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桜と絵本と豆乳と

深い懐のなかで読む

2015年03月06日 | 雑記帳
 学校に毎月会報(といってもりっぱな150ページ弱の雑誌)を届けてくれる法人団体がある。目を通して少し不思議だなと思ったことがあった。国家を大切にし、日本人の伝統を重んじ、「元朝式」なる催し元旦にあり、政府要人たちが列席し祝辞を述べるような…団体である。主宰の文章がいつも巻頭を飾っている。


 そういう思想?に満ち溢れているだが、冒頭の「時代を読む」の執筆者がなかなかである。ここ半年では中村征夫、倉本聰、そして先月からは高橋源一郎である。この人選はどこで決まるのかわからないが、とにかく「幅が広い」というか「懐が深い」というか…。当然三人の論考も貴重であった。メモしておこう。


 中村征夫氏のテーマは「海から見た地球」。今も現役の水中カメラマンとして、実際に海に潜りそこで見たこと、感じたことがベースなので説得力がある。データとして改善されているはずの東京湾の視界の悪さは37年前とほとんど変わらないという指摘は何を物語っているのか。関心を反らしてはいけない気がした。


 倉本聰氏のテーマは「震災で見えてきたもの」。これは「北の国から」フリークとしては必読の文章だった。本当に必要なもの、大事なことは何か、問い続けていない限り、現実に呑み込まれてしまう。「いつかではなく、すぐにと思うから僕らは身の丈を超える行動を取ろうとし~」という一節は、生き方指南と言える。


 高橋源一郎氏は「人口減少社会」というテーマで書いている。この文章をこの会報に載せるかと思ってしまうほど、興味深かった。「弱者と共に生きる幸せ」という発想は、この国の政治、個人の思考に変換を要求している。自分はけして強者ではないが、もうすぐ弱者に近づくことは確実なのでことさら切実に感じた。