冬は農作業がほとんどないので時間があります。このため、いくつかのトランジスタラジオを平行して修理しています。一つのラジオに集中していると疲れるため、別のラジオも見ることによって見方を変えたり気分転換にもなります。今回は、たまたま所有している古い本「トランジスタ活用辞典(昭和38年度版)」に回路図が載っていた松下製トランジスタラジオを修理してみることにしました。
昭和30年代に製造されたと見られる松下製トランジスタラジオ
このラジオの型名はAT-175Jで雑誌の説明を見ると、「他励式7石2バンドラジオ」と書いてあり回路図も掲載されていました。使用されているトランジスタは松下が最初に開発に成功したらしい丸頭缶型のものです。黄色や赤に塗られた鮮やかなトランジスタです。このラジオの局発にはOC44、ミキサー部にも同じOC44のトランジスタが使われています。このトランジスタは、OC44>2S81/MC101>2SA101などと目まぐるしく名称が変わっています。OC44を使用してるこのトランジスタラジオは、同じラジオ(AT-175J)でも初期に作られたのものではないかと思われます。
古い本に載っていた回路図 裏蓋を開けて観察
最新のラジオはICやPICなどがふんだんに使われていて、基板も網の目のように複雑です。私のように素人が治せるようにラジオではありません。その点、昭和30年代以前のラジオは構造もシンプルでなんとか直せます。一種のパズルを楽しんでいる感覚で修理できます。
基板を取り出して裏側を観察、部品や線が複雑に立体配線
この松下製のトランジスタラジオの故障は音が出ないことです。電源を入れると「プスッ」と音が出てそれきりだんまりです。ショートしている様子は無いのでミキサー側かスピーカー側から探索するとそのうち原因が分かると思いました。
基板の裏側に部品が立体配線 赤黄青などのコードも立体配線
私はほとんどの場合、出力側のスピーカー側から電波の入力側のミキサー部に向かって探索していきます。自作のシグナルインジェクターをフルに使って調べます。調べた結果、このトランジスタラジオは検波段以降は正常のようです。ボリュームのあたりに信号を入れるとちゃんと音がスピーカから出ますので。どうも、ミキサー部か中間周波段あたりに問題があるようです。あせらずのんびり修理しようと思います。
自作シグナルインジェクターでボリューム側に信号を入れて観察中