すぷりんぐぶろぐ

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火の粉を振り払い火元へ向かう

2011年02月25日 | 読書
 これは80円でなく、普通の書店で買いました。

 『さらば脳ブーム』(川島隆太 新潮新書)
 http://www.shinchosha.co.jp/book/610396/

 二回お話を聞いたことがある。
 特に初めて講演を聴いたときのことが忘れられない。脳の話をわかりやすく、理路整然と、そして測ったようにぴたりと時間通りに終わったことに舌を巻いた。

 いわゆる脳ブームを作り出した張本人でもあるのだが、ご本人はいたって冷静沈着に仕事をとらえていたような印象がある。

 それがどっこい、この本である。
 様々な批判や中傷に対して真っ向から立ち向かっているのだ。
 いわば「身にかかる火の粉は振りはらう」という構えだろうか。
 そうだ、そうだ頑張れと応援したくなる。
 脳トレの爆発的なブーム、そして企業からの報酬を受け取らないことを、自ら「美談になっている」と称し、本当に正直な心情を吐露しているところなど、ますますファンになるではないか。

 そしてこの川島教授、火の粉を払うだけならいいが、その火元に向かって突き進む勢いを見せている。
 火元の存在も理解していて、そこに向かわなければ解決できないと言わんばかりの進み具合である。

 「脳科学」とつけば何か万能のような響きもあり、すぐに真似したり始めたりする単細胞者にとっては、やはり信頼のおけるその筋の人を見つけることが肝心だろう。
 その意味で、川島教授は今までの理性的なイメージに加え、情熱が強く感じられる本著によって、また信頼度が増したような気がする。

 学者の志とは何かを考えさせてくれる。
 また、企業との接点や大学内部での軋轢、さらに「財務官僚に言われた哀しい一言」など、あまり知り得ない世界がリアルに書かれていて、読み物としても面白かった。