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つらいことから書いてみたり

2014年07月26日 | 読書
 「2014読了」73冊目 ★★

 『つらいことから書いてみようか』(近藤勝重 幻冬舎)


 上手いなあ,この題づけ。
 もちろん本の中身の大事なことから取っているのだけれど,絶妙だ。

 副題は「名コラムニストが小学5年生に語った文章の心得」。

 冒頭の序「書く子は育つ」は,教室での作文指導の悪しき例が示されている。

 露骨にそのまま同じことが全国どこでも行われているとは思いたくないが,似たり寄ったりのことはあるだろう。
 そこには,学校という機関がある程度背負う宿命のようなものも感じて…。
 それが自分の一番つらいことだったりして…。


 ともあれ,著者が記したこの真実は,深く心に留めねばならない。

 子どもが本心を隠して文章を書いて,文章が好きになることも,また自分自身を好きになることもありません。


 作文指導のヒントになりそうなことが豊富にある。

 なかでも村上春樹の文章を例に,なぞなぞから「たとえ方」を学ぶなどはとてもユニークだ。
 村上春樹はほとんど読み込めていないので,自分では使えないかもしれないが,もしかしたら他の作家でもできるのでは,とちょっと目を見開かされた思いがする。

 担任を離れてからも,何度か「作文」の授業をさせてもらったことがある。
 「楽しく」が主眼になり,「気軽さ」を求める姿勢でアプローチしてきた。それ自体は間違いではないけれど,この本を読んで思うのは,作文指導はやはり「寄り添う」ことが根底にあるということだ。

 子どもが書いたことの,何について,どれだけ共感できるか…このアプローチを常に持っていないと,非常に底が浅くなる。
 そして「つらいこと」を起点とする発想は,案外その姿勢にマッチしている気がする。

 それは小手先の技術論ではなく,人間を見つめる目をどこにおくか,ということだろう。