あの“寅さん”が帰ってきた!そう思わせてくれるようなストーリー展開だった。なんの違和感もなく寅さんが映画の中で甦っていた。改めて山田洋二氏の監督・脚本家としての才を感ずる思いだった。
今年の正月映画は“寅さん”を観ることに決めていた。しかし、正月休みが続く5日までは混雑するだろうから、その後に観ようと思っていたのだが、今日(4日)午後コンサートに行く前に「あるいは?」と思いユナイテッドシネマに寄ってみた。そして予約機で状況を見てみると午後2時からの部に空席があったので、予約の手続きをして観賞することに決めた。
※ 今回の50作目において重要な役割を演じた出演陣と山田監督です。
館内は中高年を中心に満席状態だったが、“寅さん”の変わり者で、破天荒な振る舞いに笑い、“寅さん”の温かくて優しい人柄にホッコリする雰囲気に満ちていた。
ストーリーは寅さんの妹・さくら(倍賞千恵子)と博(前田吟)の子・満男(吉岡秀隆)を中心に展開する。吉岡秀隆は幼少のころから青年に至るまで“寅さん”映画の中で成長してきた姿を演じ続けてきた。その成長の折々に寅さんが違和感なく登場してきて観る者を懐かしい思いにさせてくれた。そのストーリーの流れがなんの違和感もなく、ごく自然の流れで描かれていた。
“寅さん”映画ではいつもその時々の旬の女優がマドンナとして登場するが、今回はそうした中でも特に話題となったリリー(浅丘ルリ子)が若き日の華やかな表情で何度も登場したのが印象的だった。また、日本の芸能界を離れて久しい後藤久美子が重要な役柄として登場している。さらにオープニングの主題歌を桑田佳祐が歌っているのも話題の一つである。
※ オープニングで主題歌を歌った桑田佳祐と山田監督(88歳)
今回の映画では“寅さん”以外の登場人物の今を描きながら、そこに過去の寅さんの姿が見事に紡ぎ合っているところに山田洋二氏の才能の素晴らしさを見る思いだった。その要因の一つとして過去の映画が4Kデジタル技術で見事に修正されていて古さをまったく感じさせないところにもこの映画の成功があったように思う。
映画を観終えた観客の誰もが、満足そうに帰途に就いたのが印象的だった。
※ 説明の要なし。代表的な寅さんの姿です。
なお、タイトルの後の「50」の意味は“寅さん”映画の第1作が公開から50周年であり、映画そのものが50作目だったことから付けられたとのことである。