すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

夢を追う大人の姿こそ

2011年10月22日 | 雑記帳
 参加した大会で行われたシンポジウムは、三人の方がシンポジストとして迎えられていたが、今までその名前も存在も知らなかった一人の発言が心に残った。

 奥山清行…工業デザイナーであり、イタリア人以外で初めてフェラーリのデザインをしたことで有名だそうである。

 世界を舞台に活躍しているというバリバリ感が伝わってくる話しぶりで、いくつもメモしたくなる言葉があった。
 特に冒頭に話された次のことが印象深い。

 「今、六本木でフェラーリが停まっていても、子どもたちは誰も写真など撮ろうとしない。しかし、新幹線にはたくさんのファンがいる。
 子どもたちは魅力に対して敏感であり、本質的である。自動車にはたくさんの問題が存在する。駐車場のこと、渋滞のこと…これらは全く解決されていない。
 自動車産業は欠陥産業だ。」


 自らをのし上げた業界に対して、構造的な問題を鋭くえぐるような発言はとても興味深かった。

 また、途中でふれた「言語」の問題は実に明確だと感じた。
 「イタリア語、英語は情報を伝えるので、議論しやすい。しかし日本語はそれ以外に感情を伝え、相対的な関係の中で交わされるので、ものすごく高度である」という件である。言語や国民性が持つ特性としてそのようなことは聞いたことがあったが、実際にそうした場面を多くくぐり抜けた人が言うと、説得力が格段に強い。

 質より量、自分の好きなことを続けていく強みを語り、そして最後には震災復興に関わる夢を「自分たちの仕事が終ってから、何枚も描いている」というデザイン画を紹介した。
 
 シンポジウムの後半で「子どもに夢を持たせるには?」というテーマが提示されたが、それはやはり夢を追う大人の姿があってこそなのだと思う。

 「努力をする楽しみを見つければ、人間はどんな人にもなれる。」

 奥山氏が語ったこの一言に、教育の本質をみる思いがした。
 そのデザインも注目していきたい。
 ちなみに、秋田新幹線「こまち」の新デザインは彼の手によって登場するらしい。