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私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

札幌冬季五輪招致は是か?非か?

2015-12-05 22:33:55 | 大学公開講座
 札幌に二度目の冬季五輪を招致することについて、市民からの一定の理解を得ている状況である。しかし、はたして札幌にとって五輪招致が市民のQOL(生活の質)を高めることに繋がるのかもう一度考えてみよう、というのが今回の講座の趣旨と理解した。 

 札幌大学の公開講座「オリンピック・パラリンピックから考える~文化・生きる力・マネジメント~」の最終講(第4講)が12月3日(木)にあり出席した。
 テーマは「メガスポーツイベントのインパクト??」と題して、札幌大学の東原文郎、金誠両准教授が担当した。

               
               ※ 2018平昌冬季五輪のメイン会場に予定されているヨンピョンスキーリゾートです。

 最初に東原准教授がメガスポーツイベント(オリンピック)開催地住民のインパクト(影響)について研究した結果を提示した。その研究方法とは、関連する先行研究論文を集計・分析するという方法だった。
 その結果、市民にとって是(正)とする点は、(1)観光振興効果、(2)雇用機会増加、(3)経済発展、地域産業振興、(4)記念施設等インフラ整備、(5)国際認知度、イメージ向上、(6)国際交流、文化交流の増加、(7)地域への誇り、郷土愛の向上、などが挙げられた。

 市民にとって非(負)と考えられる点は、(1)歳出超過、物価高、税負担など生活負担の増加、(2)経済発展の恩恵は社会的属性や地域によって大きく異なる、(3)騒音、渋滞、駐車場などの利便性の減、(4)大気汚染、自然環境への負荷、(5)セキュリティ(犯罪増加)、反社会的行為の増加、などが挙げられた。

 結果として、東原氏はこうしたことについて札幌の住民は十分認識していないのではないか、と指摘した。

               
               ※ 講義をする東原文郎准教授です。

 続いて、韓国人である金誠准教授が母国で開催予定の2018平昌(ピョンチャン)冬季五輪の開催予定地を視察して、の準備状況を報告した。
 その結果を金准教授は「かなり危ない!」と表現した。財政難、施設建設の遅れ、環境団体の反対、等々かなり深刻な状況であるとした。冬季五輪そのものの返上は国家のプライドもありあり得ないが、韓国政府の関与がより強まったものになるであろう、とした。
 金准教授は、平昌冬季五輪の開催まで(1)財政問題、(2)環境破壊、(3)政府との主導権争い、などの問題を克服する必要がある、とした。

               
               ※ 講義をする金誠准教授です。

 再び、東原准教授が最近開催された2004アテネ五輪、2008北京五輪に建設された五輪施設についてのその後を調べた結果を写真と共に報告した。つまりオリンピック・レガシーがどのように利活用されているか、という調査である。
 その結果はあまりにも悲惨だった。もちろん特徴的なものをピックアップしたということもあろうが、まさに「兵(つわもの)どもの夢の跡」という感じであった。

               
               ※ 2004アテネ五輪の野球会場のグランドです。使用されないため雑草が伸びています。

 一方、1972札幌冬季五輪のレガーシはどうだったかというと、真駒内競技場、美香保体育館、月寒体育館、大倉山ジャンプ競技場など、その後の利活用も上手く行っており、さらに地下鉄とか、環状線道路なども市民生活に寄与している現状が報告された。

 2020東京五輪も含めて、オリンピック・レガシ-については声高に論議されていることもあり、アテネや北京のようなことは考えづらく、きっとそのあたりを十分に考慮した施設づくり、施設整備がなされるものと考えられる。
 それでも、東原准教授は市民のQOLという観点から札幌冬季五輪についての調査をする必要性を説いたと私は理解した。

 さて、2026札幌冬季五輪の実現の可能性はいかほどなのだろうか?
 市民の立場から、もう一度冬季五輪そのものを見直すということはとても大切だと思う。
 しかし、私はそのことより、冬季五輪が2018韓国・平昌、2022中国・北京と東アジアで連続開催が決定している今、はたして2026にまたまた東アジアに位置する札幌の開催について理解を得られるだろうか、という単純な疑問が残るのだが……。