元外務官僚の丹波氏は叫ぶ。「北方領土問題で、日本が北方4島返還を求めるのは歴史を通じて正義を実現するためである」と…。丹波氏は外務省の中枢を歩いてきた方である。丹波氏の主張が外務省のコンセンサスらしいのだが…。
※ 開会前の会場の様子です。
5月21日(月)午後、札幌グランドホテルにおいて札幌商工会議所主催の国際セミナーを聴講した。講師は外務審議官や駐ロシア大使などを務めた丹波實氏が「戦略なき日本 -日本の将来をどう見るか-」と題して講演した。氏は74歳と高齢であるが、現在も精力的に講演活動を行っているという。
丹波氏の講演を聴くのは初めてだったが、テレビや新聞などのメディアを通して氏が北方領土問題に関して強固な4島返還論者であることは知っていた。
講演は日本の政治状況全般に苦言を呈するものだったが、ここでは北方領土問題だけに絞ってレポートすることにする。
氏は叫ぶ「歴史的、法的事実からいって、ロシアに対して4島一括返還以外一片の妥協の余地もない」と…。確かに日本側から見ると丹波氏の主張していることはよく理解できるし、そのとおりにコトが運んでほしいと誰もが思っていることだろう。
しかし、現実にはロシアがすでに50年以上にわたって北方4島を実効支配しているのが事実であり、近年は極東重視の考えからインフラ整備も進んで、返還の気配すら感じられない現状である。
※ 丹波氏は高齢で脚が弱っているということで座って講演された。
外交問題はいつのときも交渉相手が存在する。その際に自国の立場だけを主張することが得策なのだろうか? 丹波氏はいつのときも、ただ一点“国益”だけを考え外務官僚として行動してきたという。 およそ実現が困難とみられる4島一括返還だけを交渉の席で主張し続けることが“国益”に適うことなのだろうか? 悩ましい問題である。
この問題では、政治家の鈴木宗男氏、外交官の東郷和彦氏、佐藤優氏などが一時「2島先行返還論」を模索したが、外務省から駆逐さてしまったという過去がある。
丹波氏など外務省が主導する4島返還論に固執するのか、あるいは妥協点を探る柔軟路線が国益に適うのか、難しい問題である。
私がそれ以上に気になるのは、ときの政府がこの難しい問題にあまり真剣には取り組んでこなかったのではないか、という疑念が残る。
丹波氏は「国家にとって、領土・領海・領空は国家存立の座標軸である」と言うが、ときの政府がこの問題に真剣に立ち向かってほしいと願うものである。
タイトル名を「丹波實氏は叫ぶ」としたが、年齢のせいだろうか、それとも国を憂うる気持ちがそうさせるのか、マイクに向かって叫ぶように話すさまは鬼気迫るがごとく私には映った…。
※ 開会前の会場の様子です。
5月21日(月)午後、札幌グランドホテルにおいて札幌商工会議所主催の国際セミナーを聴講した。講師は外務審議官や駐ロシア大使などを務めた丹波實氏が「戦略なき日本 -日本の将来をどう見るか-」と題して講演した。氏は74歳と高齢であるが、現在も精力的に講演活動を行っているという。
丹波氏の講演を聴くのは初めてだったが、テレビや新聞などのメディアを通して氏が北方領土問題に関して強固な4島返還論者であることは知っていた。
講演は日本の政治状況全般に苦言を呈するものだったが、ここでは北方領土問題だけに絞ってレポートすることにする。
氏は叫ぶ「歴史的、法的事実からいって、ロシアに対して4島一括返還以外一片の妥協の余地もない」と…。確かに日本側から見ると丹波氏の主張していることはよく理解できるし、そのとおりにコトが運んでほしいと誰もが思っていることだろう。
しかし、現実にはロシアがすでに50年以上にわたって北方4島を実効支配しているのが事実であり、近年は極東重視の考えからインフラ整備も進んで、返還の気配すら感じられない現状である。
※ 丹波氏は高齢で脚が弱っているということで座って講演された。
外交問題はいつのときも交渉相手が存在する。その際に自国の立場だけを主張することが得策なのだろうか? 丹波氏はいつのときも、ただ一点“国益”だけを考え外務官僚として行動してきたという。 およそ実現が困難とみられる4島一括返還だけを交渉の席で主張し続けることが“国益”に適うことなのだろうか? 悩ましい問題である。
この問題では、政治家の鈴木宗男氏、外交官の東郷和彦氏、佐藤優氏などが一時「2島先行返還論」を模索したが、外務省から駆逐さてしまったという過去がある。
丹波氏など外務省が主導する4島返還論に固執するのか、あるいは妥協点を探る柔軟路線が国益に適うのか、難しい問題である。
私がそれ以上に気になるのは、ときの政府がこの難しい問題にあまり真剣には取り組んでこなかったのではないか、という疑念が残る。
丹波氏は「国家にとって、領土・領海・領空は国家存立の座標軸である」と言うが、ときの政府がこの問題に真剣に立ち向かってほしいと願うものである。
タイトル名を「丹波實氏は叫ぶ」としたが、年齢のせいだろうか、それとも国を憂うる気持ちがそうさせるのか、マイクに向かって叫ぶように話すさまは鬼気迫るがごとく私には映った…。