田舎おじさん 札幌を見る!観る!視る!

私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

映画 風の電話 №265

2020-01-29 15:07:00 | 映画観賞・感想

 あの2011年3月11日の大震災によって家族の全てを奪い去られた一人の少女の哀しみがこんなにも重く、深く、長く、彼女の心の中に沈殿していたとは…。その哀しみを見事なまでに表出したモトローラ世里奈という女優の存在感に圧倒された映画だった…。

     

 昨日(1月28日)午後、シネマフロンティアにおいて映画「風の電話」を観た。

 「何か良い映画を観たいなぁ」と思っていたところ、過日の新聞に震災を受けた岩手県・大槌町に電話線が繋がっていない「風の電話」が実在し、多くの人が訪れていることをモチーフとして制作された映画が第70回のベルリン映画祭に招待・上映されるとのニュースを目にした。「これはきっと良い映画だ!」との思いを強くし、昨日映画館に足を運んだ。

 平日、しかも宣伝もそれほど打っていなく地味な映画のためか観客はかなり少なかった。

   

   ※ 出演の左からモトローラ世里奈、西島秀俊、三浦友和、西田敏行の俳優陣です。

 映画は西田敏行、三浦友和、西島秀俊といったベテランが脇を固めてはいるものの、あくまで主演のモトローラ世里奈の映画だった。

 モトローラ演ずる「ハル」は岩手県・大槌町で東日本大震災に遭遇し、両親・兄弟を失い一人残されてしまい、唯一の肉親である叔母に引き取られ広島で暮らして8年が経過し、高校3年生だった。ある日、叔母が突然倒れ、自分の周りの人が誰もいなくなってしまう不安にかられた彼女は、震災以来一度も帰っていなかった故郷の大槌町へ向かう。

 ハルはいろいろな土地で、いろいろな人たちに出会いながら大槌町に向かうというロードムービー的な要素も含んだ映画となっている。その間ハルはほとんど言葉を発しない。周りが三つ問う中、一つ応えるといった感じで彼女はその動作、その表情から観客に何かを伝えようという感じだった。

   

   ※ 顔全体がそばかすに覆われているが、それが彼女の個性だと認められているそうだ。

 大槌町の自宅跡にたったハルはそれまでの無口とは別人のように亡き父母に、兄弟に叫びかける。「呼んでいるのに何故応えてくれないの?」、「何故私だけ取り残されたの?」と、これまで封印していた心の叫びをぶつけるハルだった。ハルは再び広島へ帰ろうとしたとき大槌町にある「風の電話」の存在を知った。そこを訪れたハルは「風の電話」のボックス内で父母や兄弟に話しかける。自宅跡のときのように泣き叫びはしなかったものの、彼女が父母や兄弟に向かって語りかける話の一言一言は私たち観客の心に中に、ずっしりと重く、深く、長く伝わってくるものがあった。

 そのハルの言葉は、あらかじめ用意されたセリフではないという。広島から始まったロケの中でモトローラ世里奈自身が思い、感じたことが、そのままの言葉となって発せられた言葉だという。モトローラ世里奈とは、なんていう俳優なんだ!けっして美少女とはいえないモトローラ世里奈だが、その存在感は抜群である!

   

 ※ ご覧のように決して美少女とはいえない(失礼!)風貌ですが存在感は抜群でした。

 映画のテーマも素晴らしかったが、モトローラ世里奈という俳優を知ることができ、彼女が今後どのような俳優として成長していくのか、非常に興味深い。