2016年 米国公開
原作 テッド・チャン『あなたの人生の物語』
監督・ドゥニ・ヴィルヌーヴ
言語学者ルイーズ・バンクスは大学での授業中、学生からニュースを見てくれと言われて教室のテレビ画面を開く。すると、世界12箇所に巨大なコクーン状の宇宙船が飛来しているというニュースに出会う。世界中は混乱して授業は中止となり、彼女は自宅に帰る。このとき、持ってもいない自分の娘が死んでいくという白昼夢を見る。夫とも別れている。まだ未婚だった。
翌日、研究室に旧知の軍人が訪ねてきて「音声を解読してほしい、何を言っているのか」と問う。飛来した宇宙人の音声らしい。ルイーズは直接会いたいと条件をだすが。軍人は帰っていく。翌日早朝、ヘリコプターが自宅近くに飛来して10分で用意しろという。彼女はアメリカに着陸した宇宙船の着陸地点に連れて行かれる。理論物理学者のイアン・ドネリーもいっしょで、チームを組んで宇宙人の飛来の目的を聞き出せと言われる。
はじめ、音声による会話を求めるが成立せず、ルイーズは彼らが発する筆で書かれた丸のような図像が文字ではないかと、文字による会話を試みる。ルイーズと軍人との会話の中には「カンガルー」の語源についてやサピアとウォーフの仮説(言語は思考に深く関わる)が語られ、また、イアンたち物理学者が見出した彼らの思考法が始まりがあって終わりがないという発見、また彼らの言語には時制がなく、丸の図像も筆のように書きはじめがあって書き終わりがあるのではなく、同時に書かれすべてが円環であることをヒントに宇宙人の言語理解を深めていく。
宇宙人たちの姿は典型的なタコ型(G.G.ウェルズの「宇宙戦争」以来の)で、イアンはヘプタポッドと名付ける。彼らの目的は、3500年後に地球人がかかわる宇宙的出来事のために飛来したことが明らかになる。ヘプタポッドは、未来も現在も過去もまとめて理解している。ルイーズはヘプタポッドの言語を理解するにつれて自分にとっての未来に起きる出来事が悲しい出来事につながることを理解しつつもその未来に向かって踏み出す。
彼女は、普遍言語(ヘプタポッドの言語)の発見者として偉大な言語学者となるが、同時に宇宙人の飛来をきっかけに世界を巻き込む宇宙戦争になりそうなことを、未来に起きることを知ったうえで行動をおこして戦争になるのを阻止すことに成功する。
これも、時間物なのだが、いくら、時間もまた一つの概念に過ぎないとはいえども、未来に起きたことを知ったうえで歴史を改変するのは、できるのか?
「メッセージ(Arrival)」はPrime Videoで見たのだが、原作がテッド・チャンの『あなたの人生の物語』で、この読後感については稿を改める。この作品の監督はついこの前に見た映画「ブレードランナー2049」(以前、機内でみたのを見直し)の監督ドゥニ・ヴィルヌーヴと同じ。また、先日、「デューン砂の惑星」(以前、機内でみたのを見直し)を見たが、これも同じ監督。どういう偶然か、はたまた、なにか共鳴関係があると信じるべきか・・・。