すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

観察対象としての「先生」

2014年07月09日 | 読書
 「2014読了」66冊目 ★★

 『短歌ください』(穂村 弘 角川文庫)


 雑誌『ダ・ヴィンチ』は年に1,2回しか買わないので,投稿コーナーがあることは知っていたが,あまり記憶にない。
 いずれ,穂村弘選による読者の短歌と選者の評によってまとめられている。


 穂村の『短歌という爆弾』には触発されたが,実際には少々難解なところもあった。その点,これは実にわかりやすく,穂村の考えが伝わってきた。
 一番わかりやすいのは,何度か繰り返されている次の言葉だった。

 怖い歌はいい歌


 短歌の爆弾性に通ずるし,もっと広げれば毒薬性という見方もできよう。

 雑誌の性格上,10代,20代が中心の投稿で,40代以上は数えるくらいだが,なんとなく共感できるものが多い。

 特に職業上気になるのは,学校を対象にしたものだ。

 ページの折り目は本当に多く付いたが,教師を対象?とした三つばかり紹介してみる。


 この街の6時のサイレンは半音くるっていると言った先生

 先生は消防車走る昼間でも有無を言わさず指名している

 三階の教室に来たスズメバチ職員室は一階にある



 いずれにしても,お気楽のように見えて,冷徹な観察眼が感じられる。

 どこかに醒めや痛みを感じている「子ども・元子ども」にとって,観察の対象として教師ほど典型的で,見えやすい者はいないのかもしれない。

 自虐的な笑いも浮かんだ短歌集であった。