋落を続けているといわれる今、古賀氏の主張には耳を傾けるべき点が多々ありました。

               

 12月に入り、私には珍しく風邪をひいてしまい外出することがこのところ極端に減ってしまいました。(おかげさまで現在はやや回復傾向にありますが…)そのためブログに投稿する話題にも事欠いてきました。
 そこでこれまでの禁を破り、稚拙な書評的なものを書いてみることにしました。

 古賀氏は日本の凋落に危機感を抱き、その要因が現行の公務員制度にあるとして、自らが官僚(公務員)であるにも関わらず果敢に公務員制度の改革に取り組み、提言を続けました。その結果、古賀氏はその職に留まることができず、今年9月には依願退職せざるを得ない状況に追い込まれたのです。この書は、古賀氏がまだ経産省の現役官僚であった今年5月に著したものです。

 古賀氏は本書の最初に、

 その最大の原因が霞ヶ関の内向きの、すなわち省益にとらわれる論理である。そして、官僚がそうした内向き志向になっていく仕組みこそが問題の本質だ。その象徴として天下りがある。だから、天下りは悪でしかない、ということになるのだ。  
 現在の国家公務員制度の本質的問題は、官僚が国民のために働くシステムになっていないという点に尽きる。大半の官僚が内向きの論理にとらわれ、外の世界からは目をそむけ、省益誘導に血道を上げているとどうなるか。昨今の日本の凋落ぶりが、その答えだ。 

と指摘し、381頁にわたって日本の官僚や政治の欠陥を指摘しています。

 日本は今、国自体が凋落傾向にあると同時に、国と地方を合わせると1千兆円を超えるという膨大な負債を抱えていると言われます。
 なぜこんな状況になってしまったか?
 さまざまな要因が複雑に絡み合ってはいるものの、古賀氏はその要因を政治の貧困と官僚の怠慢に求めています。つまり政治も官僚も日本が急成長した高度成長時代のシステムに拘泥し、新しい世界の動きに即応したシステムになっていないと言います。そして、その最たるものが旧態依然として省益のためにだけ血道を上げる官僚システムであると指摘します。
 古賀氏は日本の産業振興を掌る経済産業省のキャリアです。さすがに産業政策をはじめとしてあらゆる分野に造詣が深いところを披歴してくれます。
 著書の中で古賀氏が言っていること全てが正鵠を得ているかどうかは分かりませんが、傾聴に値するところは数々あるのじゃないかと思われます。

 古賀氏は身を挺して政府や官僚の現状を批判し続けました。その結果、残念ながら官僚の職を離れなければならなくなってしまいました。
 今や誰もが指摘する日本の危機の現状を救うために、氏の思いを日本の政治に反映させるべく頑張っていただきたいと願っています。

               

 ※なお、私はこの「日本中枢の崩壊」を読む前に、同じ古賀氏が著した「官僚の責任」という新書版を先に読みましたので写真だけ紹介することにします。この著書は「日本中枢の崩壊」が出版された2ヶ月後に出版されたものです。内容的には「日本中枢の崩壊」のダイジェスト版的なものです。つまり私は古賀氏の著書を出版の順序の逆に読んだことになります。